switch101-13 深夜番組

 透耶はよくテレビを見る方だ。
 意味なくつけている時もあるし、笑いながら観ている時もある。

 大体好きなのが、お笑いで、よく笑っている。
 だけど、俺が一緒にいると、テレビに集中出来ないらしい。
 まあ、悪戯するからテレビ所じゃないしな。

 最近は、夜遅くまで起きていて、深夜番組とか言うのを観ている。
 お笑いはお笑いでも、マニアックな方らしく、俺には何処が笑いのツボとか言うのか解らない。
 それでも透耶は笑う。
 よーく観ても解らない。
 
 こういう時は、透耶は俺の声も耳に入らないらしい。いや、入っているけど、聞き流されている。

 ある日、透耶は深夜のドキュメンタリーを観るとか言っていたので、俺は仕事部屋で写 真の整理をしていた。
 没頭していたので、気が付いた時には、もうその番組も終わっている時間だった。

 さっさと後片付けをして、リビングを覗くと、透耶はまだソファに座っていた。
 テレビは、深夜の映画特集に変わっていて、透耶はそれを観てはいなかった。

「透耶?」
 呼び掛けると、透耶が伏せていた顔を上げた。

「え? 何で?」

 透耶は泣いていた。
 ボロボロと涙が溢れて、まったく止まる様子がない。
 俺はすごく慌てた。

「どうしたんだ?」
 優しく言って、隣に座り透耶の顔を覗き込んだ。
 透耶は俺を見上げたままだったので、涙を口で吸い取ってみた。
 いつもなら抵抗されるだろうに、今日はそれがない。

 中々、理由を言ってくれないので、抱き寄せて背中を摩ってやると、安心したのか、身体の力が抜けていくのが解った。

「何かあった?」
 俺がもう一度理由を聞くと、透耶は答えた。

「…人の10倍も速く、年を取っちゃう子が…すごくて、強いんだ。それで、感動しちゃって…。俺、死ぬ 事ばっかり考えてたから、悪いって…死にたくないのにね」 

 そういう事をいう透耶。
 ドキュメンタリーの内容が、そういう内容だったらしい。

 つまり、テレビ番組で、感動して泣いた訳だ。
  
 何だ…びっくりした。
 もっと大変な事があったのかと思ってしまった。
 だからといって、これを言う訳にはいかない。

「そうか、透耶は優しいな」
 俺は当たり障りない事を言って、透耶を慰める。

 しかし、透耶は何故かこういう時は勘がいい。

「…今、そんな事かとか思ってるでしょ」
 
「思ってない。可愛いって思った」
 まあ、それは事実だし。

「んな、言葉で誤摩化すな」
 透耶は怒って、俺から離れようとする。だけど、折角のチャンス。離す訳にはいかない。
 面白いから、そのままソファに倒して押さえ込んだ。

 透耶が驚いた顔で見上げていたが、考える隙を与えないでキスをする。
 深いのをしてみると、透耶の抵抗はすぐやんでしまう。

 唇を解放すると、透耶は荒い息をしながら、散々文句を言った。

 変態、変人、エロ魔人、馬鹿、アホ…もう何だっけ?
 よくそれだけレパートリーがあるもんだ。

 まあいい、何でも。
 透耶が抱ける口実さえあれば。