Echo
6
斐都は清秋の部屋から持ち出したDVDを見るのをやめられなかった。
斐都の父親である清春と叔父である清秋。二人は兄弟なのに兄である清春が弟である清秋のペニスを手で扱き始めたのだ。
しかもこれは隠し撮りであり、きっと清春は気付いてないことだけは分かった。
『兄さん、それだけじゃ大きくはならないよ。分かってるでしょ』
そう清秋が言うと清春は顔を赤らめてから清秋のペニスを口に含んで口で扱き始めたのだ。
『ほら、兄さん、いつものように、そう……いいよ気持ちがいいよ』
衝撃の光景に斐都は目を疑った。
「うそ……そんな……」
清秋がこれを残しているのだろう。わざわざ近親相姦をしているところを録画に残していたのはこれできっと清春が逆らえないようにするためだ。
どう見ても年齢的に清秋は中学生くらいだ。けれど体は清春よりも大きく、筋肉も付き、がっちりとした体系をしていた。
確か空手を習っていたらしいとは聞いたので、そのせいで体ができあがっているのだろう。だから清春が兄だと言われたら、表情でやっと大人だと分かる程度だ。
それでも清春は大学を出たばかりだろうに、どうして清秋に言われるがままでいるのか斐都には理解ができなかった。
けれど清秋が言っていた。
「兄さんはとても優しかった。そう凄くね」
つまり両親に捨てられたと言っていた二人っきりの兄弟で、弟が小学生くらいだった場合、清秋の面倒を見られるのは清春しかいないのだ。つまり逃げられなかったのだ。
拒否しても体格差で襲われる。襲われ続け犯され続けたら、きっともう普通の感覚はなくなっているのかもしれない。
清秋は清春の口でペニスを勃起させてもらうと、すぐに清春を押し倒した。
『あ、あ、あ……だめっ……清秋……あああっ!』
ズップリと大きなペニスが清春のアナルに吸い込まれるように挿入り込んでいる。
『もう兄さんってば、中がもうトロトロして待ちわびているくせに……ほら、こうされるのが好きなんだよね』
『ああ、だめっ……あっあああああっ清秋……ああっああ!』
清秋のペニスは普通の一般的なペニスよりは二回りほど大きかったし、長さも長くカリも大きかった。それが中を抉っているのか、清春は駄目だと言いながらも気持ちよさそうに口から涎を垂れ流している。
とても嫌がっているようには見えなかったし、寧ろ体全体で喜んでいるのが分かった。
そうかと、斐都は思った。
父親がこういうのだったから、自分もそういう素質があるわけだと腑に落ちたのだ。
近親相姦で驚くよりも、こうも血が濃い間柄でもセックスをしてしまうくらいに倫理観もない血を引いていると言われたら、納得ができてしまったのだ。
『ひゃぁああっ、あ、おちんぽ、熱いっ、ああっ、おま○こ、気持ちいい……っ! おま○こっ、ああっ、きも、きもちいい……っ』
画面では清春が喘ぎ声を上げて完全に清秋に堕ちている。
『あぁんっ! きもちがいいっああんっも、らめっああんっああんっ、あぁあっ、す、すごいぃ……っ!』
『ああ、兄さん、気持ちがいい……兄さん、愛してる……兄さんだけだよ、俺を捨てないで……』
必死にしがみついている清秋に清春はしっかりと清秋を抱きしめた。
それはこんなことをしても決して清秋を見捨てないと言っているかのようで、清秋の表情は穏やかになる。
きっとここで清春が清秋を拒否したら、きっと清秋は家を出てしまい、真面な道には戻れないだろう。そういう環境で育ってきたのか、清春は絶対に清秋を捨てることはできなかった。
『ああっ……! あ、やあぁ……っ! あぁあ……っ、おちんぽいい……っふぁあああっ! あっあっらめっおま○こらめっ、あっら、らめぇ……っ』
「兄さん……ああっ気持ちがいい……兄さんだけだよ……兄さんだけ……」
『ひゃあぁっ! あぁっあぁっ! らめっあっあっおま○こきもちぃい……っ! ひゃぁああああーっ! ああぁああ――っ! やぁあーっ!』
「あ、あ、出る中出しするよ。兄さんが孕んでくれたらいいのに……」
『あぁああ……っ、あぁ、あぁあ……ああ……っ、ぁ、あんっ! んっ、んぁ……っ! あぁっ、ああ、ああんっ!』
中出しをされて清春はそれで絶頂をしていた。
ハードなセックスをしている映像はその後も日にちを変えてハメ撮りだったり、様々な姿の清春が映し出されていた。
それは淫らで淫乱で、美しいとさえ思えるようなものだった。
どれだけ撮影者である清秋が清春を愛しているのかが分かるくらいに、清秋は清春を抱き続けている。
抜かずに中出し四回など、きっとされたら気持ちがいいだろうと思えるセックスで、それを見ながら斐都はオナニーをしてしまっていた。
それくらいに二人の絡みは素晴らしかった。
『あっあっあっおま○こ……ああんっいいっおま○こいいっ……ああんっおちんぽっすごいっああんっらめっらめっああんっ』
ゴリゴリと中を抉るような腰使いで清秋は腰を振り、清春を犯し続ける。
その強引さと若さゆえの乱暴さが垣間見えて、それは斐都が知っているセックスではなかった。
こうされたいと思うほどに愛されているセックス。
それは結城からは与えられなかったもので、斐都はこれが欲しいと思ってしまった。
「ああ、父さん、イヤラシイ……叔父さん、すごい」
『あああっ、おま○こっ……ん、いいっ、おま○こに出してっあっあんっ、おま○こに、精液出していいっ……俺のおま〇こでイってっあっ、もっときもちよくしてっあっあ、ああああっ』
「僕も、欲しい……中に欲しい……」
中出しはしてもらったことはないから、あそこまで清春が気持ちよくよがっているなら、斐都もそれが欲しかった。
そしてそれはこの同じ家にあるのだ。
どうしてもそれが欲しい気持ちがわき上がり、斐都は持っていたディルドを持ってきて近親相姦をしているセックスを眺めながらオナニーをした。
『んあっああんっああっああんっ……あっあっああっ……あん……あんああっ……あんきもちいいっ……あんああっ』
清秋が腰を振るようにディルドを突き挿れて前立腺を擦り上げる。
大きなディルドは夏休みに行ったラブホテルでこっそりと買った物だ。
大きな物であったが、結構安かったので帰り際にトイレに行く振りをしてこっそりと買った。
結城はああいうものを使わなかったし、使うことを許さなかった。
それでも斐都は興味があったので買ってみた。
案の定、それはオナニーで使うにはちょうどよい大きさで斐都はそれでオナニーをするのに填まった。
もちろん結城にバレないようにしていたし、アナルを使わないでまた解すのは苦労がいるから、それを使って維持をしていた。
けれど清秋と住むようになってからなかなか使う機会がなかったけれど、あまり解さなくてもアナルにはしっかりとディルドは填まってくれた。
「んあっ、ああぁっ……はっ、はっん゛っ……ん゛ああっうあぁっ…ん゛あっ、あっあっあああぁぁっ……」
清春が犯されているのを自分がそうされているように妄想してみたら、想像以上に気持ちが良くなって斐都はコンドームをつけたペニスから精液を三度も吐き出しながら絶頂をし、そしてとうとうドライオーガズムを覚えてしまった。
清春が気持ちよさそうにしているから、自然とその真似をしていたら、できるようになっていたのだ。
こんな絶頂の仕方を結城とのセックスで味わったことすらなかった。
まさか相性というものがあるとするなら、結城はディルド以下ということになってしまうけれど、そういうことなのだろう。
「ああ、父さん羨ましい……叔父さんに愛されて……」
そのDVDを見始めてから六時間ほど経っていただろうか。
斐都は何時間もそして何年も清秋に執着されて抱かれている清春に嫉妬した。
禁忌がどうした。もう既に父親が犯しているじゃないかと思ったら、ゲイだったことくらいどうということはない。
そう開き直ってしまった。
それからDVDは叔父の部屋に戻した。
さすがに時間がなかったので、もう一つは見られなかった。
それが残念だったが、斐都は清秋が帰ってきた時間にはもう寝ていたし、朝起きたら清秋は既に出かけていたから、また部屋に潜り込んでDVDを探した。
すると清秋の研修用DVDの中身がほぼ清春と書かれているDVDばかりなのに気付いた。どうやらそれだけはどこかに隠し持っていたらしく、綺麗なまま劣化もない。
どうやら古いDVDから新たに焼き直したらしく、枚数はそれこそ二百枚はあった。
いつの間にこんなに運び込んだのか知らないけれど、一つの箱に百枚入っている箱が五箱くらいあったので中身が全部関係があるならきっと二百枚以上である。
気になって最初のNo.1を見てみると、清秋によって清春が最初に犯されたのが二十二歳の時らしい。撮影年数が出ているビデオで撮ったのか、日付が入っていたからだ。
それは春休みに入った時だろうと分かった。三月十日、それは清春が大学を卒業した日。とうとう清秋は我慢の限界に達したのか、清春の大学時代の悪友から貰ったクスリで清春の前後不覚にさせて強姦していた。
そして毎日毎日、それらは続き、清春は最初こそ抵抗を見せていたけれど、その映像を麻理子に見せてやると清秋に脅されると大人しくなり、言いなりになって清秋に好きにさせていた。
一週間が過ぎると清春は前後が分からなくなったのか、清秋のペニスを口でフェラチオを拒まずにするようになった。
そこから調教らしいセックスが始まり、四月の最初の週には清春は清秋との生活を継続すると言い、セックスも清秋の好きなときにしていいという誓約書にサインをしていた。もちろん何の効力もないただの奴隷契約であるが、それは麻理子に知られたくないという清春にとって、自分でこれにサインをしてしまったという状況を知られるわけにはいかなかった。
そう清秋はまだ十二歳である。
清春の言い分は通らないし、清春が捕まるだけである。
そうなったら逃げられるけれど、清春が黙っていれば清秋は普通に暮らせる。犯罪の片棒を担いだ経歴も残らない。
だから清春は自分の体を差し出すことで清秋の心が平穏であることを選んだのだ。
『俺らの親は、俺をどうせセックスの奴隷にしたかったみたいだしな』
清秋がそう言うので清春はそれを否定しないでいる。
どうやら清春が十八の時、親はお金欲しさに清春に体を売るように言ったらしいが、もちろんそれを清春は拒否した。すると親は清秋を客に差し出したのだという。
それは未遂で終わったものの、清春が学校に相談して警察に話を通したお陰で間一髪助けは間に合った。
けれどそれで清秋の心は壊れてしまったらしい。
清秋の前に同じくらいの年の子が犯されているのを見て、清秋は怖さに震える前に知ってしまったのだ。
ああすれば兄は僕の物になるんじゃないかという、かねて持っていた兄に対する執着の理由にだ。
そして親戚によって親から引き離して貰い、二人で暮らしていくと言う清春に親戚は身内の恥を知られるのは困ると資金援助をして、今斐都が住んでいるマンションを買い与えたらしい。
そしてここで二人はまぐわい、性欲に溺れた。
誰もいない、止めることもできない生活は清秋が医者になるまで続いた。
清春は麻理子とは付き合ったままであったが、それでも清秋が大学を出るまでは生活を見ると言って同居はしなかった。清秋が他人を怖がったからだ。
麻理子もさすがに二人兄弟の邪魔をすることもできず、そのまま看護師になったこともあり仕事が忙しいお陰で、清春とはあまり会っていなかった。
しかしそれは斐都を妊娠した麻理子の報告で終わりを告げる。
清春は関係を清算したがったけれどそれはできなかった。
清秋は家を譲る代わりに、毎週土日を一緒に過ごすことを要求し、その二日間は清春を好きにできた。
清春は仕事をしながら父親としてしっかりと子育ても手伝ったけれど、清秋からの陵辱を受け続けたわけだ。
そして清春が言った。
『もう、駄目だ。もう』
それが最期だった。
日付を見ると清春が事故で死んだ日だった。
それを見た時、斐都はその事故は事故じゃなかったのではないかと思えた。
自殺だったのではないか、そう考えた。
弟の執着と麻理子や斐都の存在、その二つを同等に愛することができなかった。
駄目なのはどっちだったのか。
でも斐都には分かってしまった。
捨てられたのは斐都たちだ。
清春の今までの表情を見ていたら、どこかで引き返せたはずなのに結局死ぬまで続けたのだから、少なくともバレる危険よりも弟離れができなかったのは清春の方だ。
実際、清秋は清春が死んだ後もちゃんと社会貢献して生きてこられていた。
後追い自殺なんてしていないし、悲観もしていないようだった。
つまり、いつか捨てられる自分を想像して、悲観したのは清春の方だったのだ。
そして捨てられるくらいなら、死んでしまおうと思えたのだ。
そこには麻理子や斐都の影なんて何処にもなかった。
そしてそこまで察した斐都は、母親である麻理子に電話をした。
「ねえ、お父さんとお母さんは物理的に愛し合ってた?」
それはどういう意味なのかという質問を麻理子はしなかった。
『お父さんに問題があったから、人工授精にしたわ』
「そこまで父さんを愛してた?」
そう斐都が聞くと、麻理子は遠く意識を飛ばしたのか一瞬の沈黙の後。
『いいえ。そうね、人が必死になっているものって欲しくなるじゃない? そんなにいいのかなって……それだったわ。確かにいい人だったし、生活もちゃんとしていたわ。あの弟に関わっている以外はね。本当にブラコンもいいところ。弟のことを一つでも悪く言うととにかく機嫌が悪くなって手が付けられなかったわ。弟の方も私のことは敵みたいに思っていたみたいだけれど。それも彼が死んだら終わったわ。私も弟も気が抜けた炭酸みたいになっちゃったわ。でも私はあなたがいたから、育てるために必死になれたし、その点は斐都にも感謝してるわ。でも全部過去なのよ、私には』
麻理子はそう言い、もうそのことに執着していくのはやめたのだという。
それが斐都のカミングアウトであり、その生き方をとてもじゃないが応援できるほど斐都を愛していた訳でもなかったのだ。
それはもう斐都も分かっていたから、今更であるが、何となくすっきりしたから拘りもなかった。
ただ戸籍上、母親としての役割は残っているから、二十歳まではそうであると言うしかないらしい。
「うん、ありがとう。はっきり言ってくれてよかった。ずっと引っかかったまま抱えていくのは気持ち悪くて。じゃあ、もう多分電話もすることないと思うから」
『そう、ならいいわ。あなたも覚悟が決まったみたいだし、あとは好きにすればいいわ。私はもう関わりはないもの』
そう言うと電話は切れた。
母親が出て行ってから初めてここまでの長電話をした気がした。
けれど、その母親、麻理子は全部を悟っていても止める気は一切ないようだった。
そうもう関係ないし、興味もないということなのだ。
それは斐都にとって前なら寂しかったけれど、今ではありがたいと思えた。
だってやることはきっと普通ではないからだ。
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