ROLLIN'1-番外編 うやむや
月時響は、今幸せの中にいた。
恋人となった、ヤクザ宝生組の五代目宝生楸と共に旅行に出かけていたのである。
会社が冬休みに入った事を知った楸が、別荘へと連れ出してくれたのである。
ただし、今回は二人だけのお忍びの旅行だった。
温泉が引かれている別荘は、もともと宝生家の持ち物だったらしく、久しく使われてなかった場所だった。
楸がボディーガードを伴わず出かけるのも久しぶりだった。
こうした休息が楸には必要だと感じた周りが休暇を取るように言ったことから始まった。
仕事なら現場にいかなくても電話一本で出来る事だと言ったからだ。
近くには別荘も少なく危険もないと判断したからであろう。
今回は耀も賛成してくれた一人だった。
休暇だから旅行するのは当然だと言い張ったのである。
この耀は、とにかく響が大好きで、パパである楸の事を尊敬している。その二人が大好き同士なのは分っていたから、新婚旅行へ行くべきであると言い張ったのである。
これには、皆苦笑していた。
響はただ恥ずかしかったの一言である。
自分が楸を好きだと認めてしまったのだから、余計にその言葉に反応してしまうのだろう。
楸は別荘まで仕事の書類を持ち込んでいた。野暮な事とは分っていても、どうしても気になるらしい。
別荘にいるからといって、特に何かするわけではなかったからそれは仕方ないかもしれないと響は思っていた。
途中で食材を買い込んで、4WDの車に乗り込んで、楸が運転をしてここまでやってきた。
「うわー綺麗」
「使ってなかった割には結構綺麗だな」
一応管理人の手が入っているとはいえ、それでも十分綺麗なのである。
さっそく中へ入って、食材やら衣服の入ったバッグを運び込んだ。
それが終わると、リビングでコーヒーを飲んだ。
「できれば、酒でも飲みたい気分だな」
楸がニヤリとして、響を見た。
とたんに響が眉を顰めた。
「昼間っから何言ってんだ」
「特にする事もないからな」
楸はそう言うと、書類の束を纏め上げ、響の腕を引っ張った。
何処へ連れて行かれるのだろうと響が不思議がっていると、連れて行かれたのは、ベッドルームであった。
キングサイズのベッドがある寝室だった。
これを主寝室というのだろう。そんな大きなベッドには、きちんと手入れが行き届いたパリパリのシーツが被せられていた。
そこへ放られるように倒された響。
「ちょっと!」
いきなり来てそれか!?
と叫びたくなる瞬間である。
楸は響に覆い被さるようにしてキスをしてきた。
それに応じてしまう響は、これも惚れた弱みなのだろうなと思っていた。
「ん……あ……」
激しい口付けは、何分も続いたと思う。
向きを変えては、口の中を全て犯すように楸はどん欲にキスを求めてきた。
そういえば、最近キスもする暇なかったよな……。
そんな事を考えてしまった響。
この旅行が決まってから、楸は全ての仕事を一気に片づけに入ったのである。
それだけでも物凄い量の仕事があっただろうに、深夜遅くなろうが、この日の為にと仕事をこなした。
持ってきた仕事はもう殆ど目を通すだけでいいだけの仕事である。
つまり、楸は飢えていたのである。
一緒の布団で寝ているとはいえ、仕事の事を考えると、響も年末仕事で忙しくお互いがお互いを構っている暇がなかったのである。
だから、これからたった3日ではあるが、二人っきりとなると、もうやることとなったらそれはもう決まっている。
キスをしながら楸は響の服を脱がしていく。
手慣れたようにされてしまって、響は少し悔しかった。
自分だけが裸に向かれてしまっているからである。
「ちょっと待った」
響はやっとキスから解放されて、その言葉を口にした。
「何だ?」
不思議そうな顔をした楸が顔を上げた。
響はやっと中断した拍子にこんな事を言い出した。
「俺だけ裸なんてずるい」
少しムッとしたように言われて、楸は目を見開いた。
まさかそんな事を言われるとは思わなかったという表情である。
「お前も脱がしてやる」
響はそういうと身体を起こして、楸のワイシャツに手をかけて、ボタンを一つづつ外して行く。
楸はそれをジッと見ていた。響が積極的になっているのは解ったからだ。されるがままで待っている。
ワイシャツのボタンを外し終わると、肩からワイシャツを取り除いた。それには楸も手を貸した。
次にしたのパンツであるが、ベルトを外してボタンを外してとやっていくと、そこから先は楸が自分で脱いでしまった。
響がやっていると遅いからだ。
早く抱き合いたい楸は先を急いでいた。
やっと二人とも裸になって、最初からやり直し。
まずキス。さっきの濃厚なキスとは違い、ついばむように楸は響の顔中にキスをしていった。
響はくすぐったそうにしながらも大人しくそれを受けた。
そのキスが鎖骨に落ちてくると、そこから身体が熱くなってくる。それが快感というものだと響は解っている。
「あ……っ」
肌を滑る唇が、胸の突起に辿り着き、音をたてて吸われ、舌先で転がされて、じんわりとした甘い痺れが生まれる。
「ん……ふ……ぁ」
最初は優しく触れて、そして乱暴に扱われる。
噛み付きそして舌で転がす。
執拗に攻めて、開いた手が身体を這い回る。
楸は胸の突起を執拗に攻めていたが、やがて少しずつ響の身体に沿って下の方へと移っていった。
滑らかな肌にはキスの痕が残り、それは下腹部にも及び始めている。
既に愛撫で高まっている響の中心に、楸は迷わず唇を付けた。
暖かく湿ったものが敏感な部分に触れて、響はぴくんと大きく身体を動かしてシーツを掴んだ。
手で触られた時よりも、ずっと快感は深く、ねっとりと絡み付く。
その行為をしながら、楸は響の孔を探った。
暫くセックスをしてなかったから、そこはかなり解さないといけない。
濡らした指が孔へと侵入していく。
「ん……ん」
暫くしてなかったにしては、指はすんなりと中へと侵入出来た。
二三本に増やしても、簡単に解れてくれて。
それは響が待ちわびていた感覚だったから受け入れ易かったのかもしれない。
「十分解れてる……」
楸が呟いた。
「何……言って……昨日もした……」
忙しかった楸だったが、仕事が一段落した昨日もしっかり響を抱いていた。
それも念入りにされてしまったので、まだ孔はその感触を忘れてなかったのである。
「そうだったか?」
楸はニヤリとして言う。
「寝てたのに……いきなりやってきたじゃないか!」
響は昨日は酷いと批難した。
仕事から帰ってきた楸は寝てた響に悪戯を始め、結局執拗に抱かれてしまったのである。
それを忘れたとは言わさないと響は楸を睨んだ。
楸は半分寝ぼけた状態だったのであれがホントだったのかあまり覚えてないらしい。
いい加減な男である。
「じゃ、入れても大丈夫だな」
楸はそう言うと、孔から指を一気に引き抜いた。
「ああ!」
それでもちゃんと響の感じる場所を触ってくる辺りがエロい。
うつ伏せにした響の腰を高くして、すぐに己を響の中へと侵入させた。
「んんん……」
響は必死にそれを受け入れようと、何度も息を整えた。
それくらいの事は何とか今までの事で覚えていた。
全部が入ってしまうと、楸は響の背中にキスの雨を降らせた。
「ん……あ……」
響はシーツをギュッと握りしめて、次にくる衝撃に備えた。それと同時に楸が腰を動かしたのである。
それも一気に引き抜いて、一気に奥まで突いてくる。
「あっ!んん!はぁ!」
その衝撃に耐えるだけ、与えられる快感に響は喘ぎ声を上げ続けた。
でも響が達しようとすると、それを引き止めるように楸は響の中心を握ってくる。
「い、いや……もう……」
いきたいのにいかせてもらえない。
「一緒に……」
切羽詰まったような楸の声に、響は頷いた。
そして楸の動きはより一層激しくなって、もう響には限界だった。
「も……ダメ……」
「ん……」
楸も自分が絶頂を迎えそうになったので、響の中心を扱いて
やった。
それで二人は一緒に絶頂を迎えたのであった。
だが、それでは終わらなかった。
楸は第二ラウンドを始めてしまったのである。
「お前……いい加減に……」
ここへ来てから、響は食事以外は、ずっとベッドで過ごしていた。
楸は響が気絶してしまうと、リビングに降りて仕事をし、響が起きてきて食事を食べると、またベッドへと逆戻りをしていたのである。
さすがの響も体力の限界である。
でもそれに付き合っていた楸はケロリとしたものだった。
それを憎らしく思う響。
「最終日くらい散歩でもするか」
「できるか!」
足腰立たなくなっている響にはそれは無理な相談だった。
この!絶倫大魔人めが!
そう叫びたいのだが、やさしくキスをされると、それすら許してしまう情けない響であった。
やさしくキスをされるとやはり弱かった。
それから散歩は、楸が響を抱いて庭を回るという形になってしまったが、この休みを満喫したのは楸だったに違いない。
ちくしょー。
流されっぱなしの響であった。