君に触れたい-5その、心
家に帰ってきても誰もいない。母親は看護士の仕事が今日は夜勤だったため、今時間はいない。元晴の母親も会社経営で忙しく、最近は会社に泊まり込みをしているらしい。なのでここ志音の家にいるのは二人っきりである。
二人はなだれ込むように志音の部屋に入ってベッドに座った。元晴はすぐに志音にキスを何度もしてきた。
元晴のキスは気持ちいいものだった。身体が震えてしまう。今まで手の届かない存在だと思っていた相手に思いが伝わってキスをしてもらっている。それも何度も。
元晴は志音をベッドに寝かせた。そして上から覆い被さってまたキスをしてくれる。それが優しい。キスをしながら志音の服を脱がせていく。この先何をするのかは分かっている、そこまで初心じゃない。期待している部分もあるがなにせ初めてなので戸惑う。
「緊張してる?」
頬にちゅっとキスした元晴が尋ねる。
「あ……ちょっと……心臓が出てきそう」
志音がそういうと元晴は志音の手を取って、自分の胸に当てて見せた。
「俺もな」
そういう元晴の鼓動は早く、同じく緊張しているのだと伝えてきた。
「……同じ」
「そりゃね」
元晴は笑うと志音の首元にキスの嵐を降らせる。強く吸ったり、痕を残すようなそんな強いキス。そして手は志音の乳首をいじってくる。初めはゆっくりと撫でるだけだったが次第に強くはじくようにいじりだし、最後にはそこに唇をよせて吸ってきた。
「あ……ん……ぁ」
普段そんなところが感じるなんて思いもしなかった。こんなにドクドクと心臓が早くなって息も荒くなって行くのは初めてだ。身体が熱くなってくる、どうしようもないくらいに。
「ひゃ……そこは」
うっとりとしていた志音が我に返った。元晴の手が志音のズボンの中に入ってきて志音自身を掴んできたからだ。そこはすでに熱くなっていて立ち上がっている。
「うん、ちゃんと気持ちいいって言ってるな」
そういって元晴はズボンを脱がせて下着も脱がせた。全裸になった志音を見て、細いからだだなと思う。ゆっくりと体中を撫でてなめて、そして最後に中心に達する。
「ああ……だめぇ……」
志音が必死に隠そうとしているそこはすでに立ち上がっていて、甘い汁を出している。少し扱いてやると志音の身体が反り返った。
「あああ!! だめ、そんなにしちゃ……ん……」
頭の中が真っ白になってくる。こんなところは誰もさわったことはない。志音も淡泊な方だったから自分でもあまりしたことはない。だからこれがこんなに気持ちいいとは思わなかったのだ。
好きな人に触られてこんな淫らな声を出してしまう。それでも気持ちはいい。でもそこが痛いほど痺れてきていってしまいそうだった。
「だめっ……あああ!! んっ……」
「ちょっと待てな」
そういうと元晴は志音自身を口に含んでしまったのだ。志音は慌てた。自分はもう達してしまいそうなのにそんなことをされたらたまらない。
「やあああ!! いっちゃ……いっちゃう……よ」
志音は身体をひねられてなんとか逃げようとする。このままではあまりの気持ちよさに元晴の口の中に出してしまいそうだったからだ。
「大丈夫、いけよ」
そう元晴は言ってまた咥えて何度も志音自身を扱く。先端を舐めたり、少し噛んだり。そうして志音をさんざん翻弄してしまう。
「だめ……やっ……ああぁぁぁ!!」
志音は我慢に我慢を重ねたが元晴が離してくれなかったのでとうとう元晴の口の中で達してしまった。
「……はぁはぁ」
達してしまった志音は、少し意識が飛びかけていたようだった。元晴は口に出されたものをはき出してすっと志音の後ろの穴に塗りつける。この間、志音はまだ意識が飛びかけで何をされているのかわからなかった。
元晴は穴を撫でて、ゆっくりと指を一本忍ばせてくる。
「え……あぁ……だめえ……」
急に入ってきた異物感に志音は我に返る。そんなところに指を入れられるなんて。
元晴はじっくりと中を探るように指を動かす。穴を出たり入ったりして中にある前立腺を探す。ここが気持ちいいのはよく聞いていて知っている。そして指を動かし続けてやっと見つけた。
「あああ!! な、なにこれ!!」
いきなり身体が跳ね上がって恐ろしいほどの快楽が襲ってきたので志音はびっくりしてしまう。
「大丈夫、ここ志音の気持ちいい場所」
そうして何度かそこを触られると、志音の身体がびくびくと震えて自身も立ち上がる。
「やぁ……ああ……んんん……あっ」
襲ってくる快楽に振り回されて志音はどうしたらいいのか分からない。こんなに気持ちいいのも初めてだし、それをしているのが元晴だと思うとどうしようもなく嬉しい。
「もう……だ、だめ……」
元晴は指を二本にして穴をほぐす。最初は固かったところも段々とほぐれてきて、そのたびに志音が快楽の声をあげてくる。自分がそれをしているのだと思うと嬉しくなってくる。自分の腕の中で志音が淫らに乱れている。それがそそられてどうしようもなくてたまらない。
「い、いっちゃう……あぁ……」
もうこれ以上されたら頭がおかしくなってしまうと志音が訴えると、すっと元晴は指を抜いた。
「……もと、はる?」
「大丈夫だと思うけど……挿れていい?」
元晴は志音の太ももを撫でながらそう聞く。
志音はハッとする。今まで自分だけが気持ちよくなっていた。元晴はまだ何もしちゃいないのだ。
「ご、ごめん、僕ばっかり……」
「ん? そういうことじゃなくて、ちょっとキツイかもしれないからさ」
「い、いいよ」
志音はそういうと元晴の頬に手をやって、自分は大丈夫だからお願いと言った。
「そそるな、お前は……」
元晴の喉に唾が通る。すごく興奮しているのは志音だけじゃない。元晴もまた志音の悶える姿を見て興奮しているのだ。
服を脱いでズボンを脱ぐ元晴を見ていると、元晴自身もしっかり勃っていた。
「元晴も、気持ちいいことしたいよね。ねえ、挿れて……」
そう志音は誘った。普段なら絶対に口に出せない言葉だったが、今は何故か言えた。
すると驚いたように元晴は志音を見て、それからにっこり笑った。
「ちょっとキツイけど、身体の力を抜いて……」
「……う、うん」
「深呼吸とかしていいから」
「うん……」
そう言うと、元晴は志音の足を開いて穴に挿れてくる。最初はやはりなかなか入るものではないから、少し苦労して、先が入ってしまうと後はスムーズに中に押し進めることが出来た。
「は……あ……ん……はぁ……ん」
どんどん入ってくるソレはとても異物感があるもので、指なんかよりも大きく志音の呼吸を乱す。けれど元晴は押し進めながらもゆっくりとしていて、少し入ると志音の様子を確かめ、大丈夫そうだとまた押し進めることをしていた。
そういう些細な優しさが志音を安心させる。大丈夫この人は優しくしてくれると。
最後の最後でぐっと元晴は腰を突き入れた。
「ああ……っ!!」
志音が声を上げたと同時に元晴がふっと息を吐いた。どうやら全部入ったようだ。しかし入ってしまってからは元晴はじっとしている。
「中、気持ちいいな……」
そう感想を漏らす。
「……ばか……」
「志音、大丈夫か、全部入ったけどさ」
「……大丈夫、あっ!!」
少し元晴が動くと志音の声が上がる。
「動くよ」
「え……ああっ!!」
ゆっくりと元晴が動き出すと指とは比べものにならない快楽がやってきた。こんなに最初から感じているのは自分は淫乱なのだろうかと思うのだが、その考えもすぐに消えてしまう。頭が真っ白になってきて何も考えられないようになってしまうからだ。
「あん……あっ……あぁ」
次第に志音の口からは喘ぎ声が出始める。そして淫靡なそんな乱れ方をしてくる。どんどん早くなる挿入に志音はただただ振り回されるだけだった。
そして限界が近づいてきた。
「も……だめっ……あぁ……こ、われる……っ!!」
「もう……ちょっとな」
そういう元晴の息も乱れていて少しかすれている。元晴も限界が来ているようだった。
「……もと、はる……も……」
「うん……一緒にな」
「……うん、あっ……あぁ!!」
元晴の動きがもっと速くなってさらに志音を追い詰める。体中が沸騰してきてとうとう志音は限界を迎えた。
「――あああぁぁぁぁ!!!」
志音がそうして達すると同時に元晴も達したのか、深い中で熱い何かが弾けるのを志音は感じ、そのまま志音は意識を飛ばしたのだった。
次に目が覚めると、元晴が隣で寝ていた。裸のままかと思ったら、どうやらちゃんとパジャマを着せてくれたらしい。その優しさに志音は嬉しくなってくる。大好きな人に告白してもらって、ちゃんと優しく抱いてもらった。それが嬉しい。
「……ん? 起きたのか……」
まだ眠そうな元晴がそう言って志音の頬を撫でてくる。
「うん」
「大丈夫か? 身体」
「うん、大丈夫だよ」
「そっか、よかった」
元晴はそれだけ確認すると寝てしまった。それを眺めて志音も眠りにつく。
急激に変わった関係であるけれど、これまでだって二人で生きてきた。だからこれからそれほど変わるわけじゃないと志音は信じていたし、元晴はその志音の期待を裏切るようなことはしないだろう。
けれど少しは朝を迎えられるのは確かだった。