Eureka
1
その日、手島真希(てしま まき)にとって緊張をする一日だった。
地方の高校から、東京の大学付属の学園に転入したのだ。家庭の事情で引っ越しを余儀なくされ、一人東京へ来ることになった。
それだけでも不安でいっぱいであったが、問題は真希自身にもあった。
家庭の事情になっている理由が、問題の一つだった。
ただ、その時は流されただけのことだったと、今は思えるのだが、それでもしてはいけないことをしたという罪悪感が残ったままだ。
この学園に転入できたのは、理事の一人に親戚の叔父がいたからだ。母親の弟であるその叔父には、いろいろと援助をして貰っている。マンションに今の生活の費用まで全て出して貰っていた。
それも母親が蒸発したからである。
真希が起こした事件にはならなかったけれど、問題になった出来事のせいで、真希を置いて出て行った。父親は既に母親と離婚をしていたが、問題を起こした真希を引き取りにはこなかった。
一人になった真希は、母親の弟に引き取られた。叔父には子供はおらず、真希をすぐに引き取りに来て、いろんなことを助けてくれた。
だが、真希は叔父と一緒には暮らさずに、一人で生きる準備を始めた。
しかし、高校や大学は出ておかなければいけないという説得に応じて、学園への転入を決めた。
叔父に迷惑をかけたくないので、問題は起こさないようにしようと初日から大人しい子供の振りをしようとしていた。
クラスへの自己紹介は上手くできたし、隣の席の濱田昇(はまだ のぼる)という学生が親切にしてくれ、何とか順調なスタートを切った。
授業も付いていける範囲だったし、成績は悪くなかった真希ならば大丈夫だと言われたが、その通りだった。進学校にいた真希なので、ゆっくりな教室の雰囲気にはホッとしたほどだ。
それまでの生活と一変してしまったが、それでも真希は、あの事件から逃れることができたことがホッとすることだったのだ。
だが、運命はそこまで甘くはなかったことを知るのは、その日の放課後だった。
「え? これを音楽室に運べばいいの?」
急に集められたノートの山を、日直に当たる真希に運ぶように言われたのだ。
「うっかり、手島のことも日直に加えて計算していたんだ。まあ、そう仕事もないだろうしいいかと思ってたんだが、もう一人の日直が別の用事でいなくてな。もう放課後だから、時間がかかっても届けてくれればいいだけだから、申し訳ないが、頼まれてくれるか? ついでに特別棟の見学もしていいから」
そう言われて、真希は鍵を担任に渡された。
「じゃ、頼む!」
そう言うと担任は去っていく。
それを残された真希は、三十人分のノートの山を一人で運ぶことになった。
「手島。手伝おうか?」
隣の席の濱田が言ってくれたのだが。
「大丈夫、ついでにあちこち見てくるよ。濱田は今日は用事あるんでしょ? いいよ」
「そう? じゃ、お先」
濱田は本当に急いでいたようで、飛ぶように教室を出て行った。
もちろん、他の学生も一斉に教室を出て行ったので、真希は一人でそのノートの山を音楽室まで運んだ。
音楽室は特別棟と言われる場所にあることは、ここに来た時に貰った新入生案内パンフレットに書いてあった。
教室がある棟は、教室棟と教員が使う職員室や校長室などの棟があり向かい合っている。その教室棟の二階と一階で繋がっているのが特別棟だ。渡り廊下で繋がっているが、授業のある時間しか鍵が開いてない。
真希は担任に貰った鍵を使って二階の通路のドアを開けて入り、鍵を閉め直す。
そして四階の一番奥の教室に向かった。
学園の中で一番端になるところは、小山があり、そこに音楽室が来るようになっている。教室から遠いのは授業中に音が聞こえないようにしてあるのだという。
そこまで歩いていく間に誰にも会わず、四階まで上がってやっと音楽室を見つけた。
突き当たりあるのが音楽室で、その隣がその音楽を録音する録音室と、楽器を入れる倉庫となっている。
とにかく、音楽室のドアを開けて中に入り、黒板の前にある教卓にノートを乗せた。
「どこにいるんだろう……音楽教師だっけ?」
そう思って真希が振り返ると、そこには真希が想像すらしてなかった光景が見えた。
音楽の録音をする録音室のガラス張りの部屋の黒板が開いており、そこで一人の学生がガラス窓に押しつけられて、後ろから誰かに突かれているのだ。
「……っ!」
音は聞こえない。
だが激しい振動が壁に振動を与えていて、ギシギシと鳴った。
明らかにセックスをしている状態のそれを真希は目を見開いて見ていた。
動こうにも動けずにいたのは、その状態をよく知っていたからだ。
かつて、真希は教師と関係を持っていた。
そうなったのは、教師の熱烈なアタックからで、やがて躰の関係に陥った。
真希は流されるように躰の関係を続け、教師は様々なことを真希も躰に仕込んだ。
そうして一年経つと、その関係が周囲に漏れ始め、とうとう真希は教師との関係を理由に、退学するように促された。
教師は、そのことで注意をされただけで済んでいたが、真希は自主退学を余儀なくされた。それを知った母親は真希を捨てて出て行き、叔父が学校側と交渉してくれて、転入処置が執られた。
真希はその時に流された結果、自分だけが貧乏くじを引いたことになったとショックを受けた。それまで真希に甘い言葉を吐いていた教師は、その事件後、ただの一回も連絡すらくれず、別れることになった。
だから、真希は二度と同じことは起きないと信じていた。
その時は気の迷いから起こったことだと。忘れてしまえばいいと。
そう思っていたのに、目の前で起こっているのは、自分を破滅に導いたセックスだ。
後ろから激しく突かれて、嬌声を上げているであろう男子学生は、明らかに真希に気付いていた。
目でしっかりと真希を見て、挑発するように真希を見ている。
後ろで突いている人は気付いていないのか、とうとう最後まで突き続け、精を吐き出していた。
学生が絶頂をしたのが分かる。
その時、真希の中でなくなっていたはずの熱い思いが浮かんでくる。
毎日のように教師としていたセックスを、綺麗に忘れることはできなかった。背徳感のある構内で、堂々とセックスをする。それがとても良かったのだ。
教師と離れたことはよかったことだったと思えるのに、セックスができなくなるのは少し残念だと思っていた事実が、今真希の躰で立証された。
煽られて、真希の性器が半勃起をしている。
「……ふっあ」
逃げようにも腰が抜けたようにそこに座り込んでしまう真希に、学生はニヤリと笑う。そして後ろの人間に話しかけ、開けたワイシャツで下半身が全裸のままの学生が、録音室から出てきた。
「……っ」
あまりのことに驚いている真希に、学生が近寄ってきて真希に跨がった。そしてすぐに真希の股間に手を伸ばし、そこに触れた。
「あはっ、やっぱり勃起してる……どう、俺よかった?」
そう言われて、真希は学生に股間を服の上から擦られた。
「あ……だめっあっ……」
自分でオナニーをする感覚とは違う感覚が襲ってきて、真希は躰の力が抜けた。
「……んあっやめっ……だめっあっ!」
真希の反応に学生はニヤリとした。
「経験あるんだね……いいね、一緒にしよう?」
学生はそう言うと、真希のベルトをさっと外してしまうとズボンと下着を剥ぎ取った。
「あ……うそ……っ」
真希が逃げようとするのを、後から来た人が押さえてくる。
「見たのか、そりゃ可哀想に」
そう言ったのは、ワイシャツにスーツのズボンの教師だ。顔を見ても教師とは分からないが、年齢が明らかに教師の年齢だ。三十くらいの男性がここに学生といたのなら、この教師は音楽教師のはずだ。録音室を使っていたのも、音漏れを更にしないところを使っていたのだろうが、教卓のノートを見てその教師が舌打ちをした。
「合鍵がないと思ってたが、わざわざ教室じゃなくて、ここに運んでくるように言われたのか……まったく」
そう言って教師は真希の顔を覗き込む。
「へえ、お前、いい顔をするな……そそるぞ」
教師はそう言うと真希の唇にキスをした。
「んふっんんんんッ」
顎を掴まれてキスをされながら、いつの間にか真希の股間に学生が顔を埋めている。学生は真希の性器を口に含んで、フェラチオをしてくる。
「ん……んふうっ……んんんっ! ……んっ! んんっ! あっあああっ!」
口の中を舌で蹂躙され、油断しているところを性器をフェラチオされて、気持ちが良くなってくる。
忘れていた感覚であるが、すぐに思い出せる感覚でもあった。
「あっ……ああっ……だめっんあっああっ!」
嬌声を上げる羽目になった真希を教師が全裸に剥いていく。二人がかりで襲われて、真希は抵抗らしい抵抗もできずに、ただ二人に翻弄された。
学生に性器をフェラチオされたままで、教師の性器を口に咥えさせられた。
教師はイラマチオを真希の口で行い、押さえつけて腰を振ってくる。真希はその大きな性器を喉まで受け入れ、舌でも絡めた。
とても大きな性器で、あの教師よりも絶倫そうな張り具合に、思わず惚れ惚れとした。
「すごい、ノリがいい子だね……孔も慣れてるようだよ。ローションですっぽり入るし」
学生が手持ちのローションを使って、真希のお尻の穴に指を入れていくる。すぐに真希の躰はそれを受け入れた。それもそのはずで、真希はオナニーでさえ、孔を使ったオナニーをする。だから孔は柔らかいし、受け入れることにも慣れていた。
「そういう顔をしてるからな。流されて、受け入れてしまうタイプ……でも好みだから、俺が突っ込む」
「そういうと思った。先生の好きなタイプだもんね、この子」
二人に蹂躙され、抵抗もできないまま真希は受け入れ、教師の精液すら喉を鳴らして飲んだほど、真希も行為に飢えていた。
この時、薄らと頭の中で同じことの繰り返しより、楽しんだ方がいい気がした。どうせ堕ちるなら、今だけの時間だけ堕ちてみようと。
「じゃ、先生よろしく。俺は口を借りるかな」
孔を散々解してくれた学生が、真希の口に性器を付ける。真希はそれを自分で手に取って、ペニスを加えてフェラチオをした。
「……ふっあっうまい……んっいい」
「んふっんん……んふっ……んんんっ」
学生の性器を咥えている真希を、教師が足を大きく開いて、孔の中に性器を挿入してきた。
「んふっ……あっん……ああっん!」
待ち望んでいたとばかりに、挿入された性器を真希はしっかりと締め付けた。
「うわ……こいつ。慣れてるとか、そういうんじゃないな……くっそっ」
教師はゆっくりと慣れさせるように真希の中を擦ったが、一気に腰を大きく振って挿入を速めた。
「んふっ……あっんっああっ……んあっああっああっ!」
真希の中で大きくなる教師の性器に、真希は前の教師との行為が上書きされるのを感じた。大きくて乱暴で、それでいて傷つかないように抱いてくれるこの教師のセックスの仕方が酷く好きだったのだ。
独りよがりではなく、相手にもちゃんと快楽を与えてくる抱き方を真希はされたことはなかった。だから、こんな状況だったとしても過去を忘れさせてくれる、この行為が酷く心地よかった。
「ああっ……いいっ……あっああっ……んっあ……ああっ……んふっんんふ……んんっ」
真希は喘ぎながらも学生が興奮して、真希の口の中に性器を入れてくるのを受け入れた。いわゆる3Pという二人にされることは今までなかったので、新鮮だったが、二人とも優しく抱いてくれたので、真希はそれを受け入れるだけだった。
それは初めて自ら行為に溺れて、身を差し出した時間だった。
「やべっもういくっ……っ!」
学生がイラマチオを真希の口でして、一気に精液を吐き出してくると、真希はそれを飲み込んで後は教師の与えてくる快楽に悶え、嬌声を上げた。
「あっ……ああっ……んふっ……あっああっ! ああっ!んあっ!いいっ!」
教師は真希の腰を上げると、四つん這いにさせて後ろから真希を突いた。
「ひああっっ! ……あああっ! んっあっあっあああっ!」
「こいつ……煽ってくるの上手いな……ふっ上等だ……」
「ああっああっ! ああっんあっああっ……ひああっ……あああっあ゛あ゛っ!」
真希が嬌声を上げて躰を反らせると、学生がにこやかに笑っている。
「なんか、この子みてたら、攻める方に目覚めた感じ。受けでも抱いてみたい子っているんだね。可愛い……」
学生はそう言うと、真希にキスをするのだが、それを教師が引き離すように、真希を抱え上げた。
「ほら、キスはいいから、乳首を吸ってやれ」
教師がそう言うので、学生は苦笑する。
「もう、急に独占欲が沸いたんだね。いいよ、可愛い乳首を吸ってあげる」
真希は膝立ちしたままで後ろから教師に腰を掴まれて挿入されているが、前から潜り込んだ学生が真希の乳首を口で吸い始めた。
「ひあっだめっああっちくびっ……ああっんっだめっ! ……あああっんっああっ!」
学生が乳首を吸った後、噛んで舌で器用に舐め、片方の乳首を指で捏ねて、摘まんで引っ張っている。もう片方の手が真希の性器をいじってくる。
「ひあっあああっああっだめっそれ……ああ――――――っ!」
乳首を弄られながら挿入されることは好きだったが、前の教師はあまりやってはくれなかった。しかし今は舐められながら、性器まで弄られている。
とうとう耐えかねて、真希が絶頂に達すると、教師も精液を真希の中に吐き出して達した。
「ふあっ……ああっん……ああ……いってる……のに……ああっんああ゛あ゛あ゛っ」
絶頂して倒れ込んだ真希の乳首を更に噛んで舐めてを繰り返す学生が、真希のペニスを絶頂をしているのに更に扱きあげてくるのだ。
「ひあ――――――っ!!」
そのまま二度目の絶頂を味合わされて、真希は痙攣しながら倒れ込んだ。
床に倒れ込んだ真希を、教師が足を大きく開いて、また孔に挿入を始める。
「……ひあっああっ……あ゛あ゛あ゛っ」
教師は真希の上に跨がるように上から真希を犯し始める。
ビシャビシャと先に出た教師の精液が挿入するたびに吐き出されているが、混ざったローションが粘った音を大きくさせている。ブジュブジュッと大きな音を立てて、挿入が速められて、限界まで一気に真希は追い詰められた。
「あっあっああああっ……あああんっああっ! ……はあっんあっああっ!」
もう何も考えられないように掻き回されて、真希は冷静さを失って、ただひたすら翻弄された。教師はセックスが上手く、真希の躰の相性が酷くよかった。それ故に、真希は教師に離して貰えず、抜かずに三発、口を学生に犯されたまま四つん這いで犯されたりと、3Pを二時間もやる羽目になった。
「じゃ、俺はお先に……又はないか。じゃね先生。俺、攻める側になるから」
学生はさっさと着替えをして録音室を出て行くのだが、真希はまだ教師から解放されていなかった。
挿入した状態のままで膝に乗せられて、教師にキスをされながら、躰をまだ貪られていた。
「ああ、今日はサンキュな。お陰でいいモノ拾った」
教師はそう言っている。学生は音楽室の鍵をかけて部屋を出ると、警備員が通りかかった。
「お疲れ様です」
「あ、音楽室の戸締まりした?」
「はい、ちゃんとするように言われたので、一個一個確認しましたよ」
「そうか。じゃ、そこはいいか」
警備員は微妙なサボりで、音楽室の戸締まりを確認せずに四階のから一階まで学生を降りていった。学生が出た後のドアを閉めるためだ。
外が薄暗くなって、部屋まで暗くなったが、教師は真希を抱くことをやめない。
「はっあっ……んんっああっ……きもち……いい」
真希がそう呟く様に言うと、教師の性器がまた大きくなる。褒められると勃起が強くなるのは、性欲が収まらない絶倫だからだろうか。
「も……おしり……壊れちゃう……から……今日は……ね……?」
子供をあやすように真希がギブアップをすると教師はやっとセックスをやめてくれた。
ズルリと抜けていく性器が惜しくなる気持ちを真希は持ったが、それを我慢して性器を抜いた。
立ち上がると孔から教師が吐き出した精液が、止まることなく溢れ出てボタボタと床に垂れる。我慢して止まるものでもないので、真希はそのまま出るに任せて止まった辺りで、教師が差し出したタオルなどで躰を拭いた。
「だめだ……垂れてくる……」
真希がそう呟くと、教師が真希の躰を抱え、椅子に座らせて足を開かせた。
結局、孔の中の精液をそのまま出した教師が、責任を感じて孔の中の精液を掻き出してくれたが、その時にも真希を二回ほどイカせることをした。
「はっあっ……んっあ……」
グタリとする真希に教師が体を起こして服を着せていく。真希はダルイ躰を引き摺って、何とか服を着せて貰った。
「ちょっと座ってろ。送ってやるから」
教師はそう言うと録音室を出て行って、暫くしてから戻ってきた。
どうやら教師用の準備室に荷物を取りにいったらしい。
「ありがとうございます……」
「……お前、何年何組だ? 見覚えがないんだが」
教師がやっと真希の素性を気にしだして、真希は苦笑する。
「今日、転入してきました。二年A組の……手島真希です」
真希がそう言うと、思い当たることがあったようで、納得したように頷いた。
「だよなやっぱ。お前を今までに見かけていたら絶対手を出してるはずなんだが、それがないのが不思議で仕方なかった」
そう教師は言うのである。
真希は苦笑した。そういう人なのだなと納得したのだ。
「あなたは、音楽教師?」
真希がそう尋ねると、教師が言った。
「音楽教師の伊計久嗣(いけい ひさつぐ)だ」
そう自己紹介をされて、真希はなるほどと思う。この学園には音楽の時間が何故か選択しないでもある。週一回であるが授業がある。その教師なのだ。道理で自由に音楽室を使っているわけだ。
「あ、でも吹奏楽部とかやってるんじゃ……?」
そういやいなかったなと真希が言うと、教師は言った。
「ここには楽器がないのと、吹奏楽部ってほどの学生が集まらないから、隣の学園と共同でやってる。で、あっちの学校の設備の方がいいから、あっちに行ってるんだ。学生の帰り道もあっちの学園の方が駅に近いからな」
伊計がそう言うので、ふーんと真希は納得する。
警備員に見つからないように建物を出て、伊計の車で学園を後にする。
特に話すことはなかったので、真希は付かれていたのでそのままうとうとしながらも、家まで送って貰った。すると伊計がそこに着いた瞬間言った。
「何だ、俺のマンションの上に越してきたの、お前だったんだな」
伊計がそう言うので、真希はまさかと思って郵便受けをみると、確かに真希の手島と書いてある郵便箱の下の郵便箱に伊計と書いてある。
「うそ……」
「なるほど、これも運命か」
伊計がそう言い出して、真希はキョトンとする。
「俺の部屋に寄っていけ、続きをしよう」
伊計がニヤリとして真希を誘う。
そこでやっと伊計の顔を真希が確認できた。
二枚目のイケメンと言っていい、彫りの深さと整った顔立ち、顎も鼻筋もスッとしている。好みの顔と言われたら、そうだと答えるしかなさそうな一目惚れに近い感覚。
身長も二十センチは違うから、見下ろされているのだが、怖さは感じない。
酷く甘く、危険な存在だと分かっている。
また教師と関係を持つのも二の舞だと分かっている。
それでも真希はこの誘惑に勝てるほどの、精神と神経を持っていなかった。
まだ子供で、性欲を押さえる方法さえ知らなかった。
だから、真希はその誘惑に乗った。
自分の家に戻って制服を着替えて、食事をしてしまうと、伊計が緊急避難用のベランダの階段を下ろして、そこから降りてこいと真希に電話をしてきた。
真希はその通りにして、伊計の部屋を尋ねた。
ここから部屋に入ったら、二の舞である。そう思ってしまうのだが、伊計がドアを開けて手を出し延べてくるから、真希はその手を取った。
だって二の舞でも、それでもいいと思ったのだ。
教師が愛してくれないことも知っている。躰の関係だけなら、きっと傷つかない。
過去の出来事を忘れたくて、真希はその上書きに伊計を利用したのだった。
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