赤い果実

 昨日まではよく晴れた日だったというのに、今日の本番に限って大雨である。
 学園祭が始まったばかりの初日で、皆が張り切っていただけに、野外にセットを組んだ人たちは散々である。
「何か寒いし、最悪だね」
 そう言ったのは、クラスメイトの一人だ。
 野外で飲み物を販売するだけの店を構えた北里の学年は、男子学生に女装をさせて所謂ゲテモノで注目度を上げて、客を呼び込んで飲み物を売るというものだった。
 とはいえ、飲み物は全て市販のペットボトルや缶に入っていたジュースを紙コップに移し替えるだけの作業で簡単だったので、他のクラスからすればまだマシな方だった。
 教室は別の部活に貸しており、教室にさえも戻れない。
 雨が降る中、テントの中で皆が椅子に座り、誰も通らない中庭で雨音を聞きながらスマートフォンを弄っている始末だ。
 幸いなのは屋内では学生たちが各々に楽しい時間を過ごしているようだ。
 四六時中大きなギターなどの演奏をする音が鳴り響き、時々お化け屋敷から女子学生の叫び声が聞こえてくる。
 しかしわざわざ雨の中、中庭には人は来ないわけで、仕方がないので教師に頼み込んで校舎の通路内にある小さなスペースで少人数にて、やっとジュースの販売ができた。
 けれどそこには五人ほどで満員であり、時々飲み物の補充に他の学生が荷物を運び込んでいる。
 目玉の女装学生たちはしらけてしまうからと明日の一般参加の時まで休んでいていいと、女子学生たちに暇を言い渡されてしまう始末だ。
 盛り下がった気分を一部の学生は見学で持ち直したが、着替えることもまだ駄目だと言われている北里は、ゴミを運んだりして時々手伝っていた。
「北里、似合ってるな」
 荷物を運んでいた北里の尻をペシッと叩いて声をかけてきたのは、サッカー部の部長だった。北里は去年まで部活で一緒だったが、家庭の事情でサッカーをやめていたため、声をかけられるのは意外なことだった。
「……部長」
「ああ、部活のことは分かってるって。あの後、お前の両親からも謝罪があってさ。家が大変な時に俺らも無理言って悪かった」
「……あ、いえ。あのときは本当にすみませんでした」
「だから、謝るなって……その、部活費用もリハビリ代もでないんじゃ、無理強いはできないしな」
 部長がそう言ったので、北里は頷いた。
 北里の家は少し前まで裕福だったが、父親の自営業が経営難で破産した。
 その時の負債は大きなものだったが、その時に祖父が亡くなり、保険金が入ったことで家や当分の生活費は何とかなっていた。しかし、学園を卒業させるまではできても、靴やユニホームと部活にかかる費用はどうしても余裕がなかった。
 その時北里は足を骨折しており、リハビリをしないと走れないとまで言われたほどの怪我をしていた。
 そこで北里は、リハビリができない以上、将来サッカー選手になれるわけないのだからと、すぐに部活を辞めた。
 その時は大会の地区予選をあと一つで全国という大事な時期だったため、北里の退部は痛手だったのだ。だから今でもサッカー部の部員には裏切り者と言われている。
 ただ北里が重要な選手だったなら、それも受け入れるべきであったが、骨折してレギュラー落ちして補欠だった北里が抜けたところで、あまり関係はなかったはずだ。
 しかしどういうわけか、全国大会にいけなかったのは、北里が退部してしまったために部内の雰囲気が悪くなったからということにされているのだ。
 部長もその考えに取り付かれていたのだが、よくよく考えれば八つ当たりである。
 実力が足りなかっただけのことを人のせいにしているだけのことだ。
 最近になって北里がそのことでサッカー部の部員から嫌がらせをされていることを知った両親が部長に直談判に行き、北里家のことを全部話したらしい。さすがに部長の両親も息子がそういうことをしているとは夢にも思っていなかったため、部長は親からかなり怒鳴られて説得されたそうだ。
「ほんと、親に言われるまで俺もどうかしてたと思う。他の奴らにもちゃんと説明はしたから、もうああいう卑怯な真似はしないと思う」
「そうですか……」
 北里はそういう部長をあまり信じていなかった。
 というのも、率先して北里を裏切り者だと罵ったのは、他ならぬ部長だったからだ。それが部員に伝染した。こっそりと家庭の事情だからと部活の担当教師が取りなしてくれたのにも関わらず、最初に部員を煽った罪は消えない。
 そのせいで部員は自分たちの力のなさを認めず、北里に嫌がらせをすることでストレスを発散するようになってしまったのだ。
「それじゃ、頑張れよ」
 部長はそれだけ言いたかったのか、言うだけ言って去って行った。
「あいつ、サッカー部の部長じゃん、また何か言われた?」
 同じクラスメイトが話し込んでいた二人を気にして話しかけてきてくれたが、それに北里は首を振った。
「まあ、悪かったって、謝ってもらった」
「へえ、やっと八つ当たりしてるってこと認めたんだ? でも今更だよな。やられたことが帳消しになるわけでもないし。謝っただけで済むとか舐めてるよな」
 クラスメイトはかなりサッカー部のやり方に怒りを覚えるほどだったようで、今更謝ってごめんごめんで終わらせた部長のやり方を批難した。
「まあ、俺もそう思うけど、これで嫌がらせが止まるならそれでもいいかなと思って」
「そうだな。継続される方が面倒くさい。けど、同じクラスとサッカー部のやつ、風見だっけ? あいつ、今日も睨んでたから分かってなさそうだけど」
「風見とは元々レギュラー争ってて、俺の方が怪我で負けた感じだから、いろいろと納得できてないだけだと思うよ」
 地区大会直前で北里は足を骨折し、未だに足は感覚がしっかりとは戻っておらず、サッカーをできるのはリハビリ次第と思っていた矢先だった。まるでもうサッカーはするなと言われているかのようにたたみかけてくる災難に、北里も諦めは早かった。
 それもいけなかったらしい。
 もっとできうる限りのことをやった上で諦めるならまだしも、何もせずにただもう辞めた方がいいのだろうと辞めたことが風見が気にくわないと思っているところらしい。
 ずっと同じ部活のサッカー部で、さらにクラスメイトで仲良くしていただけに、二人の仲違いはクラスメイトですら気にしているところだ。
 しかもその北里の骨折は風見に足を蹴られたことによって骨が粉砕されたのが原因だったから、皆は双方に気を遣っていた。
 更に北里の家庭の事情が最も優先される出来事に、風見が無茶を言っているのを皆が知った時はクラスメイトが北里の味方に付いたのだ。それも風見は気に入らないらしく、北里への当たりが強くなっている理由の一つだった。
「まあ、これで収まれば一件落着でいいよ」
 北里はそう言ってそれで終わればいいと笑顔を見せた。
 学園祭はそのままお昼を迎えた。
 雨はやっと小降りになって、お昼には止んだ。
 濡れた中庭には、雨が上がったので学生が通るようになり、飲み物の販売もできるようになった。
 残っていた学生と北里は、女装したままで販売を続けた。
 するとお昼を終えた風見たちが戻ってきた。昼までは部活動の方に出ていたのだが、昼からは店番をする予定だった。
 そんな風見は他クラスのサッカー部員と一緒だった。
 そして北里に近づいてくると、そのうちの一人が北里の持っていた飲み物を取り上げて、それを北里にぶっかけたのだ。
「きゃー!」
「何してんだ!」
 さすがに騒ぎになって、そんなことをした風見たちは近場のクラスメイトに捕まった。
というよりは悪いと思っていないようで、平然と逃げもしなかったのだ。
「さすがにみっともないよ、風見」
「逆恨みしすぎだし、サッカー部調子に乗りすぎ、引くわ」
「マジない」
 そうクラスメイトに次々に文句を言われた風見は、自分の立場がかなり悪いことにやっと気付いたらしい。
 学園祭に部活のことで問題など起こしたら、さすがにサッカー部の今後にも影響をしてくることだ。
 教師がやってきて風見たちを連れていくのだが、風見は自分は悪くないと声を荒げていたが、さすがにそれは教師も聞く耳を持たなかった。
「お前ら、停学を覚悟しろよ」
 教師に脅されて風見は自分が不利なことを初めて知ったようだった。
「悪いけど、部長とは和解してるんだ」
 北里がそう風見に告げると、まさかの事態に自分のサッカー部での立場もまた悪くなっていることを知ったらしい。
 部長は先回りして北里のことで何かすることを部員に禁じていたらしい。それから部長は真っ先に北里に謝ってきて自分だけ安全圏に逃げたのだ。
 一番の裏切りは部長の態度であって、そのせいで北里も風見も振り回されたことになってしまった。
 騒ぎはすぐに収まったのだが、濡れたメイド服はさすがにずっと着ていられずに、北里は先に上がらせて貰うことにした。
 問題もまた起きそうだったので、店番もしなくていいから帰って良いとまで言われた。
 仕方なく北里は着替えを置いてある部屋まで移動することになった。
 その着替えは特別棟の部屋を借りていたのだが、北里はそこへ行く前に違うところへいこうとした。
 もう辛くて一人で考えるのがしんどくて、ある人を訪ねようとしたのだ。
 しかしそこへ行く途中にある階段でマズイ相手に出会ってしまった。
「よう、北里」
「久しぶりじゃん」
「何、女装してんの?」
 そう言いながらサッカー部の先輩たちが寄ってきたのだ。
 どうやらこのサッカー部の先輩はさっきまでの騒ぎのことは知らないらしく、北里にちょっかいをかけてきて馬鹿にしている。
 なので北里は言った。
「今、俺に何かしたら、サッカー部の方がまずくなりますよ?」
 そう北里が言うと、先輩たちが睨み付けてきた。
「てめー、部長に何かしたな? 急に部長が折れることなんてあるわけないし」
「説明をさせて貰っただけです。部長からは謝罪も受けました」
 そう北里が言うと、余計に部員を煽っただけになったようだった。
「てめー! 部長を脅したのか!」
「脅してないです、普通に話しただけですし、さっき風見も余計なことをして教師に連れて行かれたので、サッカー部、部活動停止になるかもしれませんよ?」
 そう北里が言うとサッカー部部員がいきり立ったのだが、その後ろから明らかに素行が悪い学生が階段を下りてきた。
「なんでーサッカー部か。キャンキャンわめいてうるせえよ」
 そう言ってきたのは学園一の不良である山戸だった。
 百八十の長身とガタイのよさに金髪の髪、着崩した制服でやってきて北里の側にやってくる。
「マジ、女装? いいね」
 そう言いながら山戸は北里のスカートを捲り上げる。
「ちょっ……!」
「ひゃは、やべえ下着もちゃんとフリルついてるぞ」
 面白がられてしまい、北里は困ったと焦った。
 山戸は元々サッカー部で先輩だったのだが、部活中に喧嘩をしてサッカー部を辞めている人だ。そして北里はこの人に懐いていた。
 そのせいで北里は不良になった山戸には多めに見て貰っている立場であるが、まさかこうやって助けに来るとは思わなかったのだ。
「山戸先輩、やめてください」
 北里が言ってスカートを元に戻そうとすると、山戸が北里のスカートを後ろから捲り上げて尻を撫で回してきた。
「ちょ、ちょっと! 何してっ!」
 そう慌てるも山戸は真剣な顔をしてサッカー部の男たちを睨んでいる。
「よぉ、負け犬のくせに威嚇だけは一丁前ってか? 実力で負けて八つ当たり、恥ずかしいったらないな、田本?」
 そう言われた田本は山戸とは同級生であり、山戸がサッカー部を辞める原因になった喧嘩の相手でもあった。
「人生の負け組に言われてもどうってこともないけどな」
 そう言いながら田本は山戸を睨み付けるも山戸は堪えた様子はなかった。
「俺と揉めてもサッカー部には痛手にしかならねえし、何ならお前の将来も台無しにしてやろうか? 推薦が決まってんだろ?」
 そう山戸が言い出した。
それにはさすがに田本もギクリとした。
 周りの部員は田本が顔色を変えたのでびっくりしている。
「ああ、サッカーで推薦を受けられるの一人だし? 教師を抱き込んで推薦枠奪って将来安定のお前が、俺が何言っても何だって言うんだろうけどよ」
 山戸がそう言った時、周りのサッカー部員が一斉に田本の側を離れていった。
 サッカーの推薦枠は運動部の推薦枠としてやっと確保したものだ。三年たちは皆それを狙っていたが、誰が推薦を受けられたかどうかはそれこそ合格するまで分からないようにされている。喋ると足の引っ張り合いになるので、推薦された人は合格するまで黙っているのだという。
 それが推薦枠を買収した田本に誰が味方をするというのか。
「お、おい……でたらめ……」
「悪いな、俺の昼寝場所、職員室の上なんだわ。だから生徒指導の部屋の音も聞こえる。暇すぎて全員の進学先を知ってるくらいだからな」
 山戸がそう言い出して北里はふと思い出した。
 山戸は確かに不良であるが、実はテストで満点を取ることができるほどの秀才だった。もちろん今でも授業はサボっているので成績表自体は素行不良になっているけれど、勉強面でいうと、はっきりいって教師も教えるのを諦めているレベルの秀才だった。
それでも学園を辞めないで済んでいるのは学園長が山戸の叔父で、便宜を図っているからというのは有名な話だった。
「まあ、こいつに手を出した時点でサッカー部はそれどころじゃないだろうけど」
 そう山戸が言い出して田本も首を傾げた。
 どうして今までやれていた北里への暴言程度が問題になるんだという顔だ。
「学園長が知ったからな。サッカー部の横暴のこと。部長の方は北里の両親によって親にバラされて謝罪したみたいだけど? まあ、サッカー部なんかよりよっぽど大学進学の方が大事だよな? 他校に推薦で行く田本と違って、部長も他の部員も学園のエスカレーターで大学だもんな?」
 そう山戸が言うと他の三年もさすがに八つ当たりという理由を超えたことをやっていた自覚が出てきたのか、すぐに何も言わずにその場を去って行った。
 しかし山戸に睨まれた田本は動けないでいる。 
「で、お前が北里に気があることくらい、知らないとでも思ったか? お前との喧嘩の原因、北里のことだしな」
 そう言って初めて山戸は田本と揉めた理由を口にした。
 山戸が言うには、北里の荷物を漁っていた田本を殴ってしまったので、山戸が暴力を振るってしまったのだという。しかし当時はその理由を双方が言おうとしないことから、山戸は退部になり、田本もまた謹慎を食らった。
 その後、北里は風見たちと一緒につるんでいるようになったので、田本も手を出すことができないでいたらしいが、北里が風見と仲違いして、サッカー部を退部してその身が浮いてしまうとチャンスを狙い始めたらしい。
「気があってもやらんけど?」
 そう山戸が言うと、北里の尻をまた撫で回し始めた。
「山戸先輩、もうやめてください……今じゃなくても」
 北里がそう言って辞めさせると、田本が不審な顔をした。
「まあ辞めた者同士、それなりに仲が良いってことよ」
 山戸がそう言うと、さすがに田本も察した。
 悔しそうに山戸を睨んだあと、北里と目が合うとすぐに目を反らして逃げていった。
 階段には誰もいなくなり、遠くから学生ののんきな笑い声などが聞こえてきた。
「そんで、お前はどうした?」
 山戸はそう言うと北里をさっと抱えて階段を登っていく。
「ちょっと……何でそうなるんです?」
「まあ、風見となんかあったか?」
 そう山戸が言うので北里は一瞬で押し黙った。



 階段を登っていくと、山戸が根城にしている余った教室の空き部屋に入った。
 山戸はその部屋の真ん中にある絨毯の上に北里を座らせる。
 北里は最近、この部屋に避難していることが多かった。放課後に家に帰ってもやることがないので学園にいるのだが、居場所は教室からクラスメイトが去ってしまうと、どうしてもサッカー部に見つかってしまい嫌がらせをされた。
 それを知った山戸がわざわざ北里のために学園長を通して、山戸の部屋になっているところに入れるようにカギをくれた。
 北里は風見のことで落ち込んでいたから、山戸を訪ねようと思っていたところだったが、そこを田本に待ち伏せされた。
 幸い山戸が気付いてくれたので大した問題にはならなかったが、山戸の言っていたことを考えると北里はかなりのピンチだったようだ。
「風見となんかあったか?」
 山戸がそう聞きながら、北里のメイド服をしげしげと眺めている。
「これすげえな、手作りだろ? お前のサイズに合わせてあるし、めちゃ興奮するんだけど」
山戸は思ったことを平然と言うのだが、北里はふうっと息を吐いて笑ってしまった。
「ちょっと濡れてるでしょ。これ、風見たちに飲み物をかけられたんだ。でも、周りにクラスメイトがいたし、皆怒ってくれて、教師も呼んでくれたから風見たちは連れて行かれたけど……俺は帰れっていわれた」
 そう北里が言うと、山戸はすぐにポケットから携帯を取り出して何処かに電話をしている。
「うん、こっちで預かってるから、一人にするとサッカー部が暴走してるし危ないから」
 そう言って山戸が電話を切った。
「……山戸先輩の叔父さん?」
「そう、お前がいないって探されてた。着替えの部屋にいなかったからって」
「あ、そうか、勝手な行動、悪かったです」
 北里は謝った後に言った。
「風見とはもう一生わかり合えないと思います。たくさん説明したし、できないことはできないし、俺一人でどうにかなる問題でもないって何度も言ったけど……分かってくれない上に風見の言う通りにしない限り、絶対に認めてくれないから……もう駄目だと思います」
 風見とは一生友達だと思っていた。
 だから理由すら受け付けてもらえなかったことが本当に悲しかった。
 サッカーだってまだ大好き、いつかはやりたいと思っているほどなのに、そのサッカー部全員に嫌われて、思いの行き場がない状態だった。
 誰よりも悔しかったのは北里なのに、それも分かってもらえない。
「決勝にいけただけでも、出られただけでもうらやましいのに、負けたことを俺のせいにして勝手に文句を言ってくるサッカー部にも失望しているし……俺の二年間なんだったんだって思えてきて……」
 サッカーに人生を捧げる気でやってきて、骨折したことで未来を閉ざされた北里は、何よりも自分が苦しんだと思っている。ここまでの不幸が重なってサッカーを辞めなければならなくなった人にしか気持ちは分からない。
 そこまで思ってから北里はハッとしてから山戸を見た。
「喧嘩した理由……俺のことだったんですね……すみません」
 北里はまさか自分が理由であんな喧嘩になったとは思ってもいなかった。
 まず田本が自分を狙っていることも分かっていなかった。よく部室にモノを置くとなくなってしまうとは思っていたが、その騒動後はそれもなくなっていたから、気のせいだと思ってしまった。
 それも全部山戸が庇ってくれたお陰のことだ。
 山戸が北里が原因で田本と喧嘩になったと言わなかったのは、何も田本のためでも田本を脅すためでもない。ただ北里が知った時にショックを受けてサッカーもできなくなるのではないかと思った山戸が田本にも黙っているように口止めをしたからだ。
 けれどその恩すら田本は忘れて山戸を煽ってきたのだ。
 それで山戸に反撃されてしっぺ返しを食らったわけだ。
「まあ、お前のためって言うか。俺も下心満載で接してたから、自分にも腹が立ったっつーか」
 そう山戸が言うので北里はちょっとまた笑った。
 あの頃の山戸が北里に下心があったというのは、多分嘘だ。
 今こそそんな態度であるが、こうなったのは一年ぶりに山戸と会話した後だったからだ。
 サッカー部で先輩だった時の山戸はそれこそ北里のあこがれだった。
 山戸こそサッカーが好きでレギュラーで凄かったのに、北里のせいでサッカーどころか真面目な自分すら捨てなければならなかったのだ。
 それを考えたら、北里は風見を恨んでいる自分が小さく感じて恥ずかしくなった。
「すみません……本当に……」
「んー、本当に謝ってもらってもなあ」
「だって、俺のせいであることは間違いないじゃないですか……っ」
 そう北里が言うと、山戸はにやっとして言うのだ。
「じゃ、このままのお前とセックスさせて」
「はい」
 山戸は無理難題を北里に要求をしたのだが、その要求に北里は即答した。
「……え?」
「え?」
 二人で顔を見合わせて、何て言ったというように困っている。
「あのな、北里。今俺はお前とセックスさせてって言ったんだけど?」
そう山戸が確認をしてくるのだが、北里は確かに最初からそう聞こえていたというようにキョトンとしてから言った。
「ですから、はいって答えましたけど?」
「……マジで?」
「マジで、です」
 ちょっと意地悪を言ったつもりの山戸の方が困惑してパニックになっている。
「ちょっと待って、お前、ゲイなの?」
「いえ、でも山戸先輩とならできるかなーと」
「何で急に、え? 何で?」
「割と最近、暇でいろんなことを悩んでいたので、調べたりしていたんです」
「いや、だからどうしてゲイでもないのに、俺とセックスしようなんて気になる?」
 そう山戸が慌ててセックスしないで済む理由でも探しているかのように言うから、北里は少しだけむくれてから言った。
「俺とセックスしたくないんですか?」
 そういう北里に慌てた山戸は首を横に振った。
「やーしたいしたい、めちゃしたいけど、何でする気になったのか聞いておかないと……後悔されても困るなぁーと」
 そう山戸に言われて北里はちょっとだけ笑った。
「こういうときにこういうのはきっと、失礼だと思うんですけど。俺、多分風見のことそういう意味でも好きだったんだと思うんです。だから分かって欲しくて、分かってくれるとか思い込んで一人で必死になってたんだと思う。でも、それって田本先輩と同じくらいに相手のことは考えてなかったんじゃないかって……」
「ふむ、で?」
「俺も俺のことばかりで、風見も自分のことばかりで、お互いにお互いのことばかりで、何も見えてなかったんじゃないかなって今なら思えてきて……でもそう考えられるのは、山戸先輩が俺のことを守ってくれたから言えることなんだって知った」
「だから、風見を忘れるために俺とお礼にセックスするの?」
「お礼なんだろうけど、そうじゃなくて……初めては、山戸先輩がいいなって単純にそう思ったからなのもあるかな……それだけじゃ駄目ですか?」
 そう北里は自分なりに理由を付けてみたが、山戸が逆に渋った。
 どうやら本気で北里とはセックスをしたいが、北里が嫌がることはしたくないらしい。更に後悔して泣かれるのも嫌なようで、どうにかちゃんとしたはっきりと分かる理由でセックスがしたいらしい。
「えー、それってお前の気持ち、俺にないってことじゃん……ちえー」
 山戸はそう言って拗ねた。
「え? あの……それって、俺と両思いじゃないと嫌だってことですか?」
 そう北里が言い出して、山戸がしまったと顔を真っ赤にして視線をそらした。
「あーまー、そうとも言うが……まあ、お前の気持ちないんじゃ、萌えないしな」
「萌える……ですか?」
 そう言って首を傾げる北里であるが、萌えると言えばメイドと直結した考えに至った。
「じゃあ……こうやってみたら萌えますか?」
そう言うと北里は立ち上がってから、スカートの途中を持ってスカートの裾を上げた。
 そこには綺麗にガーターベルトをした足が見え、ストッキングも引っ張っている。もちろんパンツはボクサーパンツにフリルを付けているだけだけれど、白い色をしているから山戸にはいろいろと想像してマズイ状態だ。
「ちょっ! お前な……萌えさせて襲わせる気か……っ!」
「襲ってくれないんですか? こんな格好をしてるの、今日だけですよ?」
 北里はキョトンとしてからスカートを持ったままで一回転した。
 ひらひらとしたスカートが舞い、パンツも丸見えである。そして可愛く北里は山戸に首を傾げて見せた。
 これはこうやれば可愛く見えるから絶対に客に向かってやるべきだと、女子学生に言われて練習した萌え萌えポーズの一つだった。
「……え? マジで?」
どうやら山戸には効いたらしい。
「はい、明日は別の人がやるので、俺は今日だけです。さすがに一般客が入る時はもっと似合う男子にやらせるそうで……」
 そう北里が言うと、山戸がびっくりしたように言った。
「お前以上に似合うようなやつ、いんの? めちゃいい足してんなぁお前……」
 北里の足は普通の男の足とは違って、サッカー部特有の筋肉も盛り上がった足をしていなかった。まるで運動などしたことありませんと言わんばかりに細く、そして綺麗に延びている。肉もほどよく付いていて、触り心地がいいらしい。
 マッサージをするときに、骨張ってないからやりやすいと言われてきたから、多分山戸が言うように北里の足は綺麗なのだろう。
「この衣装はお前専用だよな?」
「はい、さすがに体型は違いすぎて、一着一着作ってくれました。あ、でも何か出来がよかったからしばらく展示するらしいので破かないで下さいね」
 にっこりとして言われてしまい、山戸はもう完全に堕とされにかかっていた。
「……もう、分かった……けど、学校だと見つかったらさすがにマズイから一旦家に帰ろう」
 何とか山戸が現実問題を引き出して、急に始まるセックスを回避した。
 北里はちょっと不満そうに山戸を睨んだあと。
「荷物、取ってきますから、責任取って連れて行って下さい」
 北里がそう言うから山戸も観念して北里の護衛をした。
 服を着替えに行くと、クラスメイトが待っていた。
「大丈夫か……って、わ! 山戸さん? 何で……?」
「あーうん、サッカー部に絡まれてたの助けてくれたんだ……大丈夫、送ってくれるっていうから」
 そう言って北里は急いで着替えた。
「あ、北里、メイド服だけど」
 そうクラスメイトが言いかけたのを北里は。
「ごめん、ちょっと汚れたから持って帰るね。大丈夫ちゃんとお店のクリーニングに出すから」
そう言って北里はメイド服を袋に入れて持って帰った。
 山戸は北里を預かることを北里の親に伝えて、学園長の甥っ子が付いていると伝えた。すると北里の両親は学園から連絡を貰っており、北里のことをよろしくお願いしますと申し訳なさそうに頼んできた。
 さすがに学園のことで落ち込んだ息子をこれ以上慰める言葉は持ってなかったらしく、北里は電話を替わって大丈夫だと言って、先輩に一日世話になると言った。
 そのまま北里は山戸に付いていき、山戸の家に行った。



 山戸の家はマンションで、山戸は親と折り合いが悪く一人暮らしをしていると言った。
「いいか、本当にいいのか?」
 玄関をくぐったらもう戻れないぞと、山戸が念を押すが、北里はさっさと山戸の家に入っていく。
「もう、先輩いい加減に観念して下さいね~」
 余裕すら生まれて、初めての山戸の家でも平然と上がり込んでしまう。
「お前なー、もう本当に……もう予想外過ぎる……」
 山戸は観念して北里の後に続いて入った。
 玄関のカギをかけてチェーンもする。
「先輩こそ、いつまでもグチグチして、らしくないですよ」
 強気で怖い不良として学園一怖い存在で、関わり合いになるのはやめておけと言われる人のはずなのに、久しぶりにちゃんと話してみたら、昔の先輩と変わらないままだった。だから北里は嬉しくて、気持ちがはしゃいでいる。
 山戸がサッカー部を去ってから、風見に助けて貰ったから恋心を持ったのは確かで、もしそれが山戸のままであったなら、北里は確実に山戸に恋をしていただろう。
 北里は今に戻るとさっさとメイド服に着替え直した。
「お前なあ……持ってきたのかよ」
「先輩好きですよね、これ?」
 北里はさっと着替えた。
 ストッキングは付けたままだったので、服だけ着替えた。
「これ、凄いですよね。女の子はこんな短いスカートで平然と移動したりしてるなんて。いつ下着が見えてもおかしくないですよ」
 北里がそう言ってその場で一回転すると、スカートが遠心力で舞い上がって下着が見えてしまう。
 北里はそう言いながら、ソファに座った山戸の前に立つ。
 スカートを持ち上げて下着をちらちらさせてくるので、山戸が好きな北里の足がしっかりと見えてしまっている。
 溜め息を吐いた山戸は手を伸ばして北里を引き寄せてから、その足を撫でた。
「お前、足どうだ?」
 そう言って触っているのは骨折した場所だった。
 まだギプスが取れて普通のリハビリで歩くのだけは問題はないようになったが、走ることはまだできない。
「うん、大丈夫。でももうサッカーはできないと思う。リハビリで治るって言われたけど、初期のリハビリで上手くできなくて……走るのに後遺症をもたらすって」
「そうか……残念だったな……俺と同じでもうサッカーもできないか」
 そう山戸が言うので北里はキョトンとする。
「先輩はやろうと思えば……」
 趣味でサッカーをすることはできるはずだと北里が言おうとしているのは山戸は分かってしまって、それを遮るように言った。
「俺も足の骨がちょっと悪くてな。あの頃、辞めるか無理して続けるかで悩んでた。医者はこれ以上続けたら日常生活を送るのにも支障がでるって言ってて。それでむしゃくしゃしている時に、お前の荷物漁っている田本を見つけてな。だから、八つ当たりもあったんだよな……」
 そう山戸が言うので、北里は山戸が北里を助けた訳ではないという理由もそこにあるのかと気付いた。
「……何にも知らなくて……」
 そういうと、北里は山戸の頭を抱き寄せて抱いた。
何よりもサッカーが好きで、レギュラーで将来だってJリーガーになれるとさえ思ったくらいに上手かった人が、喧嘩一つで身を持ち崩したなんておかしいと北里は思っていた。
 しかし山戸は、そうした問題を抱えてもなお、北里に悟らせることもなく、サッカーを辞めた後も北里を守ってくれていた。
「北里、サッカーやめてから足痩せた?」
 急に山戸はそう言い出して、北里はびっくりしながらも答えた。
「あー、はい。しばらく動けなかったし、入院してる間に五センチくらい細くなって、筋肉もなくなったって感じで……あれびっくりしますね。寝ているだけなのに、足の筋肉が全然なくなって、歩くのも困難になっていくんですよ」
 北里は複雑骨折だったので手術をしてベッドに固定されて一ヶ月以上過ごしたので、筋力も一気に落ちて、足も細くなってしまった。更に食欲も落ちたので、全体的に身体の大きさすらも変わった。
「まあ、これくらいでも骨張ってないから大丈夫か」
 山戸はそう言うと上から下まで北里の足を撫で回した。
「んぁ、ぁふっ……ん、ふ」
 何だか気持ちよくて、北里は山戸が触ってくるたびに腰を震わす。
 山戸はフリルがついたボクサーパンツを下ろして、それを脱がせた。
 これも汚してはいけないと思ったからなのだが、そうすると下着だけ脱いだ状態でガーターベルトを着けたいやらしい姿になってしまう。
「そのまま、スカートを上げてな。離したら汚れるからな」
 そう山戸がいい、北里は顔を真っ赤にしながらもスカートを上げて耐えた。
「やっ! あっ、ああんっな、はあんっ」
 そうすると山戸が足を開くようにいい、北里が足を開くと山戸がまず北里のペニスを口に含んで扱き始めた。
「は……っ、はぁ……っ、あん、ああぁ、んあぁ」
 ジュルジュルと音を立てて吸われて、北里はあまりの気持ちよさに腰が揺れてしまう。
「あ! ああん、……あっ、あぁん……っ、ああっ! あふ、ぅ……っ」
 山戸は北里のペニスを口で扱きながらも、指には部屋から持ってきていたローションを取り出した。
 それを指に塗り、北里のアナルに指を一本忍び込ませる。
「んあぅ……! んああんっああっ……ぁ、や、やめ、あんっ!」
 無理矢理開いたアナルであるが、北里はその指の侵入を息を吐いて受け入れた。
「あぁん、……っぁん、やぁ……っ、ゃ、あ、ぁ、あっ」
 ペニスに這う舌が気持ちよすぎて、アナルの指はあまり気にならない間に、アナルはどんどん広げられている。
「んひゃ、ひあぁあ……っぁふっ、ゃ、ぁ……っあ、あぁ」
 指が二本になってさらには北里のいいところを指が擦り上げてくる。
「あぁ……っ、ぃ、いやあっ……はぁっ……もぉ、あぁ、はあぁっ……こ、こんな……っ、だめっん……」
 腰が引いてしまうが引いた腰を山戸の手によって前の方に立つように正される。
「あぅあ、あぁ、んあ、や、やめ……っ、ん、はぁ……ああっ」
 ジュルジュルと音を立ててペニスを吸われた北里は、三十分もイかせてもらえずに、快楽を調整されながら継続されて狂いそうだった。
「あっ! ぁひっ、ひんっ! ゃ、やぁっ、っあっ、あっ、い、ゃ……っ、やめ……ああんっああっ」
 山戸は慣れたように北里を扱い、北里を追い上げた。
「あはぁ……っ、あぅ、んあ……ふああん……はぁっ……はぁ、あん……あぁ、やぁ……っ、あぁんっ……あ、あ、あっあああんっ!」
山戸の手によって絶頂をさせられた北里は倒れそうになってしまったが、山戸がそれを受け止めて、ゆっくりとソファに寝かせてくれた。
「ん……は、んんぅ……っああんっ……はぁんっ……んふんぅ……っ」
 北里のアナルにはまだ山戸の指が入っていたが、山戸はどこから取り出したのか、小さめのディルドを取り出して、それにローションを付けて北里のアナルに挿入した。
「あぁっ! あっぁ、あんんっ……! ひゃっ! あぁっ! あぁっや、やめっ……!」
「これが手っ取り早いんだから、これで気持ちよくなってな」
「ひぅっ……ああんっ……あっ! ぃや、らめっ……ああっ、いやぁっ」
 ディルドの圧迫感に戸惑った北里であったが、山戸はそのディルドを掴んでしっかりと北里のいいところを擦り上げてくる。
「んぁあっ……、ぁっあひゃ、ぁんっ、やっ、あっあっあっ!」
跳ねる腰を押さえつけながら、山戸は北里が悶えるのを眺めている。
 興奮をしているが、ディルドで様子を見ているのは北里にも分かった。
「んぁ、ぁ……ぁ、へ、ヘん……ゃ、やだ……やだ……あぁっあぁっ」
これを嫌がったらきっと山戸はそれ以上はしない。
 妙に及び腰であるのは、北里の気持ちを大事にしてくれているからだ。望まれても今の落ち込んでいるであろう北里の気持ちが、あとで変わってしまい後悔する羽目になる。それに気を遣ってくれている。
 けれど山戸の行動は北里には逆効果だった。
「ああっ!? あぁ゛ぁっ! あぁーっ! んぁっ、あっあっあっ! ふあんっ、あっ、ひんっぃ、やぁっあぁんっ!」
 北里にはその山戸の気遣いが嬉しかったし、大事にしてもらえているのだと実感できて余計に安堵が生まれた。
 この人が初めてであるなら、きっとこの先の苦労はそこまでないような気さえした。
 ゲイであることですら悩んでいたことだけれど、そんな自分を不器用に抱いてくれる。
 この人を好きにならないで誰を好きになるというのか。
 そういう気持ちに北里はなってしまった。
「あっあっあっ、ぁんっあぁっ、ヘん、ヘんになっちゃう、あぁっ……っ!」
「ここで気持ちよくなってんのか、いいね……そのまま気持ちよくなってな」
「あぁっ、あぁあっ、やぁっ、あぁんっ、あっあふっ……っ」
 気持ちよく喘いでいたら、山戸がちゃんと最後までしてくれるのだと北里は認識した。
 実際、圧迫感はあるけれど痛みはなかったし、ドキドキと心臓は高鳴るが、怖さは一切なかった。
 だから北里は安心して山戸に身体を差し出せたし、好きにして貰ってよかった。
「あっあっあっ、ああんっ! ひあっ……っあっあっ、あっあぁあんっ! やっ! やめ、ひっ!」
 気持ちが良いと身体を振るわせて嬌声を上げると、山戸が興奮しているのが分かる。
「あうぅ……っ! あぐっ、うそっ……やらっあっ! ああんっ……あっ、あぅんっあはっ! ああぁっ、んぁっ、だっ、だしたいぃ!」
「ディルドでイくんだな? このままイッて見せて」
「ぅあ゛あぁああっ!! ぅあ……っあぁあ……っ! ああぁあぁーっ!! んぁっぁっぁっイク……っあぁあっ!」
 ディルドで奥まで抉られて、北里は絶頂をした。
 精液を吐き出すと、それを山戸がタオルで受け止める。
 着ている服を汚すわけにはいかないから、気をつけているが、メイド服でやれるのは今日しかないので、山戸はそれを脱げとは言わなかった。
「すごいな、北里。おま○こがどろどろとして気持ちよさそうだ」
 そう山戸は言うと、北里の足を抱えて、ガチガチになったペニスを挿入し始めた。
「ふぁあっ! あは、はっあ、ぁ……っ、おま○こ……すご……っ、きもち、ぃ、い……っ!」
 さっきまでの堅さを持ったディルドではないものが挿入ってきて、北里はやっと山戸がペニスを挿入した事に気付いた。
「やっ、あっあっ、ぁん、んっ……ああ、んああ……おま○こ……きもちぃ、から……っああ……あ、ぁ……お、おっきぃ……ああ゛ぁああっ!」
「やべーな、北里。お前の中、たまんねえーわ」
「あぁっ、あっあっあっ……あっあっは……っあっ! はぁあっ! あっ、ん! んっ! んぁっ!」
「一回で済ませてやれないけど……いいよな?」
そういうと山戸は北里のペニスにはタオルをかけて、北里の腰を掴むと乱暴に腰を振った。
「ああっひゃあぁあん! あぁっ、あぁあっ! ひぁ……っぁ、すご……い……っ!」
 挿入は奥まで入り込むと、北里はだんだんと気持ちよくなってきた。
 奥まで犯されて開かれると、それだけで快楽が生まれてそれが気持ちよさになって脳天を突き抜けるように襲ってくる。
「ぁん……っきもちぃ……おま○こ、きもちいいっ……ああっ、きもちぃ……っあっ! すご……いっああんっ……あぁっ、きもちぃ……──っ!」
メイドの格好で悶える北里に煽られて、山戸は夢中で腰を振った。
「はっぁああん……っ、あっあっ、す、すご……おちんぽ、おっきぃ……ひゃぁああっ、あ、おちんぽ、熱いっ、ああっ、おま○こ、気持ちいぃですぅ……っ!」
「そうか……おちんぽでおま○こが気持ちがいいか……ほらもっと言え」
「おま○こっ、ああっ、きも、きもちいい……っ、あぁんっ! きもちがいいっああんっも、らめっああんっ」
「駄目じゃないだろ? 北里、もっとだ」
「はぁああんっ、あぁあっ、す、すごいぃ……っああっ……! あ、やあぁ……っ! あぁあ……っ、おちんぽいい……っ」
 北里はもうアナルで完全に快楽を得られるようになった。
 相当山戸との相性がよかったのか、北里には山戸のペニスが凄く気持ちよくて溜まらず、口から涎を垂らしながら嬌声が止まらない。
「ふぁあああっ! あっあっらめっおま○こらめっ、あっら、らめぇ……っ、ひゃあぁっ! あぁっあぁっ! らめっあっあっおま○こきもちぃい……っ!」
「これならどうだ?」
 そう言うと山戸はペニスを奥まで突き刺したままで腰をさらに奥に叩き付けるように動かした。
「ひゃぁああああーっ! ああぁああ――っ! やぁあーっ! ぁああ……っ、あぁ、あぁあ……っああ……っ、ぁ、あんっ! んっ、んぁ……っ! あぁっ、ゃ、ああんっ!」
「ああ、これは好きか……」
今度は浅く付いて入り口付近を擦り上げて、いいところを抉ってやる。
「ま、待て、やめっ……あ、ぁんっ、ひぁあ! ひぁっ! う、ぁ、あ、あぁっ、ひ、ぃんっ……やっ……ぁあっ……あっあんっ……! あんっ! や、やだ、そんな、おま○こがっ……!」
「何でも好きなら、どうやってもいいよな? 北里は気持ちよく喘いでな」
「や、ぁ、ああんっおま○こがいい……っ! あ、ぁん……っあ、あぁあっ……! はぁあんっ! ひぁっ! ぁ、あ、あ、やぁっ! あっあっひぁああっ?! っぁひ、ひぃんっ……! あっあっ……! あぁあんっおちんぽ、らめっきもちいいっっ……!」
「声を殺すなよ……そうそう、思ったことを口に全部出すんだ」
 そう言って山戸は北里の奥まで突き挿入てから、ペニスのカリが引っかかるように抜いてからまた奥まで突き刺した。
「ふぁああっ、あぁっあっあっだめっ! あぁああんっいいっ! っはぁん……っんゃ、やぁあっ! あっおっおま○この奥までっ……そんなっ……あぁっ! ひゃああっ! いぃぁああっ! あぁっやっおま○こ壊れっ……!! ぁふっ……ぁ、あ、ああっ! おちんぽっ! おま○こらめっ……ひぁああ! やっあぁっああ――っ!!」
北里は気持ちよく喘いで声も殺さなかった。嬌声を上げれば、山戸が喜んでくれると分かってからは思ったことを口に全部出した。
 それくらいに気持ちよくて頭の中で悩んでいた、さっきまでの出来事は見事に今は消えてしまった。
「あああんっ! ひゃああんっ! おま○こにおちんぽっきもちいいっんっあああんっ! んはぁああっ……! 気持ちいぃ……っぁ、あぁあ! や、ぁ、あ……っ あぁ、あん、イかせて……っ、も、イかせて……! はぁ、おま○こ、ヘん、なるぅ……! あぁっ……おちんぽ、いい……!」
「そろそろいいか……じゃ一回イクか?」
「あひっいいっあ゛っあんっあんっあんっ……あっあっひっあああんっあ゛っひっらめぇっ……あっあんあんあんあんあんっ! あんっあんっあんっ! あ゛ひっんっあぁああーっああぁっ……、んっあっあっ、あうっ……」
「もうちょっと引っ張れるか……おま○こでイきたいか?」
「はぁあん! あぁっ! おま○こでイくっ! おちんぽでゴリゴリされるの気持ちいいっあっひあぁんっ」
「そうか、すっかりアナルはおま○こなんだな……しかしどこでそんな卑猥な言葉を覚えてきたんだか……でも淫乱で嬉しいよ」
「あっいいっ……あっあっあ゛あああっあひっい゛いっあっあっあっあんっ! あっすきっいっおちんぽっあんっあっ、すき、い゛っあああっあっんっんんっ」
「いやらしくて淫乱なお前も、俺は好きだなっ」
「あ゛ああんっ! おま○こでいくっいくっあひっあっあああっあぁああ……ん、はぁ、ひっおま○こに、はぁっ、おちんぽ、いっぱいおま○こをいやらしく突いてっ」
「ほら、イケ! 中で出してやるからっ」
「あ゛っ、あ゛あっあ゛っひっ、らめっ、い゛あぁっあひっあっあっ……い゛っあんっあぅんっあ゛っあっあっあああんっ! やっあ゛っあぁっんあっあっイクっいっくっ!!」
 北里は山戸によって絶頂をさせられた。
 精液を吐き出したが、それをタオルが受け止めてシミを作っていく。
 全力疾走したくらいに息が上がってしまい、痙攣が治まった後は完全に身体の力が抜けた。
 セックスはスポーツだと言う人がいるが、まさにそうだった。
「は……あっ……んっ」
「大丈夫か……北里?」
 山戸がそう言いながら、北里の額を触っている。
 べっとりと汗が出ていて、髪が額に張り付いていた。
「だ、大丈夫……です……はっすごかったです……」
「お前は冷静だなぁ……まあ、大丈夫そうだし、もう一回付き合って、な?」
「……え、えええええ~~~~~!!」
にっこりと言う山戸のペニスはまたむくりと反り返って、勃起してきた。
 それを北里が感じた時にはまた山戸の挿入が始まってしまい、第二ラウンドに突入してしまった。
 その後は、風呂に入ってもセックスをしたし、布団で寝ようとしてもまたセックスをしてしまった。
 さすがに深夜になったら寝かせてくれたが、北里はぐっすりと何も考えずに眠ることができた。


 次の日に学校へ行くと、風見たちは問題を起こしたとして停学処分になっていた。
 そしてサッカー部の先輩たちが北里に絡んだとして、一週間の謹慎処分になった。
サッカー部は問題の北里に対する集団いじめが具体的に報告されて、三ヶ月の部活動停止と次の大会への出場を見送られてしまう。
 もちろんそれに不満を持っていたのは後輩たちであるが、その後輩も北里のせいでそうなったと言って北里の靴などを捨てたりといじめを助長させたために停学処分になった人もいた。
 部長は責任を取って退部してしまったが、それは教師からエスカレーターで進学したいならサッカー部を捨てろと言われたかららしい。責任を取ったふりをすれば、唯一被害者と和解した部長ならば進学もできると言われたのだという。
 北里はその部長には苛立ちもあったが、何もしなかった。
 山戸が言うには、ヘイトは部長の立ち回りの良さに向かっているらしく、北里に何もできないから部長への辺りが酷くなっているのだという。
 先導しておいて自分だけ綺麗に逃げ切る卑怯さは、我に返ったサッカー部部員には怒りの対象になったようだった。
 さすがに自業自得な部分もあるので、教師もなかなか助けられないでいる。

 時間は学園祭の一般入場当日に戻って。
 大騒ぎのままで学園祭は楽しめないままであったが、北里はクラスメイトに気を遣って貰ったので、クラスの出し物には参加せずに山戸が学園に持っている隠し部屋に入り浸ってのんびりと過ごした。
 特別棟は化学室などがあって危険であるから、一般も出入りはできないし、学生も出入りは禁止されていた。けれど誰かが見張っているわけではなく、ただ入り口に出入禁止や、関係者以外立入禁止と紙が貼られているだけなので、北里も見つからないように合い鍵でそこを開けて通ってきた。
 だから誰も来ないことをいいことに、二人は服を着たままでセックスに興じた。
 もちろん声を出すわけにはいかないので、声を殺してまぐわった。
 すっかり北里は山戸とのセックスに填まってしまい、山戸のペニスがアナルに挿入っていないと、本当にどうしようもないくらいに性欲が抑えきれなくなった。
「あぁんっ……あっあっ……おま○こ、おま○こずぼずぼされるの気持ちいいっ」
 ひそひそ声で喘ぐことも覚えたし、山戸にされることなら何でもできた。
「あぁあんっんっあっああっ、はぁんっ……あっいいっあぁんっ」
何度も絶頂をしても性欲は収まらないし、セックスはどんどん大好きになってく。
「あんっあんっあんっ、いくっいっちゃうっあっあ゛んっあああっあぁああっ! あひっあっひぁあーっ……」
「声、大きいけど、まあ誰も来ないしいいか……でもちょっと押さえてな?」
 そう言いながら椅子に座っている山戸は膝の上に乗せた北里を突き上げる。
 今日もクリーニングに出す予定だったメイド服でセックスをしている。帰りにクリーニングに出すからと言って、北里が女装すると山戸の興奮がまたましてしまった。
「あ゛あぁっ、あっんぉっ、いきそうっおま〇こ……ん゛ああぁっあっ、あ゛~~~っ」
「絶頂しっぱなしだな……すげえ、ドライでいきまくり」
 北里がどんな格好をしていても萌えるのだが、メイド服はこれが最後なので存分に楽しんだ。
 まして学園祭中にするセックスなんて一生に一度もないことだろうし、人の騒ぎ声が聞こえるようなところで、密かに盛っていることにも興奮できた。
「ん゛あああぁっ……い゛っ、い゛きたっ…おかしくなぅっ……おち〇ぽ、もっと激しく、おま○こ突いてぇっ……あ゛っ、んぉっ、あぁあっ、っ~~」
 何度も絶頂をして北里がくたくたになるまで二人はセックスに興じた。
 北里はこれで気持ちを切り替えられたので、その後にちょっとした騒動になってしまっても強い心を持てた。
 やがて山戸は卒業していったが、エスカレーターで同じ附属大学に通っているから、北里もそこに進学することにした。
 三年に進学すると、風見が学園を辞め、転校したことを知った。
 どうやら最後まで北里に対しての謝罪はなく、逃げるように辞めたらしい。
 それでも北里はもう風見のことは吹っ切っていたので、そうか逃げたかと思った程度だった。
 やはり北里の思った通り、一生わかり合うことは無理だったらしい。
 クラスは持ち上がりだったので、クラスメイトは察してくれたし、他のサッカー部員も数人が転校していたから、そこから卒業するまで何の被害もなく北里は過ごせた。
 山戸とは今でも付き合っている。
 北里は三年になってから親にはカミングアウトして、自分が同性愛者であることを伝えた。そして山戸と付き合っていること、どうしても好きで一緒にいたいと思っていることなどを伝えると、両親はあっさりと納得した。
 北里がいじめで苦しんでいた間に助けてくれた山戸なら大丈夫だと親はむしろ安堵したらしい。
 友達に裏切られた息子が人を嫌いにならず好きでいることができているのも山戸のお陰でもあったから、余計にそうだったようだ。
 だから、北里が大学に通い始めると一人暮らしを始めた。
大学から少し遠いので一人暮らしは理にかなっているのだが、それは両親から恋人との時間を優先させた方がいいだろうという気遣いだった。
 一緒に同棲するのはさすがにモラル的にまだ未成年なので認められないが、別に暮らしていてなら恋人に会うくらいは仕方ないという、親としての建前だろう。
 同棲するつもりなら就職してからと言われたのもあって、それが両親が譲れる最低ラインなのだと察して北里は従った。
 けれど土日は山戸に家に泊まり込んでいたし、頻繁に大学でも会っていたから、それでも良かった。
「今日も可愛いね、北里」
 山戸は今でもこういう冗談を平然と口にする。
 周りは山戸の恋人である北里として認識されている。
 最近はそうした抵抗感は若者にはないのか、大して問題も起きなかった。
「おはようございます、山戸先輩」
 今でも苗字で呼び合っているのは、外での体裁のためだ。
 後輩と先輩の関係ならば、関係を説明しなくても大体大丈夫で面倒くさくないという理由からだ。
 あとは、山戸も北里もお互いの名前を呼び合うのが、異常に恥ずかしいからできないでいるだけでもある。
 二人は駅で待ち合わせて、同じ大学に通う。
 家も近いけれど、こうやって時間で待ち合わせて通学するのも楽しい時間だった。
 だから不自由さも楽しもうという山戸の言葉に、北里も賛同していた。
「今日は焼き肉ですよ」
「そうだな、食べ放題の割引、見つけたから、ここな」
「あ、先輩、ナイスです」
「じゃあ、ここ予約、入れておくなー」
「はい、お願いします」
 二人はそう言いながら大学の門を潜った。
 これからたくさんのことが起こるだろうが、それはまた二人で乗り越えていく。
 未来はまだ見えないけれど、ゆっくり一歩ずつ歩いて行く。
 北里は一緒に生きていてくれる山戸の存在にただただ癒やされていたのだった。