ジキルでハイドな男-2

「……後で証拠はみせてやる。今は抱かせろ。もう我慢出来ない」
 こんな言葉を聞かされた所で、はい解りました、と言える人間がいたら、今すぐお目にかかりたいものだ。
 真継(まつぎ)は、このままじゃ本当にこの男に抱かれてしまうと、必死に抵抗した。しかし、凪(なぎ)の方も真剣そのもので、真継の抵抗を全て封じてしまう。
「嫌だ!! 凪さん!!」
 まるで物扱いのように抱えられて、ベッドがある寝室まで運ばれると、もう絶対に凪は犯る気満々だと真継にも解った。
 ベッドに真継を抱えたまま倒れ込んだ凪は、キスをしようとするのだが、真継が凪の顔を近付かせないように手で塞いでくる。
 苛ついた凪は、真継のTシャツの中に手を滑り込ませて、小さな突起を強く摘まみ上げた。
「あっ……!」
 真継は自分でも驚く程、高く甘い声が出た事に驚いてしまった。
 今の俺?
 驚いて抵抗する力が弱まった真継の隙を逃さず、凪は真継の唇を奪う。
 息をもつかせない激しいキスに、真継は翻弄されそうになりながらも、このままではいけないと、凪の唇に噛み付いた。
 痛みに驚いた凪が顔を上げたが、指で噛み付かれた唇を撫で、血が出ているのを見るとニヤリとして自分の血を舐め取る。
 凪は、真継の暴れる肩に手を当て、力を込めてベッドへと押し付ける。
「抵抗すると、酷い事になるぞ。大人しく抱かれてくれたら優しくする」
 低い声で凪が言った。
 この言葉を聞いた真継は、凪を睨み付けた。
「冗談じゃない!」
 真継が力一杯叫ぶ。
 すると、凪が押さえ付ける肩にある手の力が更に強くなり、真継は痛さに眉を顰めた。
「絶対抱くからな。10年も我慢したんだ」
 凪は言って、真継の身体をベッドにうつ伏せにし、Tシャツを完全にたくし上げ、その背中にキスを降らせていく。手はズボンのボタンを外しジッパーを降ろして、下着の中に滑り込んでいる。
 その素早い行動に真継も抵抗をし続けた。
「10年前なんか覚えてないって言ってんだ! あっ!」
 侵入してきた指が、真継自身を掴んでくる。
 反り返る真継の背中を凪の唇が這い、強く吸ってキスマークを残していく。
「綺麗さっぱり忘れてる真継が悪い」
 ぐっと、ズボンと下着を剥ぎ取ろうとした時、真継が叫んだ。
「仕方ないだろ! 10年前の記憶どころか、その前の記憶だって俺にはないんだ!」
 真継がそう叫ぶと、凪の手が弛んだ。
 部屋の空気が止まったかのように、言った真継も、言われた凪も動けなかった。
「記憶がない?」
 一体、何の事だという疑問を混ぜた言葉に、真継はすぐには答えられなかった。
 これを言うつもりはなかった。
 だから、出た言葉に自分も驚いていたのだ。
「真継?」
 凪が心配したように、真継を触って手を全て外した。
 支えられていた身体が力を失って、真継はベッドに倒れた。
 真継が何も言わないので、凪はじっとしたままで真継の言葉を待っていた。
 暫く沈黙が続いていたが、真継は、黙っている訳にはいかないんだろうと、諦めて話す事にした。
「……そうだよ。記憶がないんだよ」
 真継がそう言ったとたん、凪が真継の肩を掴んで顔を覗き込んできた。
「どういう事だ?」
 すごく真剣な顔に、真継は視線を反らして呟いた。
「それが解れば苦労しない。俺には、10年前、物心ついたから小学二年までの記憶がないんだ」
 本当にそうだった。
 真継には、10年前の過去の記憶が一切ない。
 思い出そうとしてもまったく思い出せない記憶。
 だから、凪が言う、10年前の小学一年生くらいに出会っていて約束したと言われた所で、真継に思い出せるはずもない。思い出したくても思い出せないのだから。
「真奈さんは何て?」
 母親の真奈が精神科医である真奈が、真継の無くした記憶をそのまま放置しておくとは思えないと凪は思っていた。
「教えてくれない。知ってるとは思うけど、俺が記憶を無くすくらいの何があったのか。それは絶対に教えてくれない」
 真奈は、無くした記憶について、何の説明もしてはくれなかった。
 真継も昔は物忘れか、記憶力が悪いんだと思っていて、さほど思い出そうとはしなかった。真奈に聞けば、あんたはこうだったわよ、という話をしてくれたからだ。
 祖母も同様で、ずっと一緒に暮らしていたといい、記憶がないのは、一回思いっきり頭を打って、それまでの記憶が無くなったと説明していた。
 しかし、その綻びが見えたのが、祖母が亡くなった時。
 近所のおせっかいな人が、祖母が真継を預かったのは、真継が小学二年の時だったと言ったことからだった。
 じゃあ、それまで自分は誰と暮らしていたんだ?
 真継はそう思っていたが、母親には聞けなかった。
 それは、記憶がない頃の写真が一枚もなかったからだ。
 母親と一緒に暮らしてれば、記憶がない頃の写真くらい一枚でも残っているはずだ。見せたくなかったとしても、何処かにあるはずだ。
 産まれた時のだとか、成長記録くらい。
 だが、それが一切ない。
 まるで、真奈までもが、その頃の記憶を封じてしまいたいかのようだった。
 だから、聞けなかった。
「それで引っ越したのか……」
 凪は、一人で納得していた。
「え?」
 真継が顔を上げると、凪は身体を起こして真剣な顔で考え込んでいる。
 暫く考えていた凪が、ふっと視線を上げて真継を見た。
「解った。取り合えず、それを話す事にしよう」
 凪が一人で話を進めてしまうので、真継にはさっぱり意味が解らない。
「凪さん?」
 真継が身体を起こすと、凪が真継の頭をクシャクシャと撫でる。
「真継が覚えてない時の事。ちょっと待て。アルバムがある」
 凪はそういうと、ベッド脇に置いてあった本棚から古いアルバムを取り出してベッドへ戻ってきた。
 それを広げて真継に見せた。
「これ、真継」
 そう言って見せられた写真。
 それは、小学生の真継が写っているものだった。
「これって、俺……」
 真継すら見た事がない写真。
 家には一枚もない、記憶を無くした頃の写真だ。
 凪は真継の隣に座って、写真を指差して説明した。
「そう。これは遠足で、六年生が一年生の世話をしなきゃいけないヤツで、俺が真継を担当したんだ」
 嬉しそうに話す凪だが、真継は写真に釘付けだ。
「可愛くてなあ。無茶苦茶懐いてくれて」
 そう言われて見る写真は、明らかに真継の方が凪に懐いている。
 手を繋いでいるのや、抱きついてる写真ばかり。
 極め付けなのが、真継が凪の頬にキスをしているのまである。
「これって……」
 真継が指差したのは、真継の方から凪の唇にキスしている写真だ。
 まさに衝撃的な写真。
 凪の母親が撮ったらしい写真で、その下には、「真継ちゃんからのキスで、凪が照れまくり」と書かれてある。
「この時に、真継が約束してくれたんだ」
 そう言って、凪が取り出したのが、幼い字で書かれた契約書。
 そこには。
 たかしままつぎは、くずがみなぎが、せい人したら、
 なぎさんの物になることをちかいます。
 すきです。だかれてもいいです。
 と書かれてあった。
「………………」
 間違いない、俺の字だ……。
 真継はその契約書を見て固まっていた。
 当時の俺って、絶対意味が解ってなかったと思うよ。
 というか、とっても危ない小学生じゃん……。
「な、ちゃんと契約書まであるんだぜ」
 凪が言っていた証拠とはこれの事だったのだ。
 子供が残したものであっても、凪にとっては今も有効な約束事なのだ。
「真継?」
「む、無効だ!」
 真継が叫んでそれを引っ張って破いてしまう。
 しかし、凪は破れた契約書を見てニヤリとして言った。
「それ、コピー。本物は別の所にあるし、コピーなら山程持ってる」
 凪が言って、引き出しから紙束を出すとそれを放り投げた。
 散らばる契約書。
 そこに凪が新たに数十枚ものコピーした契約書を投げて散らばらせた。
 降り注いでくる契約書のコピー。
 真継は唸るしかなかった。
 確かに凪ならこういう用意周到な所があるだろう。
「本物を渡すわけないだろ。あれは絶対誰にも見せない」
 凪の手がふっと真継の頬に触れた。
 凪はクスクス笑っている。
 コピーが沢山あって、本物がない。
 これだけのコピーを作るという事は、本物は本当に何処かに隠しているのだろう。
「やっぱり無効!」
 真継は言って、コピーの山の間を駆け出した。
 だが、それを逃がす凪ではない。
 すぐに腕を掴んでベッドへ押し戻した。
「ふざけるな。だったら俺の10年分を清算してもらうぜ」
 凪の目が真剣になり、真継に馬乗りになり、腕を押さえ付けてキスをしそうなくらいにまで顔を近付けてきた。
「勝手に探してただけじゃないか!」
 真継は凪を睨み付けた。
 すると、凪の瞳の色が変わる。
「ふーん。じゃ、勝手にする」
 そう言った凪は、すぐに自分の思い通りに行動し始める。
 さっきまで滅茶苦茶にされていたTシャツの中に、また手が這い回り、更に露になった真継の胸の突起に、凪が吸い付いてきた。
「……っ! やっ!」
 自由になった両手で凪の頭を掴むが、凪の力には適わない。
 背中が反り返ると、そこに手が這い、それが下へ進んでズボンの中に入り込み、尻を掴んできた。
 真継は、どうやって男同士がセックスするのかを瞬時に思い出し、慌てて叫んで凪を止めた。
「ちょ、ちょっと待った!」
 真継の言葉に、凪が顔を上げたが、指はまだ動いていて、突起を捏ねたり、尻を撫でたりしている。
「何を待つって?」
 とりあえず、凪が話を聞いてくれそうな感じがしたので、真継は身体が熱くなる感覚を懸命に押さえながら説明をした。
「あの……約束したのは、俺なんだろうけど。俺、覚えてないから……。待って欲しい」
 真継の言葉に、凪は小さく溜息を吐いて、動かしていた手を止めた。
「思い出せないじゃないか」
「だから、思い出したいんだ」
「同じだ」
 真継が思い出そうと努力すると言っているのに、凪はそれを完全否定した。
「何で!」
「思い出したって、この誓約書に書かれている事は何も変わらない」
 いやにはっきりと言い切られて、真継は凪を睨んで言い張った。
「何も覚えてないのに!」
 懇願するように言った真継を凪は冷たい目で見ている。
「何? 思い出したらさせてくれるわけ?」
「それは……」
 それとこれは違うと言おうとしたが、凪がそれを遮った。
「思い出す出さないは関係ない訳だ」
 ただ嫌だから、言い訳して逃げようとしていると感じた凪は、止めていた手を再度動かし始めた。
 もう本当に何を言っても凪は聞いてはくれない。
 真継にとっては記憶にない事でも、凪にとっては、それは重要な事柄で、真継の記憶が戻るのを待つ程の余裕はないのだ。
 真継は凪から与えられる感覚に真継は必至に抵抗した。
 だが、心が拒否している限り、凪を受け入れる事は出来ない。
 抵抗する真継。凪は圧倒的な力で押さえ付けてそれを封じた。
 口から漏れる、自分の声とは思えない声を、真継は強く歯をくいしばって必死に堪えている。身体は恐怖に震え、小刻みに揺れている。
 真継を見つけ出したら、相手が覚えてなかろうが絶対抱けると思った。
 触れたくて抱きたい。
 無理矢理でも抱ける。
 ……何故、真継は俺を忘れてしまったんだ。
 そんな感情が湧いて、真継を抱く力がより一層強くなる。
 ここにいるのは、昔の真継ではない。記憶のない真継。いや、もう別人と言ってもいい。自分が追い求めてきた人物ではあるが、まったくの別 の記憶を持つ人物。
 それでも、真継が真継であるのには変わりない。
 だが、このままじゃ、また逃げられる。
「逃げるなよ……」
 凪は呟いて、一層深く真継を自分が与える快楽に落として行く。
 身体中にキスマークをつけ、手を這った後を唇が追う。
 胸の突起に辿り着くと、既に立ち上がっていて、指で捏ねると真継が身体をくねらせた。
「ん……あっ!」
 堪え切れなくなった真継が声を洩らした。
 感度がいい反応に、凪はニヤリとした。
「もっと声出せよ」
 耳を舐め、低い声で囁くと、真継の身体がピクリと震える。
 すぐに抵抗を思い出したように、凪の顔を退かせようと手で押し戻そうとする。
 凪はすぐにそれを押え、真継のズボンから抜き取ったベルトで手錠の鎖とベッドの枠柱とを括り付けた。
 これで真継は完全に逃げられない状態になってしまった。
 縛られた事に気が付いて腕を振り上げるが、それは無駄な事だった。
 凪は真継の性器に手を伸ばして軽く握った。
「やっ! ……凪さ……っ!」
 自分以外が触った事もない場所に他人が触れるという衝撃に真継は背筋を反らせた。
「嫌じゃねえよな。ちゃんと立ってるしよ」
 凪は言って、親指と人差し指で先端をぐりぐりと弄る。
「あっ! やっ! んん……!」
 嫌だと言いたいのに、開いた口から洩れたのは、甲高い甘い声だった。
 凪はゆっくりと真継の性器を扱き始める。
 自分でやるのとは違う、それでいて不快感がない動きに、ぞくぞくとした熱が身体の深部から沸き上がってくる。
 追い上げられて真継の身体が跳ね上がる。
 首を振って抵抗しようにも、凪の手の中で真継の性器は反応していて、甘い蜜を滴らせていた。
 静かな部屋に、真継の甘い声と、淫らな湿り気のある音だけが響いていた。
「あぁっ……やぁあ……」
 真継の瞳には自然と涙が溢れてきた。それが、この行為が嫌で出たものなのか、それとも快感からくる自然な生理現象なのかは解らない。
 凪は張り詰めた真継の性器を扱くのを急に止め、そこへ頭を埋めた。
 一瞬、行為がやんだので、真継は薄らと目を開けて見た。
 すると、凪が真継の性器を口に含もうとしていたのだ。
「や! 凪さん!」
 真継が叫んだ時には、凪の濡れた口腔が先端を含んでいた。
「ああっ!」
 凪の口が真継の蜜を吸い上げる音が生々しく響いた。
 舌の先で包み込むような動きに、真継は顎を反らせた。
「あ……んっ……!」
 初めての経験で、真継は簡単に凪の口に精を放ってしまった。
「ん……」
 凪は一滴も零さないように、それを飲んでしまう。満足気に微笑んで、口から垂れた液も、舌で舐め取り、指に絡んでいたものさえも全て舐め取っていく。
「はぁ、はぁ……」
 真継が荒い息をしながら、ベッドに身体を沈めると、凪が動いてサイドテーブルからローションを取り出した。
 それを手にたっぷりと取ると、グッタリしている真継の足を大きく開いた。
 抵抗する力を失っていた真継だが、ヒヤリした感触にビクリと身体を震わせた。
「な……っ! 何!?」
 凪は、指で真継の入り口の周辺をゆっくりと撫でた。
「何って入れる準備。やっとかないとかなり痛いからな」
「嘘! 嫌だ!」
 真継は残りの力で必至に抵抗するが、凪は真継をベッドに俯せにし、腰を高く突き上げさせると、身動きが出来ないように、自分の膝で真継の両足を踏み付けて強い力で押さえ付けた。 
「痛っ!」
「暴れるからだ。じっとしてれば優しくしてやる」
 凪は淡々と述べると、ゆっくりと温かい身体の中へと指を一本沈めた。
「!!」
 異物感がいきなり入ってきた感触に、真継の身体は硬直してしまう。
「やっぱ、きついな」
 ゆっくりと、内部を傷つけないように、慎重に凪は指を奥まで沈めて行く。
「……痛い! 嫌だ! 気持ち悪い!!」
「全部入ったよ」
 凪は指の付け根まで指を納めていた。
「凪さんっ!」
 ボロボロと涙を流して、不快感を露にする真継に、凪は空いている手でまた性器を掴んで扱いた。
「あ! やぁっ!」
 さすがにこの行為には、男であれば誰に耐えられるものではない。
 一旦治まっていたモノが、一気に膨れ上がる。
「んっ!」
 性器を扱きながら、凪は埋めた指をゆっくりと動かし始める。
 堅い指に内部を広げられる。異物を押し出そうとする腸壁の動きを無視し、ローションで濡れた指が出入りを繰り返す。
「……ぁ、痛……ん」
 痛い感覚と、快感とが入り交じり、真継に抵抗する力も気力もなくなってしまった。
 左右に回しながら、指が突き入る。
 次第に痛みは消え、生々しい音が響いている。
 凪は、一回指を引き抜き、再度ローションを付けて今度は二本にしてまた挿入した。
 大きくなった異物感に、真継の身体は硬直する。
 それでも指はゆっくりと中へと侵入し、奥へと辿り着く。
 ゆっくりと出入りを繰り返す。
 真継の前立腺を探り当てて、そこを攻め続ける。
「あ! ん、あぁ! ……ぁん……っ!」
「ああ、ここか。それと、ここ」
 真継が感じる所を執拗に転がすように弄り、収縮する穴が凪の指をきつく締め付ける。
 全ての快感の場所を覚えて行くかのように、凪はゆっくりと真継の身体を開発していく。
「ん、あぁ……ぁっ!」
「そろそろいいか」
 いやらしい音を立てて凪の指が唐突に遠ざかる。
「ん……」
 いきなり圧迫感が消え、そこは淫らな収縮を繰り返している。
「悪い、もう俺の方が我慢出来ねぇ」
 凪は着ていた服を一気に脱ぎ捨てた。
 何をしているのかと、潤んだ瞳で真継が凪を振り返る。
 すると、凪が堅く張り詰めた性器に軽くローションを擦り付けていた。
 凪の性器は真継のモノとは違い、太く、恐ろしげな形で屹立していた。
 まさか、あれを?
 真継はそれを目にして、身体が震えた。
 あんなものが入る訳ない。
 逃げようとする真継の腰を凪が掴んで更に高く突き出させる。
「本当は、顔が見える方がいいんだが、こっちの方が楽だろうからな」
 そういうと、熱い塊を尻の谷間にゆっくりと擦り付ける。
「満足出来るように優しくするから抵抗するな。じゃないと痛い思いするのはお前だぞ」
 凪は、振り返って見る真継を冷たい目で見据えて言い放った。
 それは真継にとっては十分脅しになった。
 凪はゆっくりと堅い性器を入り口に押し当てた。
 きつくなっている入り口を先端が無理矢理に押し入ってきた。
「いっ!痛いっ! 痛い!」
 引き裂かれるのではないかと思う程の痛みが真継を襲った。
 身体が痙攣し、まだ先しか入ってない凪を締め付ける。
 さすがに、一気に沈める事は出来ずに、凪は舌打ちをした。
 挿入角度を確かめるように、腰を引き、抜ける寸前で先程よりも少し深く挿入した。
「!」
 真継はボロボロと涙を流して、首を振り続ける。
 柔らかな粘膜を押し広げられ、真継は痛みと苦しさに息を止めた。
「すぐよくなる。喘がせてやるから少し我慢しな」
 凪は無理矢理でも最初は仕方ないと、途中で止めていたモノを一気に突き入れた。
「あぐっ!」
 激しい痛みが真継を襲い、目を見開いた。
 いっぱいに広げられた入り口が、避けそうに痛い。
 それでも真継の腸壁は、凪を締め付けている。
「……すげえ。絡み付いてくる」
 深く突き刺したままで、凪は真継の背中にキスをした。
 凪は暫く治まったままで、真継の中を楽しんだ。
 痛みはあるが、苦しさが薄らいできて、真継はやっと荒く息をし始めた。
「……はぁ、はぁ、痛……い……抜い……て……」
 懇願する声は小さく、掠れてしまっていたが、凪には聴こえていた。
 それでも凪は聴こえないフリをして、真継の性器を掴んで扱き始めた。
「や! あ!」
 意識がそこへ集中すると、腸壁の方が少し弛んで、凪が動きやすい状態になった。
 凪はゆっくりと腰を動かし始めた。
「あっ! いやっ! 痛っ!」
 苦しそうに喘ぐ真継の声を凪は無視した。
 さっき探り当てた場所を集中的に攻めた。
「ん……ぁあ……ん」
 すると、痛がっていた真継の声が、段々と快感を感じている甘い声へと変化していく。
 ローションのお陰でスムーズに動き、とうとう真継は痛みを忘れて、ただ与えられる快楽に身を落としてしまっていた。
 深い部分に突き上げられる動きに、真継は快楽を示して身体を反らせる。
 出し入れを繰り返す度に、解れてきた内部が凪を味わうように音を立てる。
 凪の強引な動きに合わせて、真継が官能な仕種を見せる。
「あっ! んん……ぁ、あぁ……やぁっ!」
 真継は自分が達きそうな感覚に、一瞬我に返ったが、堪える間もなく精を放ってしまった。
 真継が精を放った瞬間に痙攣した内部に締め付けられた凪も、荒い息を噛み、真継の中に精を放った。
 そのまま真継は気絶し、ぐったりとベッドに身体を沈めた。
 動かなくなった真継の上に凪も崩れた。
 まだ、凪は真継の中に治まっていたくて、抜かないままにしていた。
 凪は手を伸ばして、真継の顔を自分の方へ向けると、涙で濡れた頬を舐め、唇にキスをし額にもキスをした。
 愛おしそうに顔を眺め、髪を梳き、それから真継を抱き締める。
 やっと真継をこの手に抱けた。
 その喜びだけが今はこの胸にある。
 だが、この一回の為に、真継を手放す気は凪にはもうなかった。
 10年探し続けた意地ではなく、この身体を知ってしまったから、余計に手放せなくなってしまったのだ。
「真継……」
 凪はそう呟いて、真継の身体を力一杯抱き締めた。

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