Word Leaf 寒雷

10

入院していた鴻上が退院する頃には、季節が変わっていた。
 鴻上は術後一ヶ月でリハビリを開始し、二ヶ月目にはその成果もあり、歩行には問題がないように歩くことはできるようになった。
 しかし全速力で走るにはまだ足が上手く動かないと言っていた。
 そのリハビリは退院してからも続き、三ヶ月目にはその効果も出てきたけれど、やはり全力の疾走は出来なかった。
「こればかりは選手でもないから、これ以上は望めないな。まあ、これで日常生活には困らないようにはなった。十分だ」
 三ヶ月のリハビリが終わり、鴻上は会社に復帰した。
 とはいえ、これまでも持ち帰りの仕事をしていたし、その手伝いを詢が請け負っていた。
 完全に鴻上が会社に復帰する時には、詢も編集者として出版社に戻った。
 事情が事情だけに、会社側は騒動が収まるまではと、詢には長期の休業を許してくれた。それには三浦の助言があり、また三浦には助けられた。
 三浦は新作は倉永詢と一緒に出すと言い切り、彼が復帰する時に新作を発表すると言ってくれた。
 それは三浦と約束した、一緒に資料を探し、一緒に設定を作った小説のことだった。
 詢はそれに感謝し、会社に復帰をしたら真っ先に三浦のところに挨拶に行った。
 三浦は喜んでくれて、幼なじみに藤原とはよい感じだったけれど、三浦は詢と藤原の二人の担当を選んだ。
「どっちも一緒がいい。本も二倍出すから、お願い!」
 三浦の提案に、編集長は大笑いしたほどである。
「いいよ、二倍出してくれるんだ。それで三浦先生の価値も上がるし、君らの給料もしっかりでる働きをしてくれるんだろうね」
 そう言うのである。
 そういうわけで三浦は詢が編集を担当する分と、藤原が担当する分の本を分けて執筆するというただでさえ年に二冊は出す三浦が年に四冊も出すというスケジュールになってしまった。
 けれど詢は約束の一冊は三浦に付き添って、別の出版社から出す予定だった小説だけは詢が担当するだけになり、その後は新人の担当に変わることは決まった。
 こればかりは、三浦に恩があるとはいえ、詢の作家育成の希望があるから、その道は三浦でも止められなかった。
 詢はこの事件後に送られてきた作品を書いた作家に興味があり、連絡を取ってその作家に新人賞に出す作品をお願いしたのだ。
 若い十九歳の作家であるが、彼には期待したい要素が多かった。
 そうして詢が日常に戻ると同時に鴻上も仕事に戻っていた。
 溜まっていた仕事を片付け、体調に気をつけながら高内に補佐をしてもらっての復帰だったが、一日目から精力的に仕事を片付け、定時でさっと退社した。
 仕事人間だった鴻上が五時上がりで仕事場を出るのは、あの事件の間くらいだったので、皆が驚いていたという。
 恋人が出来て、一緒に暮らし始めたと言うと妙な納得と共に、相手が誰なのかも察せられたようだった。彼が命がけで守った人がそうなのだから。
 詢も三浦との話合いを会社に伝えてから、自分の仕事に復帰し、周りからはよく生きていたなと言われたほど、当時の報道から得られる情報でしか事情を知らない人たちから言われた。
「何とか生きてますね」
 詢はそう笑って言い、深くは話さなかったので誰も突っ込みはしなかったが、大体の事件の概要はニュースになっていたので今更ではあった。
 やっと日常になった日々の中で、詢には変わったことがある。
 あれから逮捕された京田が自白をして三ヶ月の間に裁判まで終わっていた。早期解決だったのは京田が逃げ隠れしなかったからだ。
 殺人未遂、住居侵入など沢山の罪の中で、殺意があったことが重要視されて一審では懲役六年が下った。殺人をしていないのにこの刑期は長いと当時から言われていたが、裁判員制度ができてからは一審ではこういう重い刑が付くことがあるのだ。
 それに京田は上告をせず、一審の判決が確定した。
 その後、弁護士を通じて京田から詢宛に手紙が届き、そこには。
「まだ恨みが残っていて、どうしようもなく、反省もできない。だからこそこの長い刑期の中でその恨みを消したいと思う。出てくることには忘れていたい」
 というようなことが書かれていて、京田も詢のことで苦しんでいるのが読み取れた。
 一度湧いた深い恨みが逆恨みだと分かっていても、こびり付いた怒りが消えてくれないのだ。
 それは詢には理解できた。
 詢も鴻上を傷つけた京田は許せなかったし、殺してやりたいという気持ちすら湧いていたからだ。その感情は鴻上がリハビリを死に物狂いで頑張っているのを知って、余計に心に湧いた醜い感情だった。
 それは時間をかけて消していけばいい。
 だから京田も詢に捕らわれることなく、自由になればいい。
 詢も京田のことは忘れ、前を向くことにした。
 そうやって二人はこの事件を六年かけて忘れていくのだ。
 ただその時に守られたことだけは忘れずに。


鴻上が退院した日は、高内と希がやってきてお祝いをした。
 鴻上は酒は遠慮したが、持ち込まれたステーキは喜んで食べた。
 詢はそんな高内と希に感謝をまた告げ、鴻上もいない間に沢山世話になったと礼を言った。
「二人には本当に世話になった」
「いや、ほら仕方ないじゃん、元々は俺らが関わるって首を突っ込んだ事件だし。最期まで見るのは当たり前」
「そうそう、僕は部屋に泊める時からずっとそう思っていたよ」
 二人はそう言ってくれて、今度はこちら側から奢るというと。
「じゃあ、あの高級しゃぶしゃぶがいいなあ、あそこの店、俺じゃ予約取れないんだよね」
「分かった、取っておく」
「さすが、鴻上。行きつけだもんねえ」
 鴻上と高内の間にある友人間のやりとりに、詢と希は苦笑して、こっちはこっちでフルーツケーキを買ってくる約束をした。
 詢の会社の近くにある人気店で、予約一ヶ月待ちと言われているケーキだが、今から予約すればちょうど二週間後に食べられるらしいので、ネットですぐに予約した。
「やったー、ケーキゲットした」
「これでも足りないかもしれないけどね」
 詢はそう言うけれど、高内と希はそれで喜んでいるからいいかとなった。
「そういや、家って全面リフォームしたんだ?」
「そう、元の二世帯住宅風にドア一枚で出入り出来るようにした。玄関はお互いにあるけど、どっちからもすぐに出入り出来るようにした。玄関先は危ないから、リビングの奥から繋げたけどな」
 今回の教訓から、ドアはリビングに付けて出入り出来るようにして、なるべく玄関から逃げられるように距離を作ったのだ。玄関先の小部屋にドアを作っていたせいで、逃げ道がなかったことから鴻上は図面を引き直してそうした。
 あの部屋は両方の部屋を完全にリフォームした。
 血まみれになってそれが張り付いて板に染みができたのもあるし、壁にも血が飛び散っていたから、こうなったらと鴻上が全面リフォームにしたのだ。
 壁紙も床板も変わり、部屋の構造自体は変わっていないけれど、明るい部屋になったと思う。
 ここに住み続けるのは、詢はここでいいと言ったからだ。
 あとこんな事件後に物件が売れることはまずないので、売りに出すメリットもなかったため、二人で話あって、リフォームで大丈夫だと判断した。
 そのお陰でお互いの部屋は好きな壁紙や板などにするという楽しみが増えて、詢も自分の部屋を好きにできた。
 その部屋であるが、詢はまだ鴻上から前のマンションの家賃で借りている。
 鴻上は家賃はいらないと言うけれど、詢はじゃあ家を出ますと言うので渋々前の条件になっている。
 詢の月収ではさすがにここの家賃を全額負担しますとは言えないので、そこは鴻上といるための妥協点だと言った。
「結局、雰囲気も変わって前より明るい家になったな」
 その部屋を見て高内がそう言うと、鴻上が言うのだ。
「気分が変わったからね。そういうことなんだろうな」
 つまり、鴻上の気分が明るい気分だから明るい色になったというわけだ。それには高内も希も目だけが天井を見て呆れた顔をしている。
 二人のロフトベッドも買い換えて、どっちでも寝られるキングサイズのベッドに買えた。これで気分次第、どっちの部屋ででも寝られるようになった。
 これからは二人はその日の気分でベッドを行き来するけれど、恐らく鴻上の方が詢の部屋に入り浸りになることは予想できたので、所々に鴻上の私物があったりなんかする。
 鴻上の家は他の会社の人が来ることもあるだろうということで、詢はそっちにはあまり入り浸りはしないだろう。
高内と希たちと盛り上がって食事が終わると、二人は早々に部屋を後にした。
「どうせ、あいつらも二人っきりになりたいんだろう」
 玄関先で鴻上がそう言うと、詢はニコリと笑った。
「僕も嘉章さんと二人っきりになるの、嬉しいです」
 三ヶ月も鴻上のリハビリで忙しかったのもあるし、日常に戻れたならと詢が期待していることもある。
 それは鴻上も望んでいることだと瞬時に分かった。
「おいで、詢」
 そう言うと鴻上は詢を自分のロフトベッドに招いた。
 そこは新しくなった鴻上の完全なプライベートで、詢はここに住んでから一度もここに上がったことはなかった。
 誘われてベッドに腰をかけたら、鴻上がそんな詢に言った。
「詢のお陰で私は今、もの凄く幸せだ。だからもっと詢を感じたい」
「嬉しい、僕も嘉章さんを感じたい……また激しく抱いてください……」
 詢はそう言って鴻上に抱きついた。
 

二人は縺れながら、服を脱ぎ合って、そしてキスを沢山した。
「……あ……はっあっ」
「詢、可愛い……私の詢……」
「ああ、うれしい……嘉章さん……」
 激しく求め合ってしまうのは仕方ないことだった。
 詢は体を準備していたのもあり、あっという間に鴻上の手を煩わせることなく、挿入までスムーズだった。
「ああっうれしい……嘉章さんのおちんぽっ……あっ、あぁんっ、あんあんあぁんっ! あぁあんっ! んんっ、あぁっ!」
 深く鴻上はペニスを突き挿れて、詢の中へ挿入り込んできた。
詢の中は鴻上のペニスを覚えていた。しっかりとそれを受け入れて、これだと思えるほどの安堵がそこにあった。
「ああんっ、ああ、これ、嘉章さんの、うれしいっんっぅ……ひぁあんっ!! ふぁっ、おちんぽいいっ、ちくびも、すごいよぉっ」
 鴻上は挿入をゆっくりとしながら、詢の乳首も一緒に吸い上げた。
「ああっちくびっ……おまんこっ……ああんっいいっおちんぽっいいっ……あああんっあああっ」
 詢はそれに歓喜したようで、自ら腰を振って鴻上を求めている。
「詢……いやらしい腰つきだ。待ちわびていたんだね……」
「らめっちくびっあああんっおま○こしながら……ちくびっらめっああんっきもちいいっああんっあたまおかしくなる……ああんっ」
「詢、もっとだよ……私を満足させてくれ」
「あぁっもっと嘉章さんも、気持ちよくなってっはぁっはぁあぁああんっ! ひあっらめっあっあんっああんっ!」
詢は自ら腰を振って鴻上を誘った。
 中でペニスを締め付け、少し鴻上が力強く腰を打ち付けてくるのを感じて、それで一気にあの夜の快楽を思い出した。
「んあっちくびっいいっああっおま○こいいのっ……ああんっちくびっいいっコリコリしちゃ……いいっああんっ……!」
鴻上は詢の乳首を弄りながら、腰を打ち付けてくる。
「ここを擦り上げたら、もっと気持ちよくなれるよ」
抉る様に奥まで突き挿れてしまうと、詢は悲鳴のような嬌声を上げた。
「あひっ、こんなの、むりっ、はぁっ、あっあっあたま、おかしくなるっあひっ……あ゛っあんっあんっあっあっあっあんっ」
中を抉られていいところを擦り上げられて、詢は体を何度も痙攣させる。
「ちくび、きもちいい、あはんっあぃ……っ! あっ! あは、はっあ、ぁ……っ、おま○こ……すご……っ、きもち、ぃ、い……っ!」
「ああ、私も気持ちがいいよ……詢」
「あぁあんっ! ひあっ、あっ、あっ、ちくびっ……らめっ、あっ、あぁんああぁーっ……、あひっ、んっ、ああっ、だめっだめっ、乳首へんっ……こんなっ……あああ~っいくいくっ」
「……っ!」
 乳首を吸い上げながらペニスで奥を突き上げられたら、詢は耐えられずに絶頂をした。
 精液を吐き出している時に、鴻上によって精液を中出しされた。
「あ゛ああっ……あっ、あ゛っ、らめっらめええっ、あ゛あああぁっあ゛っい゛っ、あっんっ、、いくっあ゛あ゛っあっらめっあ゛っんっ、あっ、あぁっ、いくっ、いっちゃうっ……あぁあああん!」
中出しされるだけでも詢は絶頂ができた。
 連続で絶頂させられたけれど、二回目はドライで達していて、恐ろしいほどの快楽が脳天を突き抜けてきた。
 それによって完全に詢はセックス脳になってしまい、後は言われるがままに腰を振るだけになった。
「おまんこ……ああっ……らめっゴリゴリしちゃっ……ああんっ嘉章さんのおちんぽっおおきいいっああんっ……ああんっ」
鴻上はリハビリをしていた関係で、筋トレもしていたからかあの時よりも確実に体力がある状態だ。
 そのうえ絶倫である鴻上は、射精をしても収まる訳もなく、またペニスを勃起させて詢の中を犯し始める。
「いいっ……きもちいいっおちんぽ……ああっ……いいっ気持ちいいっ……ああんっああっあああんっ」
「ああ、いい感じにほぐれてきたね、さあこれからだよ……もっともっと沢山しようね……詢」
「もっとたくさん、いい……ああんっおちんぽっいい……ああんっああっ……きもちいいっああんっ……ああんっおま○こっああんっいいっきもちいいっおちんぽっああんっらめっらめっきもちいいところばっかっ……こすっちゃっああんっらめっ」
 完全に快楽に支配された詢の妖艶さは、鴻上が見つけたものだ。
 セックスは相性だと言うけれど、その通りでこれまでに鴻上がしてきたセックスの中でこれほどの逸材は詢だけだった。
 だからこそ手放す気は一切なかったし、もっと詢に乱れてほしかった。
詢の奥をさらにこじ開け、結腸までも侵入させる。そうすると詢は完全に狂ってくれるのだ。
「ああっ、すきっ好きっ、おちんぽしゅきぃっ……あ゛っあ゛っ、あっ、きもちいとこっ、ゴリゴリされてっんっあっあああんっ」
詢はあの時の深い快楽まで辿り着き、その時以上に感じて鴻上にもっとと強請った。
「ああ……嘉章さんすきっ嘉章さんのおちんぽもっ……すきっああ……きもちいいっああんっおま○こゴリゴリされて……ああんっいいっ」
「ここで中出しされるのが好きだったよね?」
「好き、好き、中出し好きっおちんぽっきもちいいっああ……いいっおちんぽっ……おちんぽっああんっきもちいいっああんっ」
「じゃあ中出しをしよう……」
「あっあ゛っ激しぃっ……ん゛ああんっあ゛っあっあひっ……あ゛っあっあんあんあんっきた、せいえき中出しきたっあああああっ!」
 結腸に精液を中出しされると、詢は体を痙攣させて絶頂をした。
 たっぷりと中に精液を感じて、その余韻に浸る間もなく、鴻上が腰を動かし続ける。
「ああっすごいっおちんぽっすごい……ああんっきもちいいっああんっあああんっあああっ!」
「もっとだよ……もっと詢」
「あ゛あああっ……あぁっあっいいっ、きもちぃっ、、おちんぽ、大きくて、おま〇この奥まで届いてるっあああっあぁっあっあっ」
 詢も興奮しきっているけれど、それ以上に鴻上が興奮している。
 そんな鴻上に振り回されて、セックスは何時間も続いた。
 でも明日は土曜日で会社は休み、思い存分夜を楽しむことができる。
「ああ……おおきいっおちんぽっきもちいいああんったあんっあああんっ……きもちいいっああんっ」
「もっとだよね。もっと、奥までしっかりとまた中で出してあげるよ」
「ふあああっ……んっあっ、あんっ……俺のおま〇こ、おちんぽで、気持ちよくなってっ……いっぱい中で出してっああっあっあんっあぁあんっああ……ああっんっああんっんあっあああんっああっ……きもちいいっああんっああっいいっああんっ」
 ガンガンと突き上げながら鴻上は聞いた。
「何処に出して欲しい?」
「あっあっあっおま○こ……ああんっおま○こに出してっ……ああんっおちんぽっすごいっああんっあああっ、おま○こっ……ん、いいっ、精液おま○こに出してっあっあんっ、おま○こに、精液、中出しがいいっ……俺のおま〇こでイってっあっ、もっときもちよくしてっあっあ、ああああっ」
「いいよ、ふ……っ」
 二人は同時に絶頂を迎えて、射精をした。
 たっぷりと精液を中に出して貰って詢は満足な表情で鴻上を見る。
 鴻上はそんな詢にキスをして言うのだ。
「詢、愛しているよ、私の詢」
 命をかけて守った愛する人、その人と生きて抱き合えることが鴻上には何よりも嬉しいことだった。
 そんな鴻上の言葉に詢は微笑み、そして同じ言葉を返すのだ。
「僕も、嘉章さんを愛しています。もっともっと愛して」
 そう愛を知った詢は貪欲に鴻上の愛を求めた。
 鴻上は詢から愛を返して貰い、そしてまた愛を与えるのだと張り切った。


 もちろん、翌日には詢は完全に寝込み、体力のなさを鴻上に少し笑われた。
「ジムに一緒に行くかい?」
「……一緒します。せめて寝込まないくらいに……」
 さすがにデスクワークが多い詢である。体力差で寝込むのだと思ったのだ。
 しかし体力が付いたことにより、セックスをする時間が長引いただけで、結局詢は撃沈する未来しかないのである。
 けれどそれでも二人はそうやって楽しく生きてくことができる。

 大きな事件もやがて人は忘れ、そして日常が戻ってくる。
 そんな日々が続いていくのだ。

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