switch101-78 鬼ごっこ
「待て透耶!」
「やだー!!」
ガタン、ドン!
何やら物凄い音が聴こえてきました。
いつものことながら、中々騒々しい事でございます。
恭一様と透耶様が痴話喧嘩をしているのでございますよ。
大体は、恭一様の突飛な発想を透耶様が嫌がって逃げているという感じなのですが、今日は何でこざいましょうか?
お声は二階からですが、透耶様は何とか逃げ切っているようで、一階まで降りて来られました。
「どうかなさいましたか?」
私とはち合わせになりましたもので、息弾んでいる透耶様に原因を聞こうとしました。
「恭が!」
そこまで言ったところで、恭一様が降りて来られたので、透耶様は走って逃げてしまわれました。
そしていつものように書斎に篭ってしまいます。
こうなると、恭一様には難しくなってしまうのです。
無理矢理鍵をこじ開ける状況ではないらしく、恭一様は溜息を洩してドアの前に立っていました。
暫く黙っていて恭一様は切り出されました。
「透耶、もう言わないから」
ドアに向かって謝っている様子です。
「やだったら、やだ!」
これはこれは。
取り付く島がありません。
余程な事を恭一様は言ったようですね。
「絶対、二度と言わないから、な?」
なんとか宥めようとしてらっしゃいますが、岩戸は中々簡単には開きません。
恭一様も頑固な方なのですが、透耶様も頑固な方なので、意見が食い違うとこうなってしまうのです。
でも、大体は大した理由でもないのですが。
それが困ったところです。
閉じこもられて約10分程。
恭一様が完全に折れたところで、透耶様が出てこられるのです。
「もう変な事言わないでよ」
まだ疑っているのか、ドアを少しだけ開けた状態で透耶様が聞いています。
「もう言わない」
恭一様は何度も頷いて宥めてます。
いつもながら、恭一様も透耶様も学習なさいません。
困った事に、次の日にも同じ事を繰り返す事もしばしば。
私も口を挟むのは野暮な事という気がしまして、最近は成り行きだけ見守っている状態です。