switch101-39 オムライス

 今日は昼食に透耶が食べたいと言っていたオムライスを出した。

 書斎で仕事をしている透耶を呼んで、さあいざ食べようとすると、透耶は冷蔵庫から出してきたケチャップを持って、何やら難しい顔をしている。

「どうしたんだ?」
 俺がそう聞くと透耶は。

「え? だってこれかける時って、何か絵とか文字とか書きたくならない?」
 透耶は笑ってそういう。

 ケチャップで玉子に絵を書く?

 そんな事をした事はなかったので、俺は不思議でならなかった。

「そんな事するのか?」

 普通にかけてるだけだと思っていたのだが。
 透耶はそれでも真剣に何をするのかと考えているらしい。

「昔、よく光琉と文字にするか絵にするかって考えてたのが楽しかったよ」
 透耶は笑ってそう教えてくれた。

 俺はそうした事をした事なくて、ただ出てきたモノには初めからケチャップがかかっているのが普通 だと思ってたから新鮮な感じで聞けた。

「で、何にするか決まった?」

 このままでは夕方まで悩みそうなので、そう聞くと透耶はうーんとまだ唸っている。
 こりゃ、本当に夕方になりそうだ。

「透耶ちょっと貸して」
 俺は透耶が持っているケチャップを取り上げた。

「何するの?」
 透耶は不思議顔。

 そこに、愛している、と日本語で書いてやった。

 ニヤリとして透耶を見ると、透耶は真っ赤な顔になっていた。

 こういうの恥ずかしがるよな…ほんと可愛い。

「は、恥ずかしいよ…」
 別に誰かが見ている訳ではないのに、透耶は恥ずかしがって小さくなっている。
 俺は更にいじわるをしてみた。

「こっちにもそう書いて」
 そう言って自分の分のオムライスを透耶の方へとやった。

 透耶がまさかそうされるとは思わなかったのか、更に真っ赤になって慌てている。

 本当に可愛い。

 書いてくれないと食べれないという風な態度でいると、透耶は観念したのだろうか、ケチャップを持ってゆっくりと書き始めた。

 その文字は「I LOVE YOU」だった。

 本当に書いてくれたので嬉しかったが、これ食べるのもったいないなあ…。

 そう思ってたら、すぐに透耶がスプーンで文字を消してしまった。

「恥ずかしくっていつまでも食べられないよ」

 そう言った透耶はそっぽ向いていたけど、耳まで真っ赤だった。