calling-8

 縄で手首と足首を拘束された寧野は、完全に身動きができない状態で目が覚めた。動かそうしたが、手首と足首を結ぶようにしているため、体を起こすというような動作は一切できなかった。しかも。
「なっ!」
 全裸でそんな体制を取っているのに気づいて、慌てた。
 こんな格好をしているのはおかしい。
 確かあれは、取り引き現場で真紅(マリーノヴィ・ツヴェート)に誘拐を示唆され、反撃している途中に別の襲撃をされた。そして煙が大量にある中で、寧野は誰かに何かを打たれた。そこから船に乗った気がしたがそれ以外の記憶はない。
 瞬時に、結局は真紅に捕まったのかと思ったがそうではないようだ。 
 ではどうしてこんなことになっているのか。
「やぁ、起きたのかい寧野」
 この声はとハッとして横を見ると、トーリャが部屋に入ってきたところだった。
「トーリャ! これはどういうことだ!」
 寧野がそう怒鳴ると、トーリャはクスクスと笑って言う。
「うん、寝てる間にね。毛を剃っちゃったんだよね。ほらフェラする時邪魔でしょ。なのに、パイパンって似合うね寧野には」
 トーリャがそう言ったので寧野はそこで初めて、自分のあそこの毛がすべてそられていることを知った。
「……なっ!」
 顔が真っ赤になるほど、恥ずかしいことである。
 寧野の反応にトーリャは満足したように言う。
「寧野の孔が欲しいって大きいものが欲しいって、キュウキュウしてんだよ。たまらない。寝ている間につっこんでもよかったんだけど、やっぱり反応みたいだろ」
 トーリャはそう言って寧野の下半身がよく見える方へ移動をした。
「ずっと、こうしたかった。初めて見たときから」
 トーリャはそう言って寧野の太股にキスをした。
「や、やめろ!」
 バタバタと暴れてみるが、体はぜんぜん動かない。完全にトーリャを受け入れる体制にされていて、どうしようもない。
 トーリャは寧野の腰を高くあげて露わになっている蕾に触れた。
「ひっ!」
 トーリャが蕾を舌で舐めた。きつく閉じている蕾の襞を開くように舐めて唾液を増していく、クチュクチュと音がするほどひくついているのを舐めて孔を柔らかくしていく。そのうち、舌が中に進入してきた。
「んんっ! やめっ!」
 まだきつい内部を舌が内側から緩めていく、トーリャの唾液が尻を伝って背中のあたりまで流れてくるほど、トーリャは美味しそうに寧野の蕾を味わう。
 嫌なのに、寧野自身はゆっくりと形を変え、先端からは先走りが糸を引いている。
 女だったら何度も達しているかもしれないほど、執拗にトーリャは寧野の蕾を舐め、さらには指を使ってその孔を大きく広げた。
「すごいよ、寧野。綺麗だ。ああ本当に」
 唾液まみれになった孔に指を入れて周りを舌で舐めた。緩められた孔は二本の指を軽くくわえ、内部はその指に吸い突くように絡まり始めた。
「あっやだっ! あっあぁ!」
 内部をこすられ始めると、寧野の甘い声が挙がり始めた。こんな行為を許したわけではないが、そうされてしまうと弱いのは耀の躾のたまものだろうが、今はそれが憎らしくて仕方なかった。
「んぁああ……ああっ!」
 寧野の気持ちがいいところにトーリャの指が当たった。
「ここなんだね……かわいい」
 そこを執拗にさすり続けられ、寧野は一回目達した。
「ぁあああああっ!」
 ぴしゃりと吐き出した精が寧野の胸にかかった。
「随分可愛くイクんだね……」
 興奮したようにトーリャが寧野にのしかかり、胸にかかった精液を舐め取るようにしてきた。
「美味しいよ……甘くて」
 そしてそのまま胸の粒を舌先でなぶり始めた。そしてトーリャ自身を寧野の孔にすり付け始める。
 唾液で滑りやすくなっている孔を更にトーリャの先走りが垂れてきてローションの役割をしだす。トーリャは寧野の乳首を甘い果実を味わうように舌で舐めとっては吸い上げた。
 トーリャの愛撫を気持ち悪く思っていやがらないといけないのに、気持ちがいいという気持ちがわき上がってくる。快楽は寧野の心を簡単に裏切るようにできていた。
 唾液で塗れた乳首をトーリャの指がこね回し、強くつねったりしては舌で舐めてあやすようなやり方で、それが心地よかった。
 口では嫌だやめてくれと言っていても心を裏切る体が、快楽に身を任せようとする。
「あっ!あっぁ……あぁんっ……あっあっ」
「すばらしいよ……んん、すばらしい……寧野の体は……なんて甘いんだ……ん」
 乳首に吸い突きながら、トーリャが夢中でそう言った。
 ただ気に入ったから抱いてみたくなった。相手は男と経験がある男である。少々の無茶は通ると思ったが、ここまで甘く人を惑わす体だとは思わなかったのだ。
 ただただ夢中になって体中を舐め回し、膨らんでいる寧野自身までくわえた。
「ああああぁぁぁ!」
 快楽に身を任し始めた寧野の体は、正直に反応する。もはや触れば震え、甘い声を上げる。こんなに快楽に弱いように作り替えるのには、寧野のような人間だと相当時間がかかっただろう。
 それを成し遂げたのは宝生耀で、それだけは見事だとトーリャも認めざるを得ないことだった。
 快感に張りつめていた先端から、透明な滴がしたたり落ちていたのをトーリャは潤う花の蜜を飲み干すようにしっかりと味わいながら吸っていく。
 トーリャの舌で陵辱された寧野自身は、膨らみきって二度目の射精をした。ビューッと吹き出した精子をトーリャが口で受け止めてすべてを飲み干した。
「あ……あぁ……ああんっ」
 体がびくびくと快楽を味わっているのをトーリャは見てニヤリとした。
「ここまで理想通りに反応する体……すばらしい、寧野には金糸雀(カナレイカ)なんかよりもっと価値がある」
 寧野の心を裏切る体は喜んでいるが、心はついて行かない。寧野は唯一抵抗ができる涙腺が、涙という形を表した。それでもそれは快楽よる涙だとトーリャが勘違いするほど、寧野の反応はトーリャには素晴らしいものだったようだ。
 グッと内部を押し分けて、奥の方へとトーリャ自身が入っていく。散々舐められて指で広げられた孔は、トーリャを易々(やすやす)と受け入れた。
「いやっ……いやだっ! あっん」
 いやだと口に出しているのに、中に入る圧迫感を内壁は受け入れてそれを包み込むようにしていた。
「おぉおぉうぉおお」
 ねちゃりと音がして、トーリャ自身を寧野はすべて飲み込んだ。耀よりは小さいそれは受け入れやすかったのか、簡単に奥まで入り込まれた。
「なんだこれはっ!」
 ぬるりとトーリャ自身を包む寧野の内壁に、さすがのトーリャも驚きを隠せない。夢中で寧野の中を犯した。それそこ数分もしないうちにトーリャは射精した。
「んぁあああっ」
 寧野は中に熱いものを感じて、奇声を上げる。待っていたものではないのに、中が喜んでいる。耀によって作り替えられた寧野の孔は男なら誰でも受け入れられるようになってしまった。けれど心は決してついてこないままの快楽は、気持ちがいいと思う反面、苦痛で心だけがギシギシと痛んでくる。
「これほど早く絞りとられたのは初めてだ」
 女は百戦錬磨のトーリャでも尻の経験もあるけれど、男は寧野が初めてだった。だからなのか、最初から素晴らしい名器に当たって興奮が収まらない。すぐに勃起をした。
 トーリャは寧野をうつ伏せにし、尻だけ上げた状態にして、また奥まで入り込んだ。自分の出したもので濡れた内部は、さっきよりももっと奥まで張り込め、トーリャ自身をきつく締め上げる。
「うぉおおおっ」
 うなり声をあげてトーリャが寧野を激しく突く。熱く脈打つものが寧野を犯し続ける。
 トーリャは抜かずにそのまま三回、レイプを続けた。最後の方は寧野にも抵抗力がなくなり、ただ喘ぐだけになっていたが、トーリャは寧野の体を気に入ったのか、三回目達したあとも首筋から背中をねっとりと舐めつくし、それこそ寧野の体の隅々までを舐めました。
「なんて、恐ろしい体だ。これほどまでに私を翻弄するとは……」
 トーリャは夢中で寧野の体を堪能した自分が信じられないというようにうめいた。普通、トーリャは女を抱く。その女の方からアプローチがあってセックスに至る。今回の寧野は完全に合意なしのレイプだ。トーリャほどの容姿を持つ男がレイプまでしても手に入れたかった体は望み通りの奇跡的なものだった。
 調教次第で男も女以上になるとは聞くが、試したのは初めてだったし、その上、調教師が優秀すぎた。ここまでの体には、女でも出会ったことがない。
「……」
 寧野は何度も達した上に、体中を舐められ、逆らう気力がないままそれを聞いていた。気絶するほどではないが、むしろ気絶したかったと思えるほどの陵辱は、心が耐え難い。
 散々トーリャが犯した孔は、残滓を垂れ流し、まるですべてを吐き出すかのように止まらない。
 それをトーリャは写真に撮り、眺めニヤリとする。
「……何もボスにくれてやることもない」
 織部寧野を捕らえてこいという話だったが、その話によると何処かの組織からの又受けだという。それをかなえてやるほど、親切でなくてもかまわないわけだ。
 織部寧野を何処が手に入れるのかという金糸雀(ジンスーチュエ)伝説で噂は一時期は盛り上がった。それでも織部寧野がそういう人間ではないことは白鬼(なきり)を見ていれば分かることだ。だからこそ、それを度外視した白鬼(なきり)のボス、宝生耀と真栄城俐皇(まえしろ りおう)と、煌和会(ファンフォフゥイ)の龍頭(ルンタウ)である、操武藍(ツァオ ウーラン)までが手に入れたがったのか。
 煌和会があんな風に報復を受けたのも、それ故なのか。
「白鬼(なきり)と俐皇は揺さぶれそうだ」
 武藍(ウーラン)は手に入れたがっているが今はそれどころではないだろうし、それで揺らぐほどの組織形態はしていない。となると、織部寧野を恋人や相棒として扱っている白鬼(なきり)の宝生耀ならきっと織部寧野を人質に取られたら何か出すかもしれない。
 真栄城俐皇は、織部寧野を一度手に入れて囲ったほどだ。恋心かは分からないが、白鬼(なきり)に前に宝生組とはもめていたはず。その時も織部寧野を選んだというから、思い入れはあるはずだ。こちからも何か引き出せそうだが。
 そうトーリャが口に出してまで計画を練っているのを寧野は聞いていた。静かに。
 墜ちていた気持ちに、ボッと火が灯り、力のなかった目がギロリとトーリャを見る。トーリャは気づいてないが、寧野はそんなトーリャを睨みつけていた。
 ふざけるなよと、こんなことで心が折れたりするものか。耀に危害を加えるというなら、それは話は別だ。
 こんな状態でも寧野は耀のためなら何でもできる気がしている。トーリャは許さない。こんなことをしたからではなく、このことを持ち出して耀に何かしようとしていることだ。
 更にそれは白鬼(なきり)の人間の危機になる。彼らに助けられここまで生きてきた。だから彼らのことも寧野は守りたかった。
 こんな状態でも自分の身一つなら、脱出は可能かもしれない。諦めるなと寧野は自分の心に奮起を促す。
「誰か、寧野を洗ってまた縛っておけ」
 そうドアを開けて言うと、四人ほどの男が入ってきた。
 寧野を抱え、縄を解くと風呂へ入れた。
 服を着たままの男二人に、体中を洗われたが、寧野は何の反応も見せなかった。男たちは寧野の体を舐めるように見て、残滓の残る孔にも指を入れて掻きだしていた。
 寧野を四つん這いにし、シャワーを使って残滓を書き出すときは、二人の男は面白がって寧野の体をいじり回した。
 立たせると乳首をこね、首筋に吸いつき、乳首にまで舐め回した。その寧野の足を上げさせ、男の一人が己の肉棒を寧野の中へと入れた。
「おい、さすがにそれはマズイ」
 体をいじり回しても舐め回しても、証拠は消える。洗ってしまえば匂いはつかない。でも最後までやれば、さすがにほかの人間にもバレる。
「かまやしないって、どうせトーリャ様からは、この後でいつものおこぼれもらえるんだろうし、先にやったって分かりゃしない。中へ出さなきゃいいんだよ」
 入れた男は寧野の中を更に犯して、腰を使い出すと、驚愕の声を上げる。
「すげぇこいつ。孔の中、吸いついてくる」
「マジかよ」
「……うっ」
 男は十回ほどこすりつけた後、中から出して、寧野の尻に射精をした。それはシャワーですぐに洗い流されたが、室内には匂いが充満する。
「おこぼれが楽しみすぎるぞ」
 射精した男がそう言うともう一人の男はゴクリと喉をならしたが、おこぼれがもらえるなら後でもかまわないだろうと思ったのか、その場で寧野を犯すことはなかった。
 寧野はシャワーから上がると同時に、一緒に入っていた男二人と、外で見張っていた男の二人に一気に攻撃をかけた。
 まず最初に目の前の敵を拳で、後ろの敵を振り向きざまに足で蹴り、そして横を向いたら今度も拳で敵を倒す。
「な!」
 一人が驚いたように声を出したが、その他の三人は何も言えずに沈み込んだ。最後の一人がドアを開けようとしたところを回し蹴りをして側面から吹っ飛ばして気絶させた。
 脱衣所という狭いところで一人が暴れても、四人も人がいたのでは止められるものではない。まして、寧野は武術の使い手だ。絶好の機会を逃すはずもなかった。
「くそっ」
 風呂で自分の犯した相手にもう一度蹴りを入れる。相手はグフッと息を吐いただけで目を覚ましはしなかった。
 用意してあった服はないらしく、仕方がないので寧野は部下が着替える予定だった服を奪った。それを着て外へ出ると、広い廊下があった。誰かがいる気配はせず、そのまま進んで裏口を見つけた。
 だが外は真っ白な雪原だった。
「うそ……だろ」
 思わずドアにすがりついて見てしまった。だが、その外にジープがある。そして人はいない。玄関先にはブーツや防寒着があり、寧野はそれを身につけてから鍵を探した。すぐに鍵がポケットに入っていることに気づいて、ホッとした。
 ドアを開けて外へ出て、ジープに鍵を差し込む。どうやら間違いない。
 中に乗り込んでドアを閉め、そして機材を見る。カーナビがあったのでどうにかなりそうだった。
 勢いよくエンジンをかけ、車を回してその場から逃げ出した。


 トーリャが部屋に戻ると、寧野がいるはずのベッドに何もなかった。
「どういうことだ!」
 部屋を出たトーリャが風呂へと走ると、ドアを開けた瞬間、寧野が逃げたのが分かった。
「あれほど油断するなと言ったのに!」
 気絶している男たちを蹴り起こし。
「お前たち、寧野が逃げたぞ、追え!」
 トーリャの激高した真っ赤な顔に驚いたのは、部下たちだ。最小限の部下だけを連れてきたことが裏目に出た。いつもならそれなりにいる部下を自分の周りと寧野の周りだけにした。結果、寧野は自分で見張りを倒して脱出、自分はそれに気づかずに風呂に入ってワインを飲み、一人でこれから寧野をどう調教しようかなどとのんきに考えていた。
「おのれ……あそこまでしても逃げる気があるとは……」
 寧野の精神力が強かったことに衝撃を受ける。
 ただの情人ではない。強いボディガードたちを一瞬で気絶させるなんてことができる情人が何処にいようか。一級の戦闘力を持っていた。
 トーリャが寧野を誘拐できたのはただの偶然にすぎないことを悟った。
「部隊を呼べ!」
 弱い人間は好きだった。痛みつけると快感を得られた。すがられると優越感に浸れた。強い人間がかしずくのも見るのは大好きだった。自分が偉い気がしたからだ。
 ここまで強く脱出するほどの気力のある人間が、あれほど快楽に弱く喘いでいる様は、本当に恍惚とするほどの快感を得られた。
 だがそんな人間がいつまでも地べたを這いずっているわけではない。立ち直りは早く、そして行動は的確だ。
「織部寧野……お前は本当に、魅力的だ。お前が泣き叫んでいるところが見たい」
 トーリャはそう言うと、少し遠くにいる部隊を呼び、寧野を探させた。慣れない土地で遠くまでいけるはずもない。車以外の持ち物は持ってないはずだ。そうトーリャは踏んでいた。