Distance 2round カウントダウン 19

 学校から帰宅して、卓巳はすぐに北上神(きたにわ)の家に連れて行かれた。
 着いて早々に、北上神は、お帰りのキスをしたいと言い出し、する羽目になる卓巳。

 もう完全に北上神のペースだ。
 軽いキスを北上神にすると、いきなり深いキスをされてしまう。

「ん……」

 何度、このキスをしても、慣れることがない。頭の中は真っ白になるし、自分では何をしているのか解らなくなってしまうのだ。
 それでも北上神が満足しているのを確認すると、大丈夫なのだと思えるから不思議だった。

「……はっ……んん」
 やっと長いキスが終わって息がよく出来るようになると、いつも卓巳は体の力が抜けてしまっている。

「中々、慣れないなあ」
 苦笑したように北上神は言う。

 それが初々しくていいのもあるし、慣れてくれるとそれはそれでまた楽しめそうだと思えるのだ。
 キスだけでもこれだけ楽しみがあるのが新鮮だった。

 縋ってくる卓巳を抱きしめ、北上神はそんなことを思っていた。

 その夜は、北上神が作った料理を食べ、北上神の希望通りに一緒に風呂まで入ってしまった。

 風呂でやらしいことするな!といわれてしまったので、特に何も出来なかったのだが、卓巳の体を明るいところでじっくりと観察することは出来た。

 それは卓巳も似たようなもので、ちらちらと北上神の体を見てしまったものだ。

 本人が言っていたように、体にはあちこちに傷が残ったような痕が幾つかあった。

 腕の傷は最近のだから解りやすいのだが、他のは昔と言っていたから、かなり薄いものだが、それでも重傷くらいはいっただろう傷もある。

「なんで、そんなに傷があるの?」
 卓巳がそう聞いた時、北上神はああっと言うように自分の体を見てから言った。

「全部、古武道のせいかな。師範が結構凄い人で、骨折とかさせられたし、剣道もやってた時は真剣も使ったしな。それで、色々傷があるんだよ。全部、俺もミスの証みたいなもんだな」

 北上神はそういうことは全部自分のミスだという。怪我をするほどのことをされているのに、自分が対処出来ていれば防げたことだと思うあたりは、北上神らしいと卓巳は思ったものだ。

「俺が古武術やったらどうなるかなあ?」
 卓巳がそんなことを言い出すと、北上神はクスリと笑う。

「まあ、痴漢防止くらいには上達するかもな。おお、いいな。今度、連れて行ってやる。自分を簡単に守れる方法くらい身につけてもいいだろうし」
 北上神がそう言ってくれたので、卓巳は嬉しかった。

 駄目だとは言わない。やれることはやってみろと言ってくれるからだ。

「うん、今度ね」

「ああ。話は通しておく」
 話はそれでついて、風呂を上がって出たが、時間も時間で、北上神は速攻に卓巳をベッドへと連れて行った。

 キングサイズのベッドは、新しいカバーがかけられていて、何だか、北上神のやる気が漲っているような気がする卓巳だ。
 手を引かれ、ゆっくりとベッドに座らせると、北上神は軽くキスをしてきた。

 この時点で、卓巳の心臓は口から出てきそうな程の緊張があった。

 軽いキスが終わると、北上神はゆっくりと卓巳の体をベッドに横たえた。

 そして、上に覆いかぶさるように乗って来る。
 視線がかみ合うと、自然と顔が赤くなってしまうし、少し怖い気がする。

 本当にこんなことをしていいのだろうか?というのもあるし、初めてでは怖いのは当たり前だ。

 それでも北上神は急いだりしなかった。
 ゆっくりとした動作で、何度も卓巳の顔中にキスを降らせてくる。

「大丈夫だ、全部俺に任せてくれればいい。卓巳はただ、感じて」
 北上神はそう言うと、唇にキスを落として、そして顎から首筋にと舌を這わせていく。

 バスローブの紐を解き、はだけさせると、卓巳の体に手を這わせて行く。
 吸い付くような肌。傷は一つも無い綺麗な体。男だと解っていても綺麗だと思ってしまう。

 そして早く喰らい尽きたいのを押さえながら、卓巳の乳首に吸い付いた。

「ん……」
 鼻から漏れる溜息みたいなものが出て卓巳は一瞬驚いたが、北上神がまったく気にしてないのを見て、大丈夫なのだと思った。

 そして、片方を指で擦るようにいじられ、片方を舐めたり噛まれたりしているうちに、声が抑えられなくなってきた。

「あ……あっ」

 その行為が続くと、これが快感の一歩手前なのだと解ってくる。
 自分自身が勃っているのが解る。
 自分が北上神の愛撫に感じているのだと。

「ひゃ……っ」
 いきなり、勃っていた自身を北上神の手で握られて、卓巳はびっくりした。

「ちゃんと感じてくれてる。嬉しいぞ」
 北上神はニッコリと優しい笑みを卓巳に見せて、それを扱き始めた。

「ん、あ、あっ!」
 自分ではやったことはあるが、あまり快感だとは思えなかったことが、北上神の手によって、本当の快感へと上りつめていく。

「やぁ……ん……だめ……」
 耐えられなくて、シーツをギュッと握る。恥ずかしくて目を瞑った時、ねっとりとした感覚があそこにした。 驚いて目を開けて見ると、北上神がそれを舌で舐めているのだ。

「そ、そんなっ……!」
 汚いのに!と言おうとしたのだが、それは喘ぎに変わってしまった。

 ねっとりとした舌が散々、卓巳を攻めて、そしてそれを口に含まれると、自然と腰が上がってしまう。

「や……いっちゃ……」
 こんなの知らない。こんなに気持ちがいいものだとも思ったこともない。
 それがすぐに達しそうになっている。

「あ、威……っ」
 離して、と言おうとするが、それは間に合わなかった。

「……!!」
 一気に拭き出したものは、全部北上神の口の中に吐き出されてしまった。

「な、なんで……」

 少し潤んだ目で北上神を責めようとすると、北上神はそれを飲み込んでしまったのだ。
 思わず絶句してしまう卓巳。

 北上神は顔を上げると、ニヤリとして言うのだ。

「そりゃ、卓巳のものだから。全部欲しいんだ」
 と平然とした様子だ。

 確か、あれはかなり飲みにくいものだと聞いたことがある。女性でも嫌がる人が多いというのに、それを北上神は平然として飲んでしまったのだ。

 そこまでしなくてもと思っても、これが北上神のやり方で、卓巳は何も知らないから、口を出す権利はないに等しい。

 少しぐったりとしている卓巳の体を北上神はうつ伏せにして、お尻を上げる格好を取らせた。
 これはかなり恥ずかしい格好なのだが、そうしないと出来ないと北上神に言われると抵抗もなくなった。

「狭そうだな……」
 北上神はそう言うと、孔に舌を這わせたのだ。

「あ、威!」
 動こうとする卓巳の腰をしっかりと北上神は掴んで固定する。

「こうしないと、卓巳が辛いんだ。だから、な?」

 本格的なやり方なんて、卓巳は知らない。だから、初めからそんなところを舐めるなんていうのが普通 ではないとは気付かない。
 ただこれは北上神がやりたかっただけのことだ。

 卓巳の全部を知りたい。
 それだけの為に。

 部屋にはピチャピチャと卑猥な音と、卓巳の喘ぎ声しかしなくなる。

「ん、ん……あ……ん」

 北上神は丹念に舐め、そして孔をほぐしていく。最初がキツイのは当然としても、卓巳のそれはまだ小さいと言ってもいいかもしれない。
 そこに舌が進入するにはかなり時間を要したし、指を一本入れるだけでも時間がかかった。

 やはり指の異物感があるのか、卓巳は眉を顰めている。
 ここに北上神のアレが入るとは思えないのだ。

 この一本の指でさえ、かなりの違和感と少しの痛みがあるというのにと思う。

 それでも北上神は急ぐことはなく。指を二本に増やしローションを使って、中を掻き回し、入り口を広げていく。

 そして。

「あ! やっ!」
 粘膜の一部を触ったところ、ビクリと卓巳の体が跳ね上がった。
 北上神はニヤリとして言う。

「見つけた」
 そしてそこを何度も擦ってくる。
 そうなると、卓巳の体は何度も跳ね上がって喘ぎ声が止まらない。

「やっ! な、なにっこれっ!」
 自分の体が自分のものではないように跳ね上がるのに、卓巳は少し恐怖を感じていた。

「大丈夫、ここ、感じるだろ? 男でもこうされると誰でもこうなる」
 北上神はそう言って、何度もそこを擦っては違う場所を発見して擦り上げる。

 もう卓巳には泣きが入っていた。
 本当にもうどうにかしてほしい。

「やあっ!」
 すごく達したい。そういう感覚に襲われた時、その行為は収まった。

 ホッとしたのも束の間、抜けた指よりももっと大きく、そして熱いものが押し付けられたのだ。

「最初は顔をみたいけど。こっちの方が楽だっていうから仕方ない」
 北上神はそう言うと、グッとそれを卓巳の孔に押し付けた。

「ひっ! 無理無理!」
 北上神がしようとしていることが解って、卓巳はハッと我に返った。

「大丈夫だ、先が入ってしまえば」
 北上神は強張った卓巳の体を解す為にまた前を擦ってやる。

「あ! ああ!」
 それによって一気に緩んだ孔に先を侵入させた。そして、そのままローションの力を借りて中へとゆっくり進入していく。

「うっ……」

「半分入った、もうちょっとだ」

「は、半分!?」
 もうそこはいっぱいとしかいえないのに、まだ半分。それを聞いて卓巳は眩暈がした。

 その眩暈が自然と体を解したのか、北上神は一気に奥まで自分を突き上げた。

「ああ!」

「……あんま、しめんなよ」
 少し余裕が無い北上神の声を聞いて、痛みと戦っていた卓巳は肩の力を抜いた。

「そう、それでいい。びっくりした。食いちぎられるかと思った」
 ほっと息を吐いた北上神は、入れたまま暫く動かず、卓巳の体に抱きついた。

「威も、痛い?」
 少し荒い息をしている北上神を感じた卓巳は少し振り返ってそう聞いた。

「ああ、狭くてしかも締め付けるからなあ。痛いとはいえば、痛い。でも卓巳の方がもっと痛いよな」
 北上神はそう言うと、卓巳の肩にキスをする。

「でも、気持ちいいからなあ、卓巳の中」

「気持ちいい?」

「卓巳の覆われてるって感じする。すげーいい」

「そ、そっか」

 それを聞くと、卓巳もホッとする。だが、この痛みは段々と薄れていく。それは北上神は気を遣ってくれて、動かないでいてくれるお陰だ。
 大体馴染んできた頃になると、北上神は卓巳から体を離して、ゆっくりと抜き差しを開始した。

「あ、いっ、いたっ」

「すぐ、よくしてやるからな」
 痛いのは当然ではあるが、それを早く無くすには、快感を与えてやればいいのだ。

 さっき見つけた卓巳のいい場所にそれを押し付けて何度も擦るように抜き差しをしてやる。
 すると、ずっと痛みに耐えていた卓巳の声が喘ぎに変わっていく。

「あ、あっ……ん……あ……ん」

「よくなってきたな。これでどうだ?」
 更に強く抜き差しを始めると、もう卓巳には何が何だか解らない状態になった。

 北上神には、卓巳が快楽に落ちていく様子がよく見えた。
 抜き差しを少しやめ、うつ伏せから仰向きにして更に続けると、その表情がよく見えた。

 潤んだ目。そして、喘ぎが漏れる口。その表情が北上神に余裕をなくさせてしまう。

「わりぃ、駄目だ。余裕ねえ」

「あ……ん……はっ……んあぁ……」
 強引な北上神の腰の動きに、卓巳はただ翻弄されるだけだ。もう何も考えられない。

 ただ終わりがくることだけはわかった。

「一緒に行こうな」
 北上神がそう言った時、卓巳は奇声を発するようして最後を迎えた。

「あああああ!!!」
「……ん!」

 自分の中に何か暖かいものが注がれる感じがしたが、それは沈み行く意識では十分に感じることは出来なかった。

 そのまま卓巳は失神してしまう。

「……はぁ」

 最後まで注ぎ込んだ北上神は、さっきまでしがみ付いていた卓巳の腕がパサリとシーツの上に落ちるのを見た。
 卓巳は荒い息をしながらも、意識はここにはなかった。
 それを見て、北上神は優しい顔を浮かべる。

 ちゃんと卓巳は答えてくれた。そして自分は今まで以上に満足している。

 でもまだ足りないとも思う。
 だが、ここで卓巳を叩き起こして二ラウンド目とはいかないようだ。

「今日はこんなもんだな」
 ゆっくりと入っていたものを抜き出すと、卓巳の眉が一瞬歪む。

 それがなくなると、北上神はまるで薄いガラスでも抱くように、卓巳を抱きしめた。

「卓巳……」
 意識の無い卓巳の唇にキスを落とす。それだけでも幸福だと思う。

 そして、確信した。

 もう、卓巳以外の誰を抱いても、こんな感情は抱けないだろうと。

 でもそれでいい。卓巳が答えてくれるかぎり、自分はずっと卓巳といるのだと決めている。

「絶対に逃すものか……」
 北上神はそう卓巳に告げると、後始末をして、一緒のベッドで眠った。

 それはとても幸せな一瞬だった。