Allegro vivace
10
パーティーから一週間後。
バイトで忙しくしていた春休みが終わり、大学が始まった。
三回生になった阿古たちは、講義に忙しくしながらも週一回のバイトも続けていた。
昼食時間になると、いつもの大学門通りに出て、その日のおすすめがいい店に入る。阿古達が注文して待っている間に、嗣永がやってくるのが日常だ。
「湊人、おはよう」
嗣永がそう言いながら、阿古の頬にキスをして席に座るのにも、阿古どころか今川や青柳すら慣れたほどだ。
「おはよう、裕輔」
阿古と嗣永がお互いを名前で呼ぶのには、春休みの間に慣れた。人前でも平気になっていたが、それが親密度を更に上げていた。
二人の付き合いが三ヶ月に入る頃には、大学での噂はあっさりと消えていて、年度が替わったことで世間の関心が途絶えたのも影響しているのか、二人が歩いていても茶化されることもなかった。寧ろ前より話しかけられることが多くなったほどだ。
「あ、嗣永。お兄さんにお礼を言っておいてくれよ。試写会のチケットを送ってくれたんだ」
青柳がそう言ってくる。青柳はあのパーティーで嗣永の兄と出会い、映画鑑賞が趣味なだけあり、嗣永の兄裕策の出ている全ての作品を見ていたことで、裕策に気に入られたのだ。冗談で試写会のチケットを送ると言われていたが社交辞令だと受け取っていた青柳のところに、事務所からわざわざチケットが送られてきたのだ。
青柳は大喜びであるが、お礼を言う手段がないので嗣永を使った。
「おう、言っておく」
「お前らも見たか」
青柳が話を進めると、今川は青柳が貰ったチケットで一緒に見に行って、阿古達は本人から家族宛に送られてきたので、家族会で見に行った。
「やっとの主役。なのにめちゃハマり役で話題騒然じゃん。さすが裕策さん!」
「凄く映画に引き込まれたよね。サスペンスってのもあったけど、主人公の気分にハラハラしてドキドキして二時間あっという間だったね」
阿古がそう言うと、今川も頷いている。
散々、裕策を褒めると、少しだけ嗣永の頬が赤くなって照れるのだが、それがちょっと面白いと阿古は思っている。兄が褒められると自分のことのように喜ぶように嗣永はなっているのだ。自慢の兄だったけれど、ずっと悩まされていた兄でもあるが、最近打ち解けてからは良い感情しか持っていないらしい。
「お待たせしました~、特製ハンバーグランチ四つ!」
嗣永で遊んでいたら昼食がきた。いつも日替わりを頼んでいるので、皆同じモノを食べる。特に好き嫌いもないので、一緒に食べて終われるものになってしまう。
「そういや、春休み大変だったらしいな」
一人騒動を知らなかった青柳が、この間今川に聞いたことを思い出した。
「まあ、大変だったのは今川だけで、俺はそこまで大変でもなかったから」
そう阿古が言うと、今川はふうっと溜息を吐いた。
「あんな作戦で上手くいくわけと思ってたのに、ピタリと止むんだもんな」
今川がどんな言葉を尽くしたところで、何も聞く耳を持たなかった遠田が、ピタリと行動を辞めるほどのことが、あのパーティー中にあったことが今川には不思議でならない。しかも嗣永は、遠田と話しただけだというのだから、信じられないのだ。
「目に見えているモノと自分の感情と妄想に亀裂が入れば、割と冷静になるタイプだって、阿古が言っていたからな。目の前で目一杯幸せで笑ってる人が不幸に見えるほど、歪んでなかったってことだ」
嗣永はそう言う。遠田に阿古の行動を散々眺めさせたのは、心と目から入る情報が一致しない事実に遠田が動揺してからの方が効果があると思ったからだ。
実際は、阿古と両親の周りには議員が貸してくれた警備の人間が配置されていて、警備は厳重にされていた。遠田の行動は逐一見張られていて、何かある前に押さえることもできた。
しかしせっかくのパーティーである。それを損ねることなく、話し合いでどうにかしてみると嗣永が提案して行動していた。
ただこれらのことを阿古や今川には話していなかったし、最後に阿古が遠田に話に言ったのも予想外ではあった。
だが阿古に毒気を完全に抜かれた遠田は、自分の勘違いに気付いて何も言わずに去っていった。嗣永の言葉が何一つ間違っていなかったことを悟ったから、余計なことも言えなかったようだった。
「俺は早々に自分の家に戻れてよかったよ。青柳の家は別の意味で恐怖だったしな」
「何だよ、泊めてやったのに」
思い出したように今川がおぞましいモノを見るように、青柳に文句を言った。
「お前の家の冷蔵庫の中の数日どころか、数年経った干からびた得体の知れない食べ物だったモノの痕跡を見る羽目になって、俺はまずその冷蔵庫を捨てることから始めたからな」
今川がそう言うと、阿古も呆れたが、嗣永までもが信じられないものを見るように青柳を見た。
「そうそう、どこからか新しい冷蔵庫を貰ってきてくれたんだよな。めちゃくちゃ冷えてくれてラッキーだったんだよな」
青柳は懲りることなくそう言っている。
その他にも青柳の部屋は今川が住むには苦痛だったらしく、部屋中を掃除して捨てられるものは捨てて、部屋を綺麗にしたころにやっと自宅に戻れたというわけだ。
「まあ、そのお陰で俺の部屋は綺麗になったから、家賃は取らなかったけどね」
二年間に溜めた汚れを掃除して貰ったので、大家からも今川は褒められたらしい。その大家の伝で、青柳の部屋の粗大ゴミを捨て、使えなくなっていた電化製品の変わりを探して貰ったという経緯があるらしい。
「うわっ……俺、青柳の家にはいけない……」
阿古がそう言うので、嗣永が笑う。潔癖ではないが、物を溜め込まない阿古は、ものがいっぱいという部屋が信じられないらしい。嗣永も同じなので青柳が違う生き物に見えた。「それはともかく、まさかパーティーなんかに招くとは思わなかったしな」
今川がそう言う。騒動後はお互い忙しく会ってなかった上に、一応のお礼は言ったりしたが、落ち着いて話してはいなかった。
今川は政治家の個人的なパーティーに呼ばれるとは思わず、普通に参加したらとんでもない規模になっていた驚いていた。
「身内でやろうとしたんだけど、どういうわけか父の上司にまで話が広がって、気付いた時にはああなってたからなあ。無駄に力のある人は恐ろしいってことだ」
嗣永は最初から遠田と話ができればいいと思っていたらしいのだが、パーティー中に暴れ出すような人間ではないと、阿古の話からの見解でそうなったのだという。
「偉い人のパーティーを暴言で台無しにするような教育を受けてないって、先生が言うんだよなあ。教師に育てられた子供なら、親の言うことが絶対で逆らえないから、圧倒的な力を持つ人の側で暴れられるほどの神経を持ってないってさ」
そう言われると、阿古と今川は顔を見合わせた。
確かに遠田は教師に逆らう人間ではなかったけれど、絶対的な存在として思っている節があった。将来自分も教師になるために大学も選んだほどであるから、その道を外れることもしないだろう。
政治家の先生の見解はまさに遠田の人となりを見抜いたものだった。
「それに暴れられてもいいように、湊人の周りに警備を沢山付けて貰ってたから」
「へ? そうなの?」
「そう」
そんな作戦を成功させるために、嗣永も政治家の力を利用させてもらったらしい。
「あのパーティーのお陰で、さすがの遠田も毒気を抜かれて呆けてたしな。先生の言う通り、問題も起きなかった。ま、その先生は名目は何であれ、パーティーやりたかっただけみたいらしいけど、そっちも部下に好評だったらしくて、恒例行事にしようって盛り上がってる」
「へ、へえ、怪我の功名みたいな話だね」
なんだかんだで政治家である。利用価値がある騒動も利用してくる。
阿古はついていけない政治の世界の駆け引きに呆気に取られる。
「阿古は謝ってもらったらしいけど、俺、謝ってもらってないからな」
今川が恨めしそうに言った。
阿古もそれを思い出す。
「そりゃ、二度と湊人と今川の前に姿を見せるなって言ったからなぁ。湊人は自分で会いに行ったから直接言えただろうけど、あの性格からして、本気で会う気もないんだろうな」
意外に真面目で、約束事を違えられる性格ではなかったようだ。それに阿古の追撃も相当効いていたようだから、謝罪とはいえ、今川に接触を持つのもよしとしなかったのだろう。
「俺のことも言ったのか……なら仕方ないな」
嗣永が阿古だけではなく、今川も阿古にとって大事な友人である認識があって、守るべき物だと思っていると言ったことが、今川にはちょっと意外だったらしい。
「悪いやつじゃないんだが、関わり合いになるには少々問題もあるって感じかぁ」
事件の蚊帳の外だった青柳がそう言った。
「そう、まさにそんな感じ。害はないんだ。いたところで。でもあいつの周りがそうもいかない人間が多いってことだな」
嗣永がそう言った。阿古がカミングアウトしたことは、遠田と関係性を持っていれば遠田の親にも届く。その時に問題になる可能性が高く、いらぬ苦労を背負いそうだと青柳も判断できたらしいほど、遠田の周りは問題が多そうだった。
たとえ、本人がそこまでの問題を持っていなくても、その周りが騒動を持っている場合は、それを避けるために本人ごと切るしかない場合も人間関係ではある。
「まあ、二年も前に終わってたことだから、今更だしな」
小中高と付き合いがあって親友だった今川はそう割り切った。幼なじみでもいつかはこういう日も来る。そういう巡り合わせが大学という場所に入学する時に起こっただけなのだ。
「で、今日の飲みは何処にするんだ? それ話し合うために幾つか候補を持ってきたんだけどさ」
そう話を切り返して、青柳がパンフレットを出した。飲みの当日なのにまだ飲みに行く店が決まっていないのだ。
「そうだった。それが決まらないことには、どこに集合したらいいのかさえ分からんぞ」
「あと三十分じゃん。あ、従業員さん、コーヒーのお替わりー」
「俺もー」
暗くなりかけた雰囲気が一気に目先の未来のことに変わる。
この話はきっと二度としないだろうが、その未来で思い出話に変わることまで、この友人関係は続けていきたいなと、阿古は強く願った。
その時は、いつでも嗣永が隣にいてくれると嬉しい。そうした些細なことを願わずに入られない、そういう事件の終わりだった。
その日の飲み会は、散々飲んだ後にタクシーを拾った。
青柳と今川は自宅が近かったので終電に乗り込んだが、嗣永のマンションへの最寄り駅の終電は終わっていたからだ。
「しくじったなあ。まさか終電に乗り遅れるとは……」
「はは、仕方ないよ。個室の時計が五分遅れているなんて思いもしなかったしね」
個室の時計が五分遅れていることに気付いたのは、終電に乗るために駅に着いた時だった。駅の電子時計が十二時を過ぎていたから、二人で電光掲示板で確認したら、二分前に終電が出ていたのである。
とはいえ、タクシーに乗ってもそこまで遠くはない。歩いて帰れる距離でもあるが、さすがに酔っている状態で夜中の都内を歩き回れる気がしなかった。
そのタクシーを十分で降りて、嗣永のマンションに入る。
もう慣れた様子の阿古は、マンションに入ると真っ先に居間に上がり込み、暖房とテレビを付ける。それが終わるとキッチンで自分専用のマグカップとその色違いの嗣永のマグカップを取り出してコーヒーを淹れる。
その間に嗣永が自分の部屋に荷物を置いて、風呂の用意をしてくれる。
風呂の湯を溜めて、居間に戻ってくる。
二人でソファに座って、今日のニュースや明日の天気予報を見る。
阿古の携帯のアプリが通知音を立てるので見てみると、青柳や今川が自宅に着いたと報告してきた。両方とも無事に自宅に着いたので、おやすみと文字を打って、友人との一日を終えた。
それを確認した嗣永が、阿古の手から携帯を取り上げる。
「ここから、二人の時間」
そう言って嗣永が携帯をテーブルに置いた。
そのまま嗣永の手が阿古の頬を撫でて、そのまま二人は口づけをした。
啄むように何度もキスをして、頬や額といろんなところに嗣永はキスをした。
「ははは、くすぐったいから……もう」
阿古がそう言って躰を捩って、嗣永の腕から抜け出す。
「お風呂に入ってからね」
阿古がそう言ってお風呂に向かったので、嗣永もそれに続いた。
二人で服を急いで脱いで風呂に飛び込み、躰を隅々まで洗って湯船に浸かった。少し大きめの湯船に二人で入り、阿古は嗣永の足の間に座るのが定位置だ。
「あ……も……またそこばっかり……」
こういう体勢になると、嗣永は阿古の乳首を後ろから指で弄るのが好きだった。
「あっ……んふっ……あっあっ」
完全に嗣永に作り替えられた阿古の躰は、嗣永の理想通りの反応をするようになった。「これが美味しそうにこりこりになってくるんだよな……」
嗣永はそう言いながら、阿古のお尻に手を回し、孔に指を当てて捏ねてくる。
「あっ……んっだめ……ああっおゆっはいって……んんんふあっ」
「大丈夫、ほらすぐ指を飲み込んだ。上手いね、湊人」
いつでも指が入ってくる感覚にはビクリとする阿古であるが、自然と躰がその指を受け入れてしまう。嗣永の指が内壁を擦り、阿古はびくりと躰を震わす。
孔を弄られながら、乳首を捏ねられるのはいつものことであるが、どうしても気持ちよくなって声が止まらなくなる。
「ああっんっふっんんんっあっん……んんっやっあっ!」
だんだんと浮いてくる腰に阿古が我慢できなくなると、嗣永は阿古を湯船から立たせて、腰を嗣永に突き出すようにさせた。
「あ、裕輔……それは……だめっんはあっ」
そう言っても阿古は逃げられない。
嗣永は阿古の尻に顔を突っ込み、後ろの孔を広げて、そこに舌を這わした。襞を広げるように舌で舐め、段々と舌を孔の中に忍ばせて、入り口の内壁を舌で舐める。
「ひあっ……あっ……あああっん……そんな……はっあっん!」
腰が跳ねないように押さえ付けられて、嬲られるように舌で蹂躙される。こそばゆかったそこは舌で舐められると、快感を味わうようになった。普段はまったく感じないのに、嗣永にされるとどうしようもなく感じた。
散々嬲って孔を広げていくと、嗣永は興奮したように立ち上がって、阿古の腰を掴んだ。 ずっとこの光景が好きで、阿古を後ろから突くのが酷く興奮する嗣永は、ゆっくりと自分のペニスを阿古の孔に入れた。
「あっ入って……くるっんあっ、お、おきい……んふっあっああっ」
圧迫感が阿古を襲うが、それすらも嗣永から与えられる快楽の始まりだと思うと、阿古は教えられた通りに、嗣永のペニスをゆっくりと奥まで飲み込んだ。
「そう、上手いよ湊人……そう、ほら……奥まで入った……ふっ」
荒い息をする嗣永が興奮してそう言った。
嗣永が阿古を犯す時は、いつでもこんなふうに興奮していた。荒い息をし、鋭い視線を阿古を向ける。飢えた獣が食らいつくようにして、阿古を食っていくのだ。
阿古はそれが背中がゾクリとするほど恐ろしいと思うのと同時に、期待をしてしまうことでもあった。
この後は猛烈な快楽が襲ってきて、どこまでも追い立てられるのだ。
それが酷く気持ちよくて、もっとと強請ってしまう。
「……はっあっきて……いっぱいきて、裕輔……はあっんあああっ!!」
阿古が必死に誘うと、嗣永はニヤリとして一気にペニスをギリギリまで抜いてから一気に突き刺した。
挿入が始まると、後は大きな嵐しかこない。
「あっあああっ……んはっあっんっああっ……んっああっ……ああっ!」
振り回されるように内壁を押し入ってくるペニスに翻弄されて、阿古はただ喘いだ。嗣永は阿古を強く突いて、乱暴に抱いた。どうしても強く抱きたいという気持ちが強く出てしまい、阿古を乱暴にしてしまうのだが、阿古はそれでいいという。
「もっと……ちょうだい……ああっんっあっ! いいっ裕輔っああっんっ!」
阿古は挑発するように嗣永を求め、嗣永は自分の感情が溢れて止まらないとばかりに阿古を抱いた。最初の一回はただ精をぶつけるものであるが、阿古はそれを受け止めた。
「ああっきてる……ああっんっ……きたっ精液……ああんっ」
最初に嗣永が中で出してしまうと、ペニスを抜いた。
その衝撃で阿古はズルズルと湯船に崩れるが、それを嗣永が抱えて湯船の縁に捕まらせてくれる。
「はあっ……あっんっ……」
びくびくと躰を震わせる阿古は、精を吐き出してもまだ勃起をしている嗣永のペニスを眺めて、嬉しそうに微笑む。
それに吸い付くように、阿古は嗣永のペニスを手で持って、少しお湯で洗い、それを少し擦り完全に勃起させると、ペニスに頬刷りをした。
「もっと、ちょうだい……これ」
阿古はそういうとそれを咥え、満足をするまでフェラチオをした。この行為も慣れてきて、美味しそうにペニスを咥える。それを興奮した嗣永が見下ろし、阿古は見上げて挑発を繰り返す。
散々フェラチオをした後に、阿古は風呂から出てベッドに嗣永を誘った。
嗣永はまるで魔法にかかったように、阿古に釣られて風呂を出てベッドに行くのだが、そのベッドに阿古が上がる前に後ろから阿古を襲う。
「あっ待ってまだ……ああっあああっ!!」
完全にベッドに上がる前に、阿古の腰を掴んで嗣永が阿古の孔にペニスを突っ込んでくる。こうなると嗣永は止まらない。
大学は始まって一週間、阿古を抱けていない。それが箍を外すことになるとは思いもしなかった。春休み中はいろいろあってセーブできていたが、それが大学が始まったら、阿古に会いたくて、抱きたくて仕方なかった。
「湊人……湊人……ああ、いいっ」
「裕輔……あっんっあっあああっ! ああんっ……あはっああっ……いいっ」
嗣永は阿古を抱くようになってから、阿古の中に精液を出すことが好きになった。まるで阿古を自分の物であると、マーキングしているかのような気分になる。
他の誰もしていない、その行為で阿古を支配しているように感じるのだ。
もちろん、セックスに関しての感情的なもので、普段はそこまで酷い考えをしないのだが、どうしてもそう考えてしまうことを辞められない。
それでも阿古は、そんな嗣永を笑って抱きしめるのだ。嬉しい、と言って。
そこまで求めて貰えることが阿古は嬉しくて、どんどん嗣永を甘やかしてくる。
普段が普通であれば、そこは許容範囲だと阿古は言う。その阿古の許容範囲は大きくて、青姦ですら、本当に人気がなければしても怒らない。
そこまで嗣永を甘やかしてくれる恋人は、嗣永をどんどん深みは填めてくる。
嗣永はもう阿古以外抱ける気がしない。本気でそう思うようになった。
自分の手管で喘ぐ阿古は、まさに初めてから全て嗣永が仕上げたものだ。誰の手も触れていない、そういう躰を自分好みに作ったのだから、ハマって当然である。
自分で罠に填まってしまったように、嗣永を阿古を抱いた。
「愛してる……湊人……」
嗣永がそう言うと、阿古がニコリと笑った。
「俺も愛してるよ、裕輔……あっん!」
阿古が初めて、嗣永を愛していると言った。
「え、マジで……湊人っ!」
「あっ……まって……ああんっなんで……おおきくなって……うそっああっんっ!」
ただでさえ大きい嗣永のペニスが更に大きくなったように圧迫感が増えた。それに戸惑う阿古であるが、嗣永はそのまま挿入を繰り返した。
「いくっ……いっちゃうっ……ああっあっあっ! んああ――――――っ!」
阿古がそのまま達してしまうと、嗣永も阿古の中で達した。
「……ふっん!」
強く精液が奥で打ち付けられて、阿古はぐったりとベッドに倒れ込んだ。
その勢いで嗣永のペニスに抜けて、阿古の孔から嗣永の精液が溢れて出てくる。
「……も……びっくりした……ってああ……うそ……続けてまだするの?」
阿古がぐったりとしているのに、嗣永がしゃがみ込んで阿古の腰を掴んでいる。
「もちろん、今日は朝まで……多分止まらない」
「……マジで?」
「そう……ほら」
「あああっんっもう……うそ、なんで萎えてないのっ!」
また阿古の孔の中に入ってきた嗣永のペニスは、勃起したままである。
「さあ、どうしてだろうな?」
「う……ああっ! んああっ……まって……ああっやすませて……んああっあっあっ! ひあっ乳首だめっ……んああっあんあっん!」
仰向きにされた阿古の乳首を嗣永が吸っている。片方の乳首を指で捏ねながら、腰を使って挿入を繰り返す。
阿古が好きな体位で、これをされると阿古は達きっぱなしになる。
「ひあああ――――――っ……あああっああっ……ああっあっ!」
阿古が達してしまうのだが、ドライオーガズムになってしまうため、痙攣している体を嗣永はあちこち舐めて、その痙攣を収まるまで待ってから、また挿入を繰り返した。
その日のセックスは本当に嗣永が言った通りに朝までコースで、阿古は明け方まで嗣永に犯され続ける羽目になった。
それでも疲れ切って倒れている阿古を嗣永はちゃんと風呂で洗ってくれて、着替えまで手伝ってくれて、やっとベッドで寝ることになった。
起きたらきっと夕方になっているだろうが、それでも阿古は良かった。
嗣永が求めてくるなら、阿古はそれを受ける。それが二人の関係だ。
ゆっくりするときはちゃんとそうしているから、こういう時に嗣永の箍が外れてしまうのも仕方ないと阿古は思っている。
絶倫の嗣永の相手をするのだから、阿古もそれに付き合える体力が欲しかったのだが、いつも最後は嗣永に手伝って貰わないと、お風呂にも入れなくなってしまう。
「湊人、大丈夫か」
「……うん、大丈夫だから、寝よ」
嗣永は毎回暴走した後に少し反省する。犬がしょげて主人の機嫌を取っているかのような顔をするので、阿古は毎回苦笑して許してしまう。
もちろん同じことの繰り返しになっているが、それも致し方ない。
「でも、ちょっとだけセーブしてね? 次の日、一人で立てないのは、月一回程度にしてね」
トイレに行くにも動けないと手助けされるのは勘弁してくれと阿古が言うと、嗣永は苦笑して分かったと言う。
しかしそういう行為すらも嗣永は阿古を支配している感覚が味わえるので、実は好きであることをまだ知らない。
もちろん、その日の夕方に阿古は起きたが、結局動けなくて嗣永に助けて貰う羽目になり、その日も嗣永の家に泊まった。
そして月曜の始発で家に戻り、着替えなどを持って大学へ行くことになってしまったのだった。
その隣には嗣永が付き添っていて、朝食を駅前の喫茶店で食べてから、大学へと向かう。
そんな日常が、大切な日常として阿古と嗣永の絆を深めていった。
穏やかな日々がやってくる。
たくさんのことを詰め込んだ、二人未来は明るい。
阿古にはそう思えてならなかった。
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