switch101-59 グランドキャニオン
「グランドキャニオン行った事あるんだ!」
俺は、恭の写真を整頓しながら、そこにあった写真に釘付けになった。
明らかにグランドキャニオンらしき場所を映した写真。それが無造作に詰められた袋をひっくり返した所だった。
恭は本当に自分が撮った写真には興味がないらしく、どの写真も無造作に置かれている。それを整頓している途中だった。
その写真はあの谷の壮大な姿を見事に映していた。
「凄い…」
こんな言葉しか出てこないのは失礼かもしれないけれど、その言葉しか浮かんでこないんだ。
「ああ、それか。二日くらいかけての小さい旅行に行った時に撮ったんだ」
恭は別の写真を片付けながらそう言って来た。
そんな簡単なモノじゃない。
元々恭の風景写真は半端じゃなく綺麗なんだ。
俺が映したらただの写真なのに、恭が撮るとまったく違う芸術のモノに変わってしまうくらいにその力が違うんだ。
その力を見せつけられた写真だ。
「気に入ったなら、引き伸ばすか?」
俺が写真に見入っていたので、恭がそう言い出した。
「え? いいってば。そんないっぱい引き伸ばしても飾りきれないよ」
俺は慌ててそう言った。
家の壁とかに飾る写真にと、色んな風景写真を引き伸ばしする約束を何枚もしていた所だった。
恭の写真は綺麗だからどれも飾りたいけど、もう引き伸ばす写真はいっぱいになってるはずだ。
これ以上見とれてたらまた引き伸ばすとか言われそう。
俺は、慌ててグランドキャニオンの写真を買って来たアルバムに差し込んだ。
そうしないと、また他の写真でも見とれてしまってまた同じ事の繰り返しになってしまう。
恭も手が止まってしまうから駄目だ。
写真を早く片付けないと引っ越しが出来ない。
俺はやっと頭を切り替えて写真整理にせいをだした。