嘘みたいな恋


「さあ、みなさーん。今日はぽこちゃんがやってきましたー」
 デパートの屋上にある子供が遊べるくらいの遊具やステージが用意されている場所で、ステージ上でマイクを持って語りかけるのは、バイトの保谷だった。
 声優のような分かりやすい発音と声の良さから、MCとしてバイト採用されてもうそろそろ一年になる。
 土日の休みは一日五回あるステージに立ち、常に声を張り上げて盛り上げる役割であるが、保谷はそれが好きだった。
 自分で台本も書いたりし始めてくると、将来は舞台役者になりたいという夢に一歩近づいた気がしたほどだ。
 しかし子供相手の仕事は普通の大人の一般人よりも厄介で、これをまとめられる知識と子供を夢中にさせるものは何かを毎回変えなければならない。下手すると一日五回の舞台を全て見ている子供もいる想定でいないと、同じ事をやると子供が不満を持って暴れることもあるほどである。
 そうした中で上手くやれているのが保谷だった。
 脚本も毎回違うオチや途中の展開を変えたりとしていたおかげで、子供たちが五回の公演を全て見てくれるようにもなっていた。
 その保谷の最大の理解者であるのが、今呼ばれたぽこちゃん人形である。
 ぽこちゃんはゆるキャラの一種として、デパートのゆるキャラとして誕生した。
 外見はクマであるが、初代のリアルなデザインのせいで不人気だったので、上層部が可愛いクマのぽこちゃんを用意したところ子供に大人気になった。
 そのぽこちゃんと緩く楽しい舞台と、質問コーナーなどを交えた、戦隊もののような公演などを混ぜたものを毎回やっている。
 初代ぽこちゃんは悪いぽこちゃんとして上手く存在し、子供たちもそれに慣れてくれるようになった。中には親世代から女子高生の間では、悪魔のぽこちゃんとして初代は人気があり、キーホルダーやぬいぐるみなどのグッズが売れているらしい。
 そんな全ての手柄は、そのぽこちゃんに入っている人である。
 着ぐるみの中に入るアクターというのは、はっきり言って体力勝負なところがある。暑い日も寒い日もその中で過ごし、一回の公演ごとに一時間くらいは耐えなければならない。
 その大変さを知っているだけに、保谷の信頼も大きなものだった。
 ぽこちゃんが子供と戯れて写真を撮ったりする時間になると、保谷が上手く子供とぽこちゃんを並ばせて会話をさせてと繋ぐ。撮影会は毎回最終公演の後になるので、子供たちも興奮はしていてもかなり疲れているので扱いは楽になる。
「はい、お隣どうぞ。ぽこちゃんに何か言いますか? はーい、ぽこちゃんは夜どこで寝てるのか? 分かった聞いてみようね」
 そう言ってぽこちゃんの口に耳を当ててコソコソと話す。
 ぽこちゃんは恥ずかしがり屋なところがあるので、こうしないと話ができない流れが設定の一つだ。まあ、ただ単に保谷が設定通りに答えるだけなのだが、時間稼ぎだ。
「ぽこちゃんは、夜はお家に帰って寝てます。お家はデパートの中にあるけど、個人情報なので場所は秘密でーす」
 そう保谷が答えると子供は笑っている。昨今、個人情報がどうこうという話は子供の耳にする機会があるのだろう。親にも不審者に住所や名前は教えてはいけないと教育されている子供も多いし、昔は保育園や学校などの連絡網は、各家庭に配られていたらしいが、今は渡さない仕組みになっているくらいだ。
 秘密にされると興味も湧くというもので、子供はますます夢中になったらしく、帰りにぬいぐるみを買っていってくれた。
 一体二千円くらいの小さなぬいぐるみなので買いやすいと評判だった。
 その全ての公演が終わると、屋上広場の閉園の時間になる。
 六時になると日が暮れて暗くなるから、五時にはアナウンスが鳴り、係員たちが一斉に親子を屋上から排除する。三十分も案内をしてやっと客が消えてしまってからも、潜り込んでいないかをチェックしながら機械の電源を落としたり、屋根のある部分に遊具を戻したりの片付けをする。
 六時を回るとほぼ暗くなった屋上の一部分に照明が付いて、作業が終わったことを知らせてくる。
 デパート自体は七時閉館になる。六時を回ると閉館のアナウンスが鳴り始め、客がいないエリアの洋服店などが各エリアでシャッターが下りる。
 地下の食事などを扱うエリアは混んでいるが、ぎりぎりにデパートに服を買いに来る人はあまりいないのか、あちこちが早々にシャッターを下ろしている。
 そうした閉館作業が行われ始めると、屋上のスタッフも着替えて退館をし始めた。
「おつかれさんでーす」
 そう言われて保谷も答えた。
「お疲れ様でーす。また週末です」
「ああ、そっか。今日日曜だね。また土曜日ね」
「はい」
 保谷は土日しかバイトができないわけではないが、大学に通っている手前、打ち込めるのは土日だけである。その代わり、バイトの時間外には脚本を十本仕上げ、土日の公演に備えている。もちろん、その台本脚本作りの手当も一冊いくらとしてもらっている。
 その脚本は一年でかなり貯まったので、平日の公演にリバイバルとして再演されているらしい。
「マジ、保谷くんの脚本と台本助かるわ~子供受けめちゃいいし」
 そう言うのは社員の一人だ。普段は日曜以外のMCを担当している人で、保谷の先輩になる。この人はバイトとして入って保谷のようにMCを土日担当からしてデパートの正社員になっている。
「そう言っていただけると有り難いです」
「うん、保谷の脚本と台本、すごくちゃんとしていていい」
 そう話に乗ってきたのは、ぽこちゃんの着ぐるみに入っている橋川だった。
 身長は百八十くらいあるのだが、筋肉隆々としている。趣味が筋肉作りというようなレベルの人なのだが、これが非常に役に立っている。
 顔は強面であるが、その体力と、子供を抱えられる筋力が買われて着ぐるみに入る羽目になったらしい。
 ここでもう二年も着ぐるみを着ているらしい。
 まだ大学生で体育系大学に通っていて、将来はトレーニングなどの筋力を作るジムに勤めたいと考えているそうだ。
 平日はトレーニング系のジムに通っているらしいが、土日はベテランが入るために自分はまだまだなため、仕方なく着ぐるみのバイトをやっている。
 そんな橋川であるが、二年もやっていれば慣れてどうとも思わなくなるらしい。
「でも、二人とも今年で終わっちゃうんだよね……就職は決まっちゃったんでしょ?」
 そう言われて橋川が頷いた。
 橋川は今バイトに行っているジムに空きができる予定なのでそこに就職することが内定されている。個人的な知り合いのジムらしく、融通が利くのがよかったそうだ。
 そして保谷もまた就職は決まっていた。
「はい、○○劇団に採用されることが決まってます。今は、バイトの合間に雑用をやってますが……」
 脚本を書きながらも舞台をやっている劇団の雑用もやる。しかしバイト代は出ないので、バイトは別で確保しなければならなかったために、この土日のバイトしか道がなかった。
 けれど、ここでたくさんの経験ができたことは舞台でも役に立ち始めて、最近はちょっとした役をやらせてもらっている。その舞台脚本家から、役者をやりながらも脚本を書かないかとも誘われた。
 このデパートの公演用の脚本をいつの間にか見られていたらしく、そのパターンの多さがかなり気に入られたのだ。
 早速だったが、昔に脚本家が一旦書き下ろしたものをリメイクして再公演の舞台も任されるようになったのだ。だから本格的に役者よりは脚本家として舞台に関わっていくことになりそうだった。
「大変だけど頑張ってね」
 そう言うと仕事仲間は帰っていった。
 橋川はすぐにシャワーを浴びてきたので、パンツ一枚で平然と着替え始めたが、保谷は慌ててその反対側で着替え始めた。
 時間は六時半を回り、バイト仲間は全員帰ってしまっていた。話し込んでいた保谷と橋川ともう一人だけだったから、屋上には誰も残っていなかった。
 慌てて着替えを終えて二人で作業小屋を出ると、屋上の電気が消えた。
 館内アナウンスが鳴り、今日の営業は終了しましたと流れている。
「ん? 何で……ちょっと電気を消すの早くない?」
 保谷が慌てて灯りのある非常口に向かうと、既に非常口には鍵がかかっている。
「うそ、ちょっと、マジで?」
 慌ててドアをガンガンと殴ってみるが、音はすれど人がやってくる気配はしない。
 それもそのはずで、店員用階段は一般の階段の方にはない。客が入らないようにドアで厳重に閉じられている。
 そして閉館する時には皆普通の階段を使うため、こちらの階段は屋上に上がるときに屋上への出口として使われる以外は開館後の社員移動にしか使われていない。
「あっちの方は?」
 そう思い、客用の入り口に向かうとそちらも既に鍵はかかっている。
「だよなー」
 そして今度は思いっきりドアを叩いて見るも、こちらも全く反応がなかった。
「セコムみたいなの入ってるから、よほどの異変がない限り、屋上に見回りすら来ないんじゃないか?」
 そう橋川が言い出して、保谷はハッとする。
 そうなのだ。異変がない限り見回りはせずに監視カメラになる。その監視カメラは閉館後は屋上のカメラは切られる仕組みになっている。外から屋上に上がる手段はないし、泥棒が屋上にあがるには館内の階段を使うしかないので、必然的に経費削減で日中は付けられている監視カメラは切られてしまうと聞いたばかりだった。





「どうすりゃいいんだ……これ」
 そういいながらも橋川が携帯を取り出してどこかに電話をかけ始めたが、すぐに顔をしかめた。
「あ、電池がない」
 ピーピーッと音を立てて橋川の携帯が自動に電源を落としている。
「もう仕方ないなあ……って、あれ、俺、携帯を忘れてきた?」
 鞄を漁っていた保谷が首を傾げながら鞄をひっくり返した。
中身を漁ってみるが携帯は入っていない。
「うそ……何で?」
「落とした?」
「……多分。携帯チェックで電車に乗ってるから……下りたところまでは持ってたはずなんだ……ああ、もうどうしてくれる、こんな時に~!」
 電子決済で電車に乗っている保谷なので、このデパートにくるために乗った電車では使っているはずなのだが、それを鞄に入れるかポケットに入れる時にしくじったらしい。
 寄りにも寄ってな状況で二人共が携帯を使えない。
「あ、事務所に電話あるじゃん。内線あるし!」
 そう言いながら二人で屋上の事務所に戻ってみると、確かに内線用の電話がある。
「ラッキー、これで警備室に……」
 警備室の番号を調べてかけてみた。確かに内線は鳴っているが、相手が一向に出ない。
「え、何で?」
 保谷が更に焦ると、橋川が言った。
「電話ってこの間一斉に内線用って変わったっていってなかった?」
「あ……下の洋服店の人が言ってた。古くなったからデパート中の電話が新しくなったとか……それが?」
 だからなんだと言うと更に橋川が言った。
「うん、でもこの電話、新しくないよね?」
「……あ……」
 そう言われてみると、電話はかなり古く、プッシュホン部分が今風の堅く大きな文字盤ではなく、昔のゴム製のままである。さらには電話は汚れているし、今風ではない。
「もしかして、あまり使わないから、ここだけ変えるの忘れていたとか?」
「そもそも変える変えないにしろ、ここの電話の認識がされてなかったのかもしれない。使うことってなかったみたいだし」
 その通りで電話には埃が少しだけ積もっている。
「あああーなんでぇー!?」
こういう時に限って全ての連絡手段が途絶えたことが奇跡に近い。
「まあ、焦っても答えは見えないし、次の見回りの時に警備員も一応屋上には来るだろうから、その時に事情を話せば、出られるだろうし。明日もデパートは営業しているから、最悪朝には出られる。そんなに絶望的でもないよ。明日世界が終わるなら別だけど」
 橋川がそう言い出して、保谷はパニックが収まっていく。
「確かにそうだ。永久に出られないわけじゃなかったな……うん、悪かった一人でパニックになって」
 保谷がそう謝ると、橋川は笑う。
「うん、大丈夫。ちょっと面白かったから」
「俺が慌てふためいているのが?」
 ムスッとして保谷が言うと、それに橋川は頷いた。
「可愛いと思ってたけど、やっぱり可愛いなと」
「男に可愛いは違うと思うけど……可愛くないし」
 ちょっとだけ顔を赤らめた保谷がそう言い返すと、橋川が真面目に返した。
「俺は好きだよ、そんな保谷のことずっと」
「え……?」
 急に橋川に告白をされ、保谷が驚いた顔で橋川を振り返ると、橋川はすっと保谷の足下に跪いた。
「え……え……えええ?」
「ずっと、好きだった……保谷が。辞めようと思ってた時に、保谷が入ってきて盛り上げてくれたから、役に立ちたくて辞めなかった。そのお陰で楽しかったし、バイトも続けられた……一生懸命な保谷がとても可愛かったから……」
 跪いた橋川にそういうふうに告白され、保谷は驚きながらも申し訳なさそうに言った。
「俺は、そこまで言ってもらえるほど、綺麗な人間じゃないよ……」
保谷がそう言うと、橋川は言った。
「舞台監督に脚本を書かせてもらうために寝たことを言っているなら、知ってた」
「!?」
 そのことに驚いた保谷は目を見開いて橋川を見た。
 誰にも言っていないことで、舞台監督とはその一回きりのことだ。それ以上はなかったし、向こうもそれをネタにいつまでも脅してくる人でもなかった。
 だから誰にも言わなかった。
 寝たことで脚本は書かせてもらったし、それも採用された。
 その後は上手く回っていたし、舞台監督もちゃんと脚本家として認めてくれている。
 舞台監督が吹聴するような人でないことは、最初に見た時から知っている。
 だから誰も知っているはずはない事だった。
「……何で?」
「知っているかって? たまたま同じホテルに泊まっていて、見かけたから。親の行き付けのホテルだったから、ホテル従業員に相手の男のことを聞いた。舞台監督でいつも違う人を連れて泊まっていく人だと聞いて、少しだけ調べたらとっかえひっかえな人なだけで、保谷が脅されて関係を持っているわけじゃないって分かったから、これは保谷の意思だったんだなと分かった。その時期に少し悩んでるようだったけど、脚本を書かせてもらえて採用されたって喜んでいたから、ああそういうことかって気付いた」
 橋川は淀みなく答えてから言った。
「保谷の意思なら、俺は何も言わない。だけど、少しだけ嬉しかった」
「……え? 嬉しい? 何で?」
 意外な事を言われて戸惑っている保谷に微笑んだ橋川が言う。
「明らかに保谷はネコってことだよなって、それって男も有りで抵抗もないってことだろ? 過去にどうこうよりも俺にとっては可能性がグンと上がったと思えたから嬉しかった」
 橋川がそう言うので保谷は更に戸惑った。
 つまり男だからという理由で断られることはないと判断されたわけだ。
「……それって断ったらどうなるか……ってこと?」
「さあ、どうなるか分からない。今だって断られた後の自分の感情がどうなるか想像すらできないまま告白している」
 橋川はそう言うので保谷は真剣に悩んだ。
 告白ということは今後も付き合っていくつもりがあって言っているということだ。舞台監督のように一回で終わることではない。
 けれど振ったところで状況はそこまで変わりそうもないことも問題だ。
 逆上されてしまったら、今こそ逃げ場がない。
 すると橋川は立ち上がり、体をぐっと保谷に近付けて体を密着させた。
「保谷は、ストイックな方ではないよな?」
 橋川はそう言って保谷の手を取ると、自分の股間に手を導いた。触れるとそこは既に勃起している。
「これを、保谷の中にぶち込みたくて、いつもいつも妄想していた……」
 そう言いながら、ペニスをズボンから出してきて勃起したペニスを直接保谷の手に握らせてくる。
「え……あっ……そんな……」
 それはとても大きなペニスで体に似合った力強さを持っている。
 初めての相手だった舞台監督もかなりのモノだったが、橋川のものはそれ以上だった。
「大きい……ああ……」
「保谷……ああ、そのまま扱いてくれ……」
「……うん……すごいビクビクしてる……」
 保谷は夢中になって橋川のペニスを扱いた。
 保谷から抵抗はあるかと思ったが、それ以上に保谷は橋川のペニスに興味が湧いたようだった。
 保谷には、この橋川のペニスが自分を欲しがっているのだとはっきりと分かった。それが分かって面白かったのもあった。
 舞台監督の人とは割り切った関係で終わった。
 セックスは気持ちよかったし、またあってもよかった。けれどそれっきりで少しだけ物足りなかった。
 その時も恋人がいたわけでもなかったから、そうした場所に行ってまで相手を求めるのは違うような気がしていたし、就職の時期でもあったから何となく避けてきたが、それでもセックスがしたい性欲がないわけでもないのだ。
目の前に晒された快楽への道が示された今、抵抗したところで無駄な気もした。
 保谷はそう思うと口にしていた。
「……付き合うとか……そういうのは、分からないけど、……その……」
「セックスには興味があるってことだよな。知ってる。じゃないと監督とも寝てないだろう?」
「……そりゃまあ……」
「じゃあお試しでセックスしてみる? セックスは嫌いじゃないなら、相手は誰でもいいってことなんだよな? よほど嫌いか不快感がないから、こうやって俺のペニスを触っても嫌な気持ちにはなってないからってことだろ?」
 橋川が譲歩して言った言葉に、保谷はすんなりと自分の気持ちを言った。
「橋川を好きとか、そういうのはないんだけど……セックスはしてみたいと思う」
「それでいいよ。体から始まったっていいんだ。絶対にそれで堕としてみせるから、覚悟してくれていい」
 橋川はとにかく保谷の一部分でも手に入るなら、どんな状況でもいいと思っているようだった。
「……ふうん、そうきたか……」
興奮したように橋川が言ったから、保谷も思わず喉を鳴らした。
 堕とされるとは思わないが、橋川の身体を試してみたいとは思った。
 ここまで筋肉隆々のいい男が、こうして腰を振って誘ってくる。まして好意を持って貰っているなら、酷いことはしないだろうし、主導権はこっちのままでどうにかなりそうだった。
 それにその後に勘違いして揉めそうでもないし、ここは暇であるし試してみるのもよかった。
「んふぅ……っぁふ、ぁん……っ」
橋川はペニスを保谷の手に擦り付けている上に、服の上から保谷の乳首を弄り始めた。
「あぁっ……ぉっぱ、ぁっ……あんっ……あっ」
「保谷……気持ちいい……お前の乳首を吸いたい……」
「は……っぁ、ぁあう……っ! も、もう……っふ、っぁん!」
橋川がそう言い出して、保谷の服を捲り上げて上半身の服を脱がせてきた。
 その日は暑かったし、既に汗も掻いてきていた。だから脱ぐのに抵抗はなかった。
「あーっあ、ひっひぁ! あ、あ、……ぅぁ……あー……!」
すると橋川は保谷をテーブルの上に横たえた。普段は食事をとったり休憩をしたりする時に使っているテーブルだ。
 すぐにその保谷に跨がるようにのし上がった橋谷は保谷の乳首に吸い付いた。
「あぁっ……あ、あっ……あぁあんっああんっ……!」
舌で舐め上げてしっかりと乳首が勃起するのを見ると、激しく橋川は吸い上げた。
「あぁっあぅ……っも、あーっぁっあ、はぁ……っん、ぁん!」
 乳首を吸われるだけで保谷は身体をくねらせた。
 余裕を持って橋川とセックスをしてやろうとしたのだが、橋川の飢えっぷりが異常だったため、執拗に乳首を攻めてくるから、保谷は焦った。
「ひ、ひぃっ……あーぁんっあぅうう! あっあっあっ! ひぁっ……あーっあーっ!」
こんな抱き方はしてもらったことはなかった。
 そもそも保谷は割り切った関係で一回しかセックスをしたことはなかったので、ここまで執拗に攻め立てられるのには慣れてなかった。
「ん、ん……っは、んん……っ、き、もちぃ……っ! ひぁあ……っ!、あぁうん!」
乳首だけを執拗に攻め続ける橋川に翻弄されてしまう保谷は、嬌声をあげて悶えた。
 下手すれば乳首だけでイかされるかもしれない。そう思ったほどだった。
「あぁあうっ……っあっはっいひ……っいいぁああ……っふ、ふぁ……っ!」
既に保谷の下半身は飢えてきてしまっていた。
 手で触っている橋川のペニスがガチガチに勃起しているのを感じる。それが早く欲しくなってしまい、保谷は橋川に言っていた。
「はぁ……あぁっ、はやくっ……おちんぽ入れて……っ」
 橋川のペニスを乱暴に扱いて保谷は強請った。
 それに橋川が興奮してしまい、乱暴に保谷のパンツや下着をはぎ取ってしまう。
「まだ挿入れない、解さないとな」
「は、あぅ……っ、あぁっ、あぁ……おま○こして……っ」
 橋川は急いで挿入には持ち込まなかった。怪我をしたらさすがに後味悪いし、傷つけたくない。
 だから保谷の足を持ち上げてアナルをしっかりと見えるようにしてから、アナルに舌を這わせて弄り始めた。
予想外の行動をされて、保谷はまた焦ってしまったが、アナルを舐められること自体が初めてで、その舌の感触にすぐに快楽に陥った。
「んぁあ! あぁ……ああっ……! ああぁ――っ!!」
 保谷の余裕が完全に消え、悶え喘いでいるのを聞いて、橋川は保谷がここまでしてもらったことはないのに気付いてしまった。
「うあっ、くぅう―……舌っおま○こ……っあああぁ!」
どうやら保谷は舌でアナルを嬲られるのは好きなようで、ビクビクと身体を痙攣させては嬌声を上げてくる。
「ああぅ!あ……っ、あぁんっあ、ぁ……おま○こ気持ちがいい……っ」
 いつの間にか卑猥な言葉を口にしているが、舞台監督に教え込まれたことなのだろうと橋川は冷静に思った。正直、それは気に入らないが、保谷が絶対に口にしないであろう台詞だったから、そのまま言わせておくのもいいかと思い直した。
「っあ……あ、あっ……あぁあっ! あっ、あ……き、きもちい……っ」
 橋川は舌で保谷のアナルの入り口を嬲った後は、指を挿入て広げて舌も中に侵入させて二十分以上は嬲ってやった。
「あー!あっ、お、おま○こがぁ……っおま○このなか、弄られると……っ、ああ! そこ、そこぉ……っ、いい……おま○こきもちいい……っ」
 指でいいところを擦り上げたのか保谷が嬌声を上げてきた。だからそこを橋川は重点的に攻めてやった。
「いい、あぁっ、もっと……もっとそこ……っ、あぁあっぁあああっ!!」
 がっつりと擦り上げてやると、保谷は橋川の指を締め付けて絶頂をした。



 がくっと痙攣してから身体が硬直し、そして絶頂の快楽を味わったあと、保谷は身体を弛緩させた。
 その隙を狙って、橋川は一気にペニスを保谷のアナルに突き挿入れた。
「ひぃいっ!あ、あ、あぁ――……っ! あ、あ、あ…………っ」
 保谷は油断して力を抜いていたから、橋川のペニスは保谷のアナルの奥まで挿入り込み、根元まで一気に挿入ってしまった。
「んあぁ……! んぁあっ……ふぁ、あぁ……おおきいぃ……ああんっ!」
橋川の挿入り込んだペニスを保谷はしっかりと締め付けて、その大きさを実感していた。
 届かない部分までこじ開けられてしまい、保谷はその快楽に混乱した。
「ああ、保谷、中がうねってすごい……ああ、気持ちがいい……このまま馴染ませたいけど、……もう我慢できないから、動いていいよな」
「……あひぁああっ、ああぅ!!」
 保谷の意見を聞いてからと橋川は思ったが、それより快楽が勝ってしまい腰を動かし始めてしまった。
「ふぁあ、あんん……っひ、やぁあ!ああ……っひ……! あ、ぁ、あぁあん……っひううっ!?」
ごりっと良いところを擦り上げながら、橋川の挿入が始まると、保谷はそれ以上は冷静に考えることができなくなった。
「あああっ!や……あ……っあぁっぁああ! あぁあっ!だ、だめ、え……っあ、あ、あぁあ……っ!」
どうしようもなく気持ちが良くて、すぐに保谷は橋川のペニスが気に入ってしまったのだ。
「ひぃ……っ!だめ、こんな……っ、あたま、おかしくなるぅうっあぁああ!」
相性がいいとどこまでも快楽が襲ってきて凄いらしいという話は聞いたことはあったが、まさか同僚の橋川と相性がいいとは思わなかった。
「あぁ……あああんっ……あはあぁ……あああっんん……っ、あ……ああぁ――……っ!!」
あまりの良さに保谷はすぐに絶頂をしてしまった。
「はぁ、あっ、あぁあ!もう、もう……っひいっ、い、いく……いい……いいっあぁ、あぁああっ……!いく、あぁっ――あぁあああああっ!!」
 精液を勢いよく吐き出しながら、絶頂をした保谷だったが、橋川はまだ絶頂はしていない。
「まだまだだぞ」
硬直した身体が弛緩するまでは待ってくれたが、すぐに橋川は挿入を再開する。
「ああぁ……っ、あっ……あぁひぃいいいんっ! っあ―――!!」
 快楽に支配されている身体が次の快楽を連れてきてしまい、保谷は狂いそうなほどよがった。
「あ――っ!あ――っ!だめ……っもう、だ、めえ……っ!だめ、っだめ、だめええぇっ……!」
橋川は保谷をテーブルに俯せにすると、後ろから保谷を犯した。
「ひいっ!ひぃいい――っあ――あ……あ――……っあああああああ!!!」
 挿入がしやすくなり、ピストンの速度も上がり、擦り上げる場所も変わってしまい、保谷は快楽の強い渦にたたき落とされた。
「ああああっ! ああっ、あっ、あっ、あっ、んあぁああっあ……おま○こに入ってる……っ、ああっ、あーっ」
「保谷のおま○こ最高……いくらでも射精できそう」
「んぁああっ!あーーっ、ああっ! ひぁあああ……っ」
「ここがいいんだよな? ほら」
「やぁ、あああ……っ、そんな、したらぁ……っ、ああっも、いく……っ、いくいく、いくっ、だめ、いっちゃ……ぁ、ああぁっ、ああうううぅ――っ!」
「くっはっ……出る!」
 保谷がまた絶頂をしたのに合わせて橋川も絶頂をした。
 精液を中で出して、奥に擦り付けるように腰を動かしていると、すぐに橋川のペニスが勃起してしまった。
「っひぃ、ひいいぃい……! だめ……っ、だめぇえ……っ らめぇっ……ああっ、もうだめ、だめ、いったからぁ……!」
「また勃起した。抜かずに勃起とかすげえ……さすが保谷のおま○こだ。気持ちいいからこのまままた中出しさせてな」
「ああ……っ、あう中出し……ああんっ……らめっあうううう……中出しはやぁっ、あっ、あっおま○こが、ああっおちんぽっいいっ、ひぃいんっ……」
腰を捕まれてゴリゴリと奥まで橋川のペニスで犯された保谷は、もう完全に橋川に堕ちた。
「ひぁあっ、ああああああんっ! あ――――っ、う……っはぁ、ああっ……!」
保谷は自らも腰を振って橋川を誘って煽り、中出しを何度も強請った。
「あっ……あぁ……ん、だめ、はーっ、はーっ……おま○こ気持ちがいいのっひぁっ……あああっ、あんっ、うぁ、あっあっおちんぽよすぎる……ああんっ」
「ここが気持ちが良いんだよな?」
「あぁんっ……きもちぃっ……あうっ、ん、はぁっ、あっあっ……おま○こされて気持ちがいいのっああんああんっ……らめ、おま○こ壊れちゃうっあっ、あぁっ……」
「保谷、こんなにエロくなってくれて、嬉しいよ」
「あああぁっ……らめ、らめ、ひっ、おま○こでいくっあっああぁーっ……あ゛あぁーっ……だめ、おま○こにまだはいって、あ゛あぁっ……、おちんぽっ……、おま○こ、いっぱいになってる、あ゛っあんっあああぁっ……!」
「もう、このおちんぽなしじゃ生きていけないよな、犯されてこんなに喜んでいるんじゃあね」
「あ゛っ、あああーっひあ゛っおっあっあんっあぁっあひっいっあああっ! あひっ、しゅごいっ、おま○こっ、犯されてるっ……! おちんぽでごりごりされて、あぁっんっあ゛っ、いいっきもちいっ、ああぁっ、だめっ、あっ、あーっ……」
「ああ、腰が止まらない……ヤバイなこれ」
「ああぁんっ、いっちゃう、おま○こでっ、おちんぽ、おま○こで、……イかされちゃうっ……! ひああっいぐっ、おちんぽでおま○こぐりぐりされて、いくっ……あ゛っあ゛ひっうああんっ」
「イッて見せて、エロく淫乱にっ」
「あ゛ああぁーっ……あひっ、あ゛っいっあ゛っんっいいっ、あああっひっああぁっ! あーっああぁっ……ふーっ……あっ、あっ……あ゛っ、あああーっ……!」
 保谷はもう橋川のペニス以外ではきっとここまでの快楽は得られないだろうと思った。
 脳天を突き抜ける快楽を知ってしまったら、利用するために使うセックスはきっと何も意味がない。
 こうやって知ってしまったら、そのためにセックスを利用するなんて馬鹿だと思えた。
 橋川とのセックスは保谷にとって、身体で利用するだけのものではなくなってしまった。
 ちゃんと意味があって、ちゃんと気持ちが入っているセックスは最高に気持ちがいいものだと初めて分かってしまった。
「あ゛っ、あ゛っ、ああぁっ……! あひっ、い゛っ、あっあ゛っあ゛っあああっ! ……あっあ゛っあんあんあんあんっ!」
 そのままセックスは止まることなく、二人はセックスに興じた。
 部屋でのセックスは部屋がエアコンが使えなくて暑くなったところで、橋川が保谷を抱きかかえて外にでた。
 屋上には誰もいないし、地上十階の屋上で誰かが大声を出していても下位には聞こえないし、警備員も来ないから誰にも気付かれなかった。
 監視カメラもちゃんと切られているようで、外の舞台で堂々とセックスをしていても見回りすらこなかった。
 それをいいことに二人は舞台上でいろんな体位でセックスをした。
「ああぁんっ……すごいっ、おま○こっ、犯されてるっ……! あひぃっ、あ゛っうっんっ、あんっあんっあんっあんっあ゛あーっ……あひっ、んっあ゛っああっおま○こいいっ、きもちいっ……うぁっんっあっあぅっふあぁっあ゛っあんっセックスっすきっすきっ……! ああっい゛いっ……おちんぽきもちいっ、んっあ゛っああっ」
外は雨が降ってきてやっと涼しくなり、その雨は強く降り始めて音は雨音しか聞こえない。
 雨が散らない舞台の上で、会場に見せつけるようにセックスをするだけで、保谷は興奮してしまい、余計に快楽を得ていた。
「あぁんっおちんぽいいっ……あひっ、いっあ゛あぁあんっ、おま○こ気持ちがいいっ、らめっ、きもちいっ……おちんぽいいのっあ゛ーっ」
「保谷は青姦も好きなんだな……今度はどっか別のところでもしような」
「あ゛あぁんっあ゛うっ、おちんぽ、はげしっ……いっあ゛っあんっふあぁっああぁんっ、イって、このおま○こでイってっ……っ ふあっあ゛っあんっあんっひあ゛っああっいいっおちんぽはげしすぎっあ゛っひっあんっあんっあんっ……あぁっあ゛っうあああっ」
「気持ちよければどこでもいいよね?」
「う、うんっはぁっ……はぁっあぁーっすきっ……ふあっ、セックスすごいっ……あぁっおちんぽっすきっ、あ゛、あーっ……」
 最後は土砂降りの雨に濡れながらセックスをした。
 身体を洗えないからちょうどよかったのもある。雨が全部洗い流してくれるから、二人は雨の中で何度も絶頂をした。
「はあぁっ……んっ、あっ、あっ……ふああぁっ……セックスいいっ……好き大好きっあーっ……ひっ、あっ、あぁあんっひあ゛っ、いいっ、あんっあんっあ゛ーっ……きもちいっ、おま○こっ、あ゛あぁっ、おちんぽでっ、犯されるのすきっ……あああっあっ、あっ!」
「中出しするからなっ……ああ、イキそう」
「あ゛ああぁっ……だめぇっ、セっクスっよすぎて……こわいっ、ひあっあ゛っあーっ、ああぁんっ! ひっあ゛ああーっ……いくっ、おま○こでっ……! ふあぁっあ゛っあああんっ!」
「このまま壊れて……保谷。愛してるよ」
「あ゛あああっ……はひっ、ああっあっうああぁっあ゛あああぁんっ! あひっいっあ゛っあ゛っああああっ! ひあ……あっあーっひあ゛あっうあっあんあんあんあんあんあんあんっ!」
 保谷は全身を震わせ痙攣しながら絶頂をした。
 中に熱い橋川の精液を感じながら、もうこのままでいいとさえ思った。


 保谷が次に目を覚ました時は、大雨の影響で見回りにきた警備員が橋川と話しているところだった。
「はい、ありがとうございます。あ、保谷も起きたので帰ります」
 外を見ると既に夜が明けている。
 明るい窓から日差しが差し込んでいるから、時計を見ると朝の六時であることが分かった。
「悪かったね、見回りする前に閉じ込めちゃって」
「いえ、大丈夫ですよ。寝て過ごしたらあっという間でしたから」
 橋川が愛想良く言って、保谷を起こして荷物を持たせてきた。
 慌てた保谷は自分を見ると、身ぎれいにされている。服は予備に持ってきていた服になっていたが、綺麗に着せられていた。
「じゃ、気をつけて帰ってね」
「はい、それじゃ」
 警備員に連れられて社員用の入り口から見送られた後、歩きながら保谷は橋川に聞いた。
「後片付け……」
「したよ。保谷は寝てたけど。雨があの後凄かったから、舞台も濡れてさ、流されてた。部屋のテーブルもアルコールで拭いたし、床掃除もしておいた。だから痕跡はないよ」
 橋川がそう言うと保谷はホッとして安堵した顔を浮かべた。
「あのさ……」
 保谷がそう言い出したのだが、橋川がそれを遮るように言った。
「あ、ラーメン屋、開いてる。深夜から朝営業だからぎりぎりかな。保谷も食べるだろ?」
 そう橋川が言うと保谷の腹が鳴った。
「確かに腹は減っている……」
「だろ、先に飯にしようぜ。話はその後だ」
 橋川がそう言うので、保谷もそれに賛成した。
 いい匂いが充満している店に入り、二人は朝飯をしっかりと食べた。
 その時に保谷も橋川とこんな関係が続くのもいいかなと思い始め、このまま付き合っていくのも案外いいかもしれないと思ってしまった。
 すぐに橋川に靡くのはちょっと癪なので、とりあえずは身体の関係を続けていこうと思ったのだった。

 それから二人はバイトを期間満了して辞めた。
 大学も卒業をするし、就職も言っていた通りの場所に決まったからだ。
 その頃には二人は言わなくても分かるだろうという態度で付き合っていて、そのまま同棲に突入をしていた。
 その関係は、一生続いていくものだと二人には分かっていたのだった。