switch101-80 ベルリンの壁

 俺が透耶を好きと言ってから一ヶ月。

 それくらい経っているのに、透耶は答えてくれない。

 嫌がる透耶を無理矢理抱いて、俺無しでは生きて行けないようにしてる。

 それでも透耶は時々何処か遠くへ行ってしまいそうになるんだ。

 甘くして、優しくして、今までの俺とは想像出来ない程、俺の持てる全てを透耶に見せてきた。

 でも、透耶は俺と深く関わる事を恐れているかのようだ。

 やっと隣でゆっくりと寝てくれるようになった透耶。

 俺の隣には、すやすやと眠る透耶がいる。
 癖になったのか、俺の懐に入って眠ってくれるようになった。

 ここまで可愛い事をしてくれるのに、まだ心は開いてくれない。

 何か言いたそうにしているのは解る。

 でもそれが、口から出てくることがないのは、何か重要な事なのだからだろう。

 それを受けれる準備は出来ている。
 透耶が言うことなら何でも聞く。

 聞かせて欲しい。
 透耶の心の声を。

 透耶が寝返りを打って離れたところで、俺はベッドから抜け出した。

 窓際でタバコをふかせながら透耶を見る。

 好きな人が見つかって、自分だけ幸せな気持ちになっている。

 透耶はどうなんだろう?

 俺の事、どう思っているんだろう?

 少しは好きでいてくれるから逃げるのをやめてくれたのだろうか?

 嫌がるけど、最近は受け入れてくれている気がするのは、気のせいなのか?

 透耶の事好き過ぎて、勝手な事をしていると思う。

 でも、誰にも透耶を渡したくないんだ。

 タバコを吸い終わって、またベッドに潜り込む。

 すると、透耶が寝返りを打って、また俺の懐に入ってくる。

 モゾモゾと動いて、指定の場所に収まると、安堵したかのようにまた深い眠りに入ったようだ。

 俺は透耶を抱き締めて目を瞑る。
 やっと手に入れた安眠出来る場所。

 透耶も同じだと嬉しい。

「透耶、好きだよ」
 俺は透耶を抱き締めてそう言った。

 こうやって好きという言葉を透耶の中に沢山詰め込む。

 ずっと先でもいい。

 いつか透耶から好きだと言ってもらえるようになればいい。