モノポリーシリーズ 37°C

5

 疲れて眠り、そして目が覚めても宮辻の性欲は収まることはなかった。
 風呂に入っている壱伽を見て興奮し、ペニスを勃起させると壱伽は迷うことなく宮辻に腰を向けてくるのだ。
「もったいないから……ここにちょうらい……はあんっあぁあうっ……っあー! あっあひぃっひっあっあっ……あ――っ!!」
シャワーを浴びながら二人はまた燃え上がる気持ちと体を使って表現する。
「あああんっ!! あっ、ひぁっ、んぁっはぁんっ!!」
壱伽は宮辻を受け入れ続けたお陰で、中も奧もすっかり宮辻の形になっている。
 それが嬉しくて壱伽はそのしっくりとくる感覚に安堵する。
「ああああーっ! いいっ、おくっ、はっふぅっ……あっ、ああぁっ」
「壱伽……収まらねえよっ……」
「ああああぁー! あぁっ、あんっ、ふぁっ、ん……いいよ、いくらでも……いっぱいして……はあんっあああっ、ああぁっ、ああっ、あっ、ひぁんっ」
「壱伽……ああ……」
「ああああっあぁっ、あんっ、いぃあっ! あっ、ああああーっはぁん……ん、ん……んはぁ……っ、あぁんっ」
壱伽は何度も宮辻を誘い、宮辻の精魂が尽きるまで付き合ってくれた。
「あぁっ……あんっあっ、あっ、はぁんっ……ひゃっ、あぁっああっ……あひぃっ! あっあんっ……ぁんっ、はぁっ……ああんっ」
既に宮辻は壱伽に夢中になり、壱伽の体の虜になっている。
 きっとこの夜や朝を忘れないし、まだ続くならばもっと続けたいとさえ思っている。
 壱伽はどう思っているのかは分からないが、宮辻のもう心は決まっていた。
「はぁっ……、あっ……あぁん……は、ぁ……ああんぁ……あぁっあぁっ、ああんあっ……んっ、あっふぅっやっ……、あぁ、んっ、はぁっ……」
「壱伽……もうこれを忘れられそうもない……」
「あぁんっ! あっ……はぁっ、はぁっ……あぁっ! あんっあんっあぁんっあぁあっ、あっあっあっ……ああーっ! あっはぁっ……んぁっ……はぁっはぁっ……あっぁあっ、んっわすれなくてっいいっもっとっ……きて」
「こんな予定じゃなかった……でも、壱伽……」
「ああああぁーっ! あっ、あっ、あんっ、あんっぁあんっ!! ひゃああっ! あぁっ、あっあっ……はぁんっ、ぁあんっああぁっんっはぁっ……あっあんっあんっあぁっあんっはげしっ……あっああっあっあんっあんっあひっあっやっああっ」
 腰を振りながら宮辻は言う。
「俺のこと、好きになって……俺は、お前のこと、体から好きだ……」
「ああんっおま○こいいっっ……あっあひっい゛っあっあんっ! すきっぼくもっ滉毅のおちんぽすきっあっあんあんああっああんっひっああっいっちゃうっ……あぁっいいっひっああんっあっああぁあっあひっあんっああっ」
もちろん、この誘導はノーカウントだ。
 セックス中の言質など意味がない。
 けれど宮辻はそれでも壱伽の言葉通りに、壱伽にペニスを与え続けた。
「あっあぅん……あぁっふぁっはぁっあぁあんっ……、あぁんっあっああぁんっ! んっ、んぁっあぁっ滉毅のおちんぽっすきっ……あっあぁああっあ゛ひっ、いっあっあんっらめっ、あっあんっあんっ」
「ああ、いいっ奧に、たっぷり最後に出しておくよ……」
「ああぁっい゛ぃっ……あっあうっひああっあ゛ひっあっああああんっあああっあっらめっ……あっああぁっああんっ! あひっあんっあっあっあっあんっ」
「ああ、出るっ!」
「ああんっいいっ、きもちいっ、いいっ……あっい゛っあひぃっあああぁーっ……! あひっ、あ゛っひああっ……あっあんっあんっあっあっあんっあんっらめっ……あっあっああっあひっおくにっ、中出しっ……あっあっあんっああぁんっあぁっあんっ、ああぁあんっ」
 壱伽は絶頂をして宮辻の精液を受け止めてから、やっと熱い体が離れていくのを寂しそうに見ている。
「……時間、だね……」
 これで夢の時間は終わりだと言われて宮辻はその壱伽の手を取った。
「……え……?」
 壱伽は空を切るはずだった手を取られて驚いたけれど、宮辻の次の言葉に更に驚いた。
「……よく言われているのかもしれないけれど、俺はお前と相性がいいと思う。お陰で元カノのことを忘れられた。ありがとう」
「あ、いや、それはいいけど」
「それで、他にも頼みがある。いや、図々しいのは分かっている……けれど、壱伽、お前と付き合いたい」
「え!」
 壱伽は驚いたようにするも、少しだけ言い淀んでいる。
「あ、別にセックスだけするセックスフレンドが欲しいわけじゃない……その、ちゃんと壱伽のことを知りたい。体からの関係だけれど……それでもその先を知りたくなった」
 それに壱伽は少し照れたように笑ったあと言った。
「えっとね。体の関係を続けるのはありなんだけど、恋人は当面いいかなって思ってて……その、申し訳ないけれど……恋人にはなれない」
 壱伽の言葉に宮辻は一瞬だけ傷付いた顔をしたから、壱伽も眉を歪めるけれど、宮辻はすぐに壱伽の言葉を反芻してから聞いた。
「恋人じゃなくて、セックスフレンドならいいってこと?」
 まさかの宮辻が望んでいることの逆であることを言われたのに気付いて聞き返したら、壱伽は頷いた。
「そうだよ……滉毅とは体の相性がいいのは分かったから、そのセックスは楽しめるかなって。で、恋人だと色々と日常が分かって駄目になるかもしれないから、当面は無理かなって。だから、もしセックスフレンドでよければ……って都合がいいかな?」
 壱伽が面倒な関係を好んでいないのを知り、宮辻はちょっと考えた。
 壱伽は今は恋人を望んでいないけれど、その先に進むのに面倒事があると考えている。それは前の恋人関係で二股どころか三股とされたからだ。その傷はまだ癒えてはいないのか、関係を築いた後に裏切られることが嫌なのか、とにかく元彼によって壱伽の歪められた気持ちがまだほぐれてはいなかった。
 宮辻はそれこそ望むところだと思った。
宮辻が壱伽によって彼女の呪縛から逃れたように、壱伽も宮辻の態度や行為によって変わってくれるかもしれない。そこに期待をしてセックスフレンドをするのもありだ。
 ただそこには大きな条件がある。
「セックスフレンドからでいいけど、一つだけお願いがある」
 宮辻がそう条件を出してくると、壱伽は首を傾げている。
「他にセックスフレンドを作らないで欲しい。俺は他の男と共有っていうのができない。もしそうしたいのなら最初に断ってくれて構わないし、約束ができないならそう言ってくれ。途中でそういう気が生まれたら、そう言って欲しい。それで諦められるから」
宮辻の言葉に壱伽は少し驚いて目を見開いているが、宮辻の提案がある意味ちゃんとしていることに感心したようだった。
「うん、それはいいけど……僕もさすがに何人もセックスフレンドを作ったりはしないし……決まった人との方が有り難い。もちろん気持ちが駄目な時はそう言う。これで大丈夫かな?」
 壱伽の返答に宮辻は笑って新たに壱伽の手を握った。
「なら、セックスフレンドから宜しく」
 その握った手を振りながら宮辻は笑い、壱伽はそんなポジティブな宮辻を見て吹きだして笑い出した。
「ぷっ……面白いな、滉毅は」
 壱伽は宮辻が笑いながら手を振っているのに合わせて一緒に振った。
「いいよ、セックスフレンド、宜しく」
 六時間以上もセックスを続け、まだ快楽の余韻が残る中で、壱伽と宮辻はお互いにセックスフレンドになる約束を取り付けた。


 ホテルを出てから昼食時間も一緒に宮辻の奢りで駅前の店で食べ、映画まで行った。
 はっきり言ってやっていることはデートだったけれど、壱伽はそれでも楽しかったのでそのまま付き合ったし、宮辻は壱伽を気遣ってくれて優しかった。
 宮辻は基本的にナチュラルに相手に対して優しかった。
 壱伽は自分が少しは気に入って貰えているからそうして貰えていると弁えた上で宮辻の行為は甘んじて受けた。
 それは惚れられたものの特権であり、行為は素直に受けるべきだと思ったからだ。
 宮辻は壱伽のことを知ろうとしてくれて、好き嫌いや好物などは最初に尋ねてきた。
 正直に壱伽は答えたけれど、よくよく考えたら、元彼にそうしたことを聞かれたこともなかったし、気遣いも受けていなかった事実を思い出した。
「壱伽は、イチゴ系が好きか。ならそこの映画館にあるイチゴたっぷりソフトクリームなんか溜まらないんじゃないかな?」
「え! 行く行く!」
 上手いこと誘い込まれて映画まで見た。
 内容はちょうど見たかった海外アメコミヒーローの新作だった。
 宮辻は映画の話をした瞬間に席をネットで取ってくれて席を確保して、壱伽の好物まで用意してくれた。
 至れり尽くせりで壱伽は、もしかして恋人同士っていうのは、ここまでしてもらって当たり前のこともあったのかと知る。
 そこに至っていないけれど、元彼女持ちがしてくる何気ない行動だけれど、宮辻は当たり前のようにしてくれるから、そうなのかもしれない。
 駅で別れてから大学でまた昼食を一緒に取ろうと約束をして帰った壱伽は、やってることがセックスフレンドのそれではないことに少しだけ悩んだ。
「どうすんの、これ……」
 セックスの相性が良かったから、セックスは宮辻としたかった。
けれど、恋人関係だった人との違いをまざまざと見せつけられてしまい、壱伽は元彼との関係こそがセックスフレンドだったのだと気付いた。
「何てこと……」
 恋人からはセックスフレンド扱いされていたけれど、セックスフレンドになった人からは恋人のように扱われる。
「世の中って上手くいかないんだな……」
 元彼に未練があるわけではないけれど、それでも振り切れなかったのは事実。
 その元彼と宮辻滉毅を比べてみれば天と地ほど違うのが分かって余計に、壱伽は自分の男を見る目がないのだと知る。


 それから大学でも宮辻は壱伽の前に頻繁に現れては壱伽に気を遣ってくれた。
 美味しいイチゴの食べ物があると買ってきてくれたし、大学の昼食はいつも一緒に取ってくれる。
 周りはそのせいで壱伽と宮辻が付き合っていると思っていた。
 それは仕方ない。
 宮辻が壱伽に惚れているのは誰にでも分かったし、その宮辻がしてくることを壱伽は嫌がりもしないのだから、そういう関係になっていると思うのが普通だ。
「それでどうなの? 付き合ってるの?」
 そう聞いてくるのは大学の先輩で元彼と三股関係になっていた比湖藍音(ひこ あいね)である。
 とても壱伽から見ても美しい顔立ちをしていて、本人曰くどっかに壱伽と同じ西洋の血が混ざっているらしい。そのせいもあって、髪の毛は完全に茶色で瞳も薄い茶色をしている。
 元彼の事件以来、同じ大学生であることを知ってから藍音はたまに壱伽を尋ねてくるようになった。本人が言うには同級生にはあまり好かれてないのでということらしいが、どうやら大会社の社長が父親で、そこで育ったせいで感覚がおかしいから普通の大学生とは相まみえないらしい。
 浮いた存在であるのは壱伽も同様で、お互いの生活環境も似ていたからか、意気投合したまま半年が過ぎた。今でも食事も一緒に行く仲だ。
 壱伽に付きまとう宮辻の様子と周りの噂を聞きつけて、壱伽が講義室を移動しているのを捕まえて聞いてきたのだ。
「……えーと、付き合ってないけど……セックスはしてる」
 壱伽がそう答えると、壱伽と一緒にいた同学生である宮凪立夏(みやなぎ りつか)は驚いた顔をして壱伽を見ている。
 立夏は人の事情に踏み込んだことは聞いてこなかったけれど、壱伽の態度から付き合っているものだと思っていたらしい。
「あははは、やっぱそうか」
 藍音はそう言って笑う。
「宮辻滉毅だっけ? 今年卒業な四回生か。あんまり噂も聞かないし、真面目。就職は実家の会社に決まっているらしい。それで一人暮らし中。彼女持ちだったが本人曰く振られたと壱伽が原因?」
 藍音がどこからか調べてきた話を壱伽に言ってくるけれど、壱伽はそのどれも知っていた。
「違うよ、振られた日にお互いフリーなのを確認してからセックスしたから」
 壱伽はそう言ってイチゴのフラペチーノを飲む。
 これもさっき宮辻がやってきて登校途中に買ってきたと言って壱伽に渡していったものだ。
「あはははは、さすがに二の舞はしないか~」
「当たり前、前ので懲りてるから、だから付き合ってない」
 壱伽がそう言ったので藍音はやはり笑う。
 藍音としても同じ身の上である故、壱伽の慎重さも理解できるからだ。
 それでもお互いに性欲には勝てず、元彼になかなか会えずに我慢できたうちは押さえられていたものが、今フリーであるからこそ、持て余してしまっている関係だ。
「そっか、ま、いいんじゃない? 本人たちがどう思ってるかなんて外野には関係ないしね」
 藍音がそう言うと、壱伽はそれに頷いた。
 それ以上は藍音も突っ込まずに、違う話をし始めた。
「ねえ、誰か真面目な子、バイトに雇いたいんだけど。いない?」
 藍音がバイトを探していると言うので、壱伽はふっと考えてから隣に座っている立夏を見た。
「立夏、この間バイト首になったって言ってたよね?」
 立夏はコーヒーを飲んでから、困ったような顔で頷いた。
「え、なになに? この子バイトに紹介してくれるって事?」
 藍音がやっと立夏に興味を持って立夏を見ると、壱伽が言う。
「訳あり。バイト先の店長がストーカーになって接近禁止令を出すまでに至った。それで雇い先の偉い人がその奥さんで、報復で立夏が首になった」
 壱伽が淡々と言うと、藍音はそれに困ったような顔をした。
「あー、そっちの方か。まあ、うちの番犬野郎を付けるから、そっち方面は何とかなるし、大丈夫だけど。どうする?」
「藍音さん、バイト代の話をした方が早いよ」
 藍音が心配そうにするも壱伽はバイト代と内容次第だと言う。
「あー、うん。時間千二百円。書類整理で、とりあえず二ヶ月。大学終わってからの二時間くらい」
「やります」
 内容を簡単に話すと、立夏は飛び付いた。
「いつからですか?」
「あー、今日でもいい?」
「大丈夫です」
「じゃあ、今日やってみてどうかでいい?」
「お願いします」
 あっさりと藍音の話がまとまってしまうと、藍音が立夏に連絡先を教えてからご機嫌で壱伽たちの側を離れていった。
「ねえ、付き合ってないってことはセックスフレンドってこと?」
 立夏がさっきの宮辻と壱伽の関係が気になったのかそう聞いてきた。
「そうだよ。それでいいって滉毅が言ったから。当面それで、どっちかが飽きたとか……誰か他に好きな人ができたら終わるよ」
 壱伽はそう口で言いながらも、何だか心がしっくりこなくて胸が痛かった。
 立夏はそれ以上は壱伽の事情には突っ込まずに、午後の講義の話をしてきた。

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