switch101-45 年中無休

 透耶の仕事には休みがない。

 好きな時に仕事をして、締め切りに間に合えば仕事の時間はないに等しい。
 それなのに、透耶はしっかり毎日仕事をしている。

 出かける用事がない限りは、毎日やっている。
 それも昼起きてから寝るまでみっちりやっている。

「少し休めば?」
 と俺が言えば、透耶は首を振る。

「もうちょっと、ここどうにかしたい」
 そう言って一向にやめようとしない。
 痺れを切らした時は、本気で止めるのだが、こうなると透耶の思考は小説の世界に入ってしまうのだ。

 それこそ、エロい事でもしないと思考を戻す事が出来ない。
 
 仕事人間過ぎる。
 手塚に聞けば、何年も本を出さない作家だっていると言う。

 透耶に締め切りがあるのは、雑誌の連載だけであって、新しい新書の発売には、十分な作品と量 があるんだそうだ。
 毎日しっかりやっていたから、透耶の連載分の仕事はもう済んでいる。

 それでも売れっ子らしく、別の雑誌に読みきりなどの話が舞い込んでくる。
 別の雑誌社などとも打ち合わせして、月一本の読み切りを書いている。

 合計すると、月一本の連載、月一本の読みきり、そして三月に一回の新作新書。
 これが今の透耶の仕事。
 透耶は締めきりがあれば、しっかり守る上にそれ以上の仕事をこなすので、出版社からの信頼もあり、仕事が増えていっている。

 別の出版社でも書籍の本が出る準備がある。
 他にも文庫だとか…。
 デビュー仕立ての新人には有り得ない仕事量なのだ。
 
 さすがにこれはもう止めなくては。
 俺はそう思って透耶の仕事を止めた。

「透耶、もう仕事終わりだ、終わり」
 俺がそう言うと、透耶はハッとしたように顔を上げた。

「あ、ごめん」
 これは俺がいる事すら忘れて没頭していたから謝っているのだ。
 でも、今日の俺は意地悪だ。

「機嫌損ねた」
 そう仏頂面をして言ってみる。
 すると、透耶は俺の側まで来ると、首を傾げて言った。

「ごめんね、恭。どうしたら機嫌直してくれる?」
 そう聞かれても、俺はまだ仏頂面のままで言った。

「キスだけじゃ直らない」
 俺の言葉を受けて、透耶は少し顔を赤らめた。
 意味は通じたみたいだ。

「あのね。連載分の仕事は終わったんだけど。それで、その…してもいいよ」
 透耶は恥ずかしそうにそう言って来た。
 
 本当にいつまでもこういう事は恥ずかしがり屋で、はっきりして欲しいと言われた事は数度しかない。(一度は透耶は覚えてないし)

「エロい事していい?」
 俺がそう言うと、真っ赤な顔をした透耶がムッとして俺を睨んで来た。
 そういう所も可愛いんだけどなあ。

「何で、そんな言い方するの…」
 透耶は怒って言い返したが俺は更に言い返した。

「じゃあ、透耶とセックスしたい。透耶の中に入りたい」
 俺はストレートに言った。

 そう俺は飢えていた。
 透耶の連載の仕事が終了するまで、セックスお預けになっていたからだ。
 仕事が終わったと告げた事を透耶は今後悔しているだろうなあ。
 真っ赤な顔が怒ってくる。

「どうしてそう言う言い方するんだよ!」
 恥ずかしくて仕方ないという怒り。
 俺の言い方も悪いんだけどな。

 怒っている透耶をさっと抱き上げて二階へ向かう。
 驚いていた透耶は、慌てて俺の首にしがみついてくる。
 こういう感じは好きだな。透耶が怖がって甘えてくるのは嬉しいし。
 すると、透耶が静かにこう言った。

「ごめんね、したくないんじゃないんだ…」
 小さな声だったが、しっかり俺には聴こえていた。

 透耶だって俺に抱かれたくない訳ではないと確認すると、もう俄然やる気が出てしまう。
 仕事疲れもあるだろうし、今日は滅茶苦茶やって透耶をしっかり寝かせよう。